国立新美術館で「ワシントンナショナルギャラリー」を観た! | とんとん・にっき

国立新美術館で「ワシントンナショナルギャラリー」を観た!



国立新美術館で「ワシントンナショナルギャラリー」を観てきました。観に行ったのはちょうど1週間前の7月4日月曜日のことです。最近、国立新美術館へは、月曜日が開館しているので、比較的空いているのではと、それをねらって行くことが多くなりました。美術館の混み具合は、必ずしもそればかりではないのは当然ですが。チラシには「印象派・ポスト印象派、奇跡のコレクション」とあり「これを見ずに、印象派は語れない。」とあおっています。そして「これほどの質と規模での展覧会は、ワシントン・ナショナル・ギャラリー70年の歴史上亡かったことであり、そして、これからもないだろう」と、アール・A・パウエル3世の言葉を載せています。


ワシントン・ナショナル・ギャラリーの、12世紀から現代に至るまでの西洋美術コレクションは、約12万点を所蔵する、世界有数の規模と質を誇る美術館だという。今回の展覧会では、特に質が高いことで知られる印象派とポスト印象派の作品のなかから、日本初公開約50展を含む全83点が展示されています。「常設コレクション作品」に指定されている傑作が9点。「常設コレクション作品」は一度に12点までしか貸し出すことができないという不文律があるという。これだけ纏まって貸し出されるのは極めて稀だという。まさに「これを見ずに、印象派は語れない」というのも、もっともだと言えます。


これだけの名画を一堂に会して観ることは、そうざらにはありません。マネの「鉄道」、モネの「日傘の女性、モネ夫人と息子」など、一つ一つの作品を取り上げて、素人がどうこう言うのもお門違いというものです。もちろん、観たかった作品が間近に観られただけでも、幸せというものです。有名どころの名前を挙げてみると、コロー、クールベ、ブーダン、マネ、ピサロ、ドガ、シスレー、モネ、モリズ、ルノワール、カサット、カイユボット、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、シニャック、ロートレック、スーラ、等々、いや、凄いものがあります。たしかにこれは「印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション」です。


展観会の構成は、以下の通りです。

第1章「印象派登場まで」

第2章「印象派」

第3章「紙の上の印象派」

第4章「ポスト印象派以降」


図録の巻末に「アメリカ人と印象派」という平井章一(国立新美術館主任研究員)の論文が掲載されていて、僕の興味をひきました。まず最初に「印象派やポスト印象派のこれほどまでに充実したコレクションが、なぜ本国フランスではなくアメリカにあるのか?」という問いを立てています。印象派の作品は今でこそ広く大衆に愛される絵画となっているが、それらが描かれた19世紀後半当時は、いわゆる前衛絵画であった。フランス本国でさえ、印象派の作品を購入する個人コレクターは数えるほどしかいなかった。にもかかわらず、アメリカのコレクターたちは、評価の定まった安全な作品を買えたのもかかわらず、印象派やポスト印象派の作品を熱心に収集したのだった。そして次の問い、「アメリカのコレクターたちは、印象派の作品をなぜこれほどまでに収集したのか」、という疑問を提出します。


国内を二分した南北戦争の後、アメリカは空前の経済発展を遂げ、世界最大の産業国であったイギリスと肩を並べる存在になります。それとともに台頭したのが「富豪」と呼ばれる人たちです。彼らは財閥を形成し、政治的な権力を行使し、その財力にふさわしい高い教養と振る舞いを意識するようになります。美術品を蒐集するという行為もその一つです。富豪たちが注目したのは、人生を謳歌する術、洗練された完成、深い精神性を備えた芸術の都フランスのパリでした。


アメリカ人でありながら、パリで印象派の画家として活動したメアリー・カサットは、フィラデルフィアの上流階級の出身でした。カサットは、印象派を擁護する立場から、その異議や価値を友人たちに熱心に説いて収集を勧めました。1876年に、当時16歳だったルイジーン・エルダーは、カサットの助言を受けて、ドガの小さなパステル画を購入しますが、これがアメリカ人による印象派のコレクションの始まりとされています。カサットの個人的なネットワークを通じて富裕層に始まった印象派の作品収集は、1880年代に入るとさらに盛んになります。アメリカでの需要の高まりに、画商たちも当然呼応します。


こうしたコレクターたちの急速な広がりは、印象派の作品そのものが、アメリカ人の心性になにかしら響くものを有しており、カサットはそれを覚醒させる起爆剤となったのではないか。そこで着目したいのが、印象派の重要なモティーフでありキーワードの一つである「自然」であると、平井は言います。そう言えば、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催された「モネとジヴェルニーの画家たち―アメリカ印象派の始まり」という展覧会がありました。アメリカ人画家たちがジヴェルニーでコロニーを作って、絵筆を握って活動してました。また、アメリカ人画家セオドア・バトラーとモネの義理の娘であるシュザンヌ・オシュデは結婚しました。主として描かれたのは、ジヴェルニーの「自然」でした。


第1章「印象派登場まで」



第2章「印象派」






第3章「紙の上の印象派」


第4章「ポスト印象派以降」




「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」

印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション

アメリカの首都、ワシントンD.C.に位置し、今年で開館70周年を迎えるワシントン・ナショナル・ギャラリーは、12世紀から現代に至るまでの西洋美術コレクション約12万点を所蔵する、世界有数の規模と質を誇る美術館です。本展では、同館でも特に質が高いことで知られる印象派とポスト印象派の作品の中から、日本初公開の約50点を含む全83点を紹介します。同館の心臓部とも言えるこれらの作品が、これほどの点数でまとまって貸し出されるのは極めて稀なことです。クールベやコローらバルビゾン派、写実主義を導入部とし、印象派の先駆者といわれるブーダンやマネを経て、モネ、ルノワール、ピサロ、ドガ、カサットら印象派に至り、セザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、スーラなど、それぞれの表現によって印象派を乗り越えていったポスト印象派に続きます。アメリカが誇る珠玉のコレクションの数々をお楽しみください。

「国立新美術館」ホームページ


とんとん・にっき-wa1 「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」

印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション
図録

編集:

日本テレビ放送網

国立新美術館

京都市美術館

発行:

日本テレビ放送網2011