太田記念美術館で「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」展(後期)を観た! | とんとん・にっき

太田記念美術館で「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」展(後期)を観た!



太田記念美術館で「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」展(後期)を観てきました。やはり前期を観ちゃうと、後期も観たくなるのが世の常。前期に図録を買わなかったことを後悔し、図録を購入しに行ったようなもの。図録は幅25cm、縦28cmの変形版。まあ、「没後150年記念」と銘打っているので、いい加減なモノは出せません。国芳を理解する上では、作品の区分けが良く解説がまたいい。もしかしたら国芳の展覧会の図録の決定版かも?と僕は思っています。


纏まった国芳展は、府中市美術館で「歌川国芳―奇と笑いの木版画」展を観ました。今回の太田記念美術館の「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」展も見応えがありました。この後、静岡市美術館で開催されている「没後150年 歌川国芳展」が、12月には東京に巡回するようです。副題は「幕末の鬼才浮世絵師」とあります。こちらは前後期合わせて421点を展示。戯画「金魚づくし ぼんぼん」など新発見を含め、初公開作品が73点を占めると、新聞に載っていました。また観に行きたくなってしまいます。いや、当然観に行く予定でありますが。


国芳は「むしやは国芳に限れり」と讃えられたという。頭角を現したのは31歳の頃、「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」シリーズが人気を博したという。国芳は武者絵の先駆者でしたが、それだけではありません。その後も歴史上・伝説上の武者が妖怪や怪獣と格闘する場面を次々と描きます。前期は「武者絵」「妖怪絵」そして「役者絵・忠臣蔵」となっていますが、国芳の真骨頂は後期の「戯画・狂画」「美人画・風俗画」です。そして「洋風画」まで、凄いになんのって、なんでもこいッてんだ、です。次から次へと、そのアイデアはつきません。魚心あれば水心あり、「魚の心」は、役者絵禁止の布令をかいくぐったもの。しかもお上の意向に逆らってまで、ある時は「落書き」の形をとって、抜け道を探して描き続けます。「朝比奈小人嶋遊」は、大名行列を見下ろしているのが武家を蔑視していると捉えられるのを恐れて、販売を取り止めたという。


そうかと思うと「美人画」を描かせれば、明るく健康的で、おきゃんで気さく、颯爽とした江戸美人、これまたお手のものです。タイトルがまたいい。「ヲゝいたい」「えりをぬきたい」など。湯上がりの女性像を描いた「浴後美人図」、満開の桜の下に佇む芸者を描いた「桜下身づくろいの芸者」は、国芳好みの美人図です。子どもを描かせても一流。国芳は猫好きでも知られていますが、動物を擬人化したものもまたいい。よくアルチンボルトと比較されるのが「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」。最近俄然取り上げられるようになったのは「東都三ツ股の図」、川の向こうに話題のスカイツリーが見えます。これもよく取り上げられる洋風表現を取り入れた「忠臣蔵十一段目夜討之図」、ニューホフ著「東西海陸紀行」の銅版画挿絵に基づいたものです。この原書が会場に展示されていました。「相州江之嶋之図」は、映画監督の篠田正浩が絶賛しています。


国芳門下は大勢いた。それを示すのが「勇国芳桐対模様」、一門の結束力がうかがえます。「国芳が山王祭の際に門人たちと共に手踊りをして祭礼の列に加わった時の模様を絵画化したもの」と、図録にあります。落合芳幾の筆による「歌川国芳死絵」では、自分の顔をあえて描こうとしなかった国芳の容貌を知ることができます。国芳の門人である五姓田芳柳がリアルに描いた「歌川国芳肖像」もありました。5度も改名したので五姓田と称したとのこと。その次男が義松といい、早くから神童と呼ばれ、横浜でワーグマンに油絵を学び、パリにも留学しました。


展覧会の構成は、作品リストに従って、前期は、

「豪快なる武者絵と妖怪」

〈勇〉武者絵

〈怪〉妖怪絵

〈華〉役者絵・忠臣蔵


そして、後期は、

「遊び心と西洋の風」

〈遊〉戯画・狂画

〈爽〉美人画・風俗画

〈憧〉洋風画

今回はこちらになります。以下、画像を中心に・・・。


〈遊〉戯画・狂画





〈爽〉美人画・風俗画




〈憧〉洋風画





国芳肖像



「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」展

江戸時代後期を代表する浮世絵師、歌川国芳(1797-1861)。幕府の財政が逼迫し世情が不安定だった当時、その閉塞した社会状況を打破するようなパワフルな武者絵やユーモラスな戯画を描いて大衆の喝采を浴びたのが国芳でした。浮世絵といえば、歌麿、写楽、北斎、広重のような江戸情緒あふれる作品を思い浮かべる人が多いでしょう。ところが、国芳は私たちが抱いている浮世絵の常識を覆してくれる破天荒な作品の数々を生み出していたのです。かつて国芳は浮世絵の専門家からも十分な評価を受けていませんでしたが、近年、近代感覚あふれる斬新な造形性が再評価され、現代の若者たちをも魅了するようになりました。その人気は海外にまで広まり、2009年にはロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで、2010年にはニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで大規模な展覧会が開催され、大きな反響を呼びました。今年は歌川国芳の没後150年にあたります。これを機に開催する本展覧会では、武者絵や妖怪画からなる【前期 豪快なる武者と妖怪】と、戯画や洋風画からなる【後期 遊び心と西洋の風】という二部構成に分け、多岐にわたる国芳作品の魅力を全く異なる二つの角度から紹介いたします。現代もなお私たちを圧倒してやまない「破天荒の浮世絵師」、歌川国芳のパワーを実感し、その芸術世界をご堪能ください。

「太田記念美術館」ホームページ


とんとん・にっき-oota3 「破天荒の浮世絵師 歌川国芳」展

図録

企画委員:

悳俊彦[洋画家、国際浮世絵学会会員]

稲垣進一[国際浮世絵学会常任理事]

勝原良太[ばれんの会代表]

河野元昭[秋田県立近代美術館]

日野原健司[太田記念美術館主幹学芸員]

編集:

太田記念美術館

NHKプロモーション

発行:

NHKプロモーション


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