そごう美術館で「近代日本画にみる女性の美―鏑木清方と東西の美人画」展を観た(その2)! | とんとん・にっき

そごう美術館で「近代日本画にみる女性の美―鏑木清方と東西の美人画」展を観た(その2)!



そごう美術館で「近代日本画にみる女性の美―鏑木清方と東西の美人画」展を観てきました。チラシには「いつだって、女にはドラマがある。」というコピーが意味ありげに書かれています。そして「福富太郎コレクション」とあります。「福富太郎コレクション」については、前々から気になっていました。あの「キャバレー王」の福富太郎ですから・・・。


「鏑木清方と東西の美人画」とあり、チラシには、「鏑木清方を中心に、東は菊池容斎、富岡永洗、水野年方、梶田半古、伊東深水ら、西は上村松園、菊池契月、北野恒富、島成園ら、近代日本画を代表する作家」とありますが、と、ここでは「鏑木清方編」(その1)と同じですが・・・。ここからは「東西美人画編」の方を重点的に書いておこうと思います。


福富太郎コレクションの中で最も古いのは菊池容斎「塩谷高貞妻出浴之図」で、1842(天保13)年の作ですが、他のほとんどが明治・大正・昭和前期の作品です。戦後の作品は、鏑木清方の「時雨の宿」と、伊東深水の日劇ミュージックホールの楽屋を描いた「戸外は春雨」の2点だけです。近代の美人画は江戸期の浮世絵を基盤としていますが、菊池容斎は浮世絵系の画人ではなく、狩野派をはじめ土佐派や洋風画まで学んだ幕末の長老で、進趣の歴史画で知られ、粋で新鮮な感覚を示して幕末・明治の多くの画家に影響を与えたという。


容斎の「塩谷高貞妻出浴之図」は、ヌードそのものです。その弟子に渡辺省亭がいますが、工芸図案の改良に取り組み、西洋的感覚を示す花鳥画に腕をふるったという。そのモデルが子弟ともに同じ「塩谷高貞妻」というのは、なにかの因縁でしょうか?いずれにせゆ、1887(明治20)年以降に盛んになる風俗画や美人画は、直接江戸期の錦絵が発展したものではなく、菊池容斎の歴史画や風俗画を参考にしながら、明治の新しい分野として定着したという。


美人画といえば西の上村松園、それと並ぶ東の美人画の巨匠は鏑木清方です。鏑木清方は浮世絵系の水野年方の教えを受けながらも梶田半古に憧れたという。水野年方も月岡芳年に学び、のちに南画を学び渡辺省亭に私淑したという。年方門下の清方の後輩にあたる池田輝方・蕉園夫妻も、のちに川合玉堂に学び、浮世絵系からの脱皮を計ります。さらに大正から昭和には、鏑木清方門下の伊東深水、寺島紫明らへと受け継がれていきます。


一方、西の中心である京都は、美人画の巨匠・上村松園が美人画を描き、菊池契月も歴史画から浪漫的な人物画、さらには大和絵の研究による清澄で気品のある美人画を描きました。明治末、大正初期の京都には浪漫的な雰囲気が濃く、秦テルヲのデカダンスの気に溢れる制作や、土田麦僊らの芸術至上主義的活動があり、1918(大正7)年には麦僊らによる国画創作協会の結成が見られ、甲斐庄楠音、岡本神草、梶原緋佐子らも同協会に共鳴した人達でした。


東京の画家の美人画が圧倒的に多いのだが、それらと上村松園、伊藤小坡、甲斐庄楠音や梶原緋佐子ら京都の画家、さらに北野恒富、島成園ら大阪の画家の作品と見比べてみると、三都の美の性格も浮かびあがってきます。(参考:内山武夫「美人画の系譜」に寄せて)


東の美人画






西の美人画





福富太郎コレクション「近代日本画にみる女性の美―鏑木清方と東西の美人画」展
日本美術のなかで、古来より描き継がれてきた女性の美。とりわけ近代日本画にみる女性の姿は、「美人画」として今もなお人々を魅了し続けています。女性像は時代によって様々な分野・目的のもとで表現され、江戸期に入ると浮世絵の重要なテーマの一つとなります。近世初期の風俗画をルーツに持つ江戸の浮世絵では、当世の風俗とともに描かれる美人図が大流行しました。一方の上方では、円山四条派が気品ある精緻な女性像を生み出しました。そして明治・大正・昭和初期にかけて、一つのジャンルとして確立した「美人画」は絶頂期を迎え、東京・京都・大阪の三都を中心に、江戸以前の絵画の影響を受けながら更に多様な展開をみせていきます。本展では、国内有数の美術蒐集家である福富太郎氏のコレクションから、鏑木清方を中心に、東は菊池容斎、富岡永洗、水野年方、梶田半古、伊東深水ら、西は上村松園、菊池契月、北野恒富、島成園ら、近代日本画を代表する作家の作品約70点をご紹介します。優品でたどる東西美人画の系譜。贅沢なひとときをお楽しみください。


「そごう美術館」ホームページ


とんとん・にっき-fuku1 美人画の系譜

—鏑木清方と東西の名作百選

福富太郎コレクション












過去の関連記事:

そごう美術館で「近代日本画にみる女性の美―鏑木清方と東西の美人画」展を観た!
サントリー美術館で「清方ノスタルジア 名品でたどる鏑木清方の美の世界」展を観た!

宮下規久朗の「刺青とヌードの美術史 江戸から近代へ」を読む!