東京オペラシティアートギャラリーで「曽根裕展 Perfect Moment」を観た! | とんとん・にっき

東京オペラシティアートギャラリーで「曽根裕展 Perfect Moment」を観た!



東京オペラシティアートギャラリーで「曽根裕展 Perfect Moment」を観てきました。いつもの入口とはちょっと違います。大理石の彫刻だと知っていたので、そうたくさんの作品は出ないだろう、であるならそんなに広い会場はいらないだろう、従って入口はいつもの展示場の入口とは違って、直接広い会場へ入るだろう、と、会場へ行く電車の中で想像していました。概ね当たっていましたが、DVDの映像が流されていることは、想像がつきませんでした。


第1会場と言っていいのかどうか、「ナイト・バス」と「バースディ・パーティ」の映像が大画面で流されていました。正直言って、どういう意味があるのか、結局のところ、わかりませんでした。「未知の世界」へと、好奇心をかき立てるためのようですが。


籐でつくられた「バナナ・ツリー」のジャングルの中を、大理石の彫刻が5点、展示してあります。「木のあいだの光 #1」「木のあいだの光 #2」「6階建てのジャングル」「大観覧車」、そして「リトル・マンハッタン」の5点です。どれもこれも大理石を切り出したものなので、どれだけ労力と時間がかかったことやら、想像するだけで気が遠くなります。がしかし、確かに近くで観れば大理石ですが、遠くからは残念ながら単なるミニチュアでしかありません。そのあたり、作者はどう考えているのか、つまびらかではありません。


その点、「リトル・マンハッタン」は、もう凄いのなんのって、人々がイメージするニューヨークのあらゆるものが、この彫刻に込められているような気がします。アメリカの中心、ニューヨークの中心、そのマンハッタン島を白い大理石で正確に彫刻しました。現物を見ないと、その迫力はわかりません。ミケランジェロの若き日の傑作「ピエタ」に勝るとも劣らない、大理石の作品です。


1972年の夏、アメリカ旅行をした際に、ニューヨークへ立ち寄りました。アメリカ旅行のスタートがニューヨークでした。いきなり日本からニューヨークへ着いたので、見るもの聞くもの、若者にとっては驚きの連続でした。その時に買えばよかったと日本へ帰ってきて思ったのは、マンハッタンの地図、アクソノメトリック図に起こされたものでした。ニューヨークの本屋で、どこでも売っていました。日本の本屋では、その当時は売っていませんでした。曽根裕の大理石の彫刻「リトル・マンハッタン」を観て、思い出しました。


曽根裕プロフィール
1965年静岡県に生まれる
1988年東京藝術大学美術学部建築学科卒業
1992年東京藝術大学大学院建築専攻修士課程修了
東京藝術大学修士制作展サロン・ド・プランタン賞受賞






「曽根裕展 Perfect Moment」

ロサンゼルス在住の作家・曽根裕は、国際的に高く評価されている作家のひとりです。その作品は、観客を巻きこんだプロジェクト型の作品、映像、彫刻、ドローイング、油彩画など、実に幅広い展開を見せてきました。近年精力的に取り組んでいるのが、中国とメキシコの工房で現地の職人と共同で制作する精緻な彫刻作品です。「建築家になるために美術を選んだ」という曽根の姿勢は、言い換えると「あーとには建築のスケールに収まることのないかたちや風景を創ることができる」という壮大な夢を追う姿なのかもしれません。曽根にとってのアートとは、人間の営みが生んだかたちであり、同時に人間にとって未知の領域を発見するための方法でもあります。木漏れ日のような刹那的で儚いものや、年の風景や観覧車など人間が生み出したものを大理石の彫刻に仕上げ、人類がまだ足を踏み入れたことのないジャングルを創り出す。このような制作の土台には、人間があらゆる制約から解き放たれ、多様性に満ちた混沌の中に、ひとりひとりのユートピア、「パーフェクト・モーメント」を発見することへの願いが流れています。


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