銀座・資生堂ギャラリーで「石上純也展」を観た! | とんとん・にっき

銀座・資生堂ギャラリーで「石上純也展」を観た!


銀座の資生堂ギャラリーで「石上純也展 建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?」を観てきました。僕が行ったのは8月27日の午後。銀座ももちろん、めちゃくちゃ暑い。銀座4丁目交差点の日産ビルの温度計は、34度を指していました。資生堂ギャラリーは地下2階、表側からはエレベーターで、裏側からは階段で降ります。階段で降りると、吹き抜けているので、地下1階の部分から展示スペースの全景がよく見えます。実は僕は、資生堂ギャラリーには、初めて行きました。


石上純也の略歴は、以下の通り。1974年神奈川県生まれ。2000年東京藝術大学大学院美術研究科建築科修士課程修了。2000-04年妹島和世建築設計事務所勤務。2004年石上純也建築設計事務所設立。2009年東京理科大学 非常勤講師。


僕が石上純也を知ったのは1年くらい前のことです。「神奈川工科大学KAIT工房」という作品が「日本建築学会賞」を受賞し、その写真を見たときでした。白くて細い鉄骨の柱がたくさん並んでいる建物で、こんなに細くて持つのかな?また、柱が多くどういうふうに使うのかな?というのが第一印象でした。なにごとも実際に観てみなければ始まらない。すぐにこの建物を観に行きたいと思い、ネットで下調べはしてあったのですが、厚木の先の方なのでちょっと遠いこともあり、延び延びになっていました。その後、「第11回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館」の写真を見ましたが、写真だけでは情報が少ないせいか、どういうものかまったく見当がつきませんでした。今年、「第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」にも出展しているので、2年連続のヴェネチア出展、ということです。


今回の展示は、ほとんどが模型です。それも「アイデア模型」というか「思いつき模型」というか、「建築のヒント」になるであろう模型です。いわゆる完成模型は一つもありません。思いついたものをどんどん模型にし、またその模型を見ながらまた次の模型を考える、アイデアを発展させる、建築家なら誰しもがよくやる「手」です。まあ、そこまでは誰でもやるのでしょうが、そこから発展して、実現させるまでは、これはまた大変な作業です。それにしても何列もの細い合板のテーブルの上に、小さな模型がびっしりと埋まっていました。住宅もあれば、家具もあり、平屋もあれば4~5階建てらしきものもあります。模型の材料も様々です。ほとんどが紙ですが、針金もあれば、粘土模型もあります。これらの小さな模型のすべてに「可能性」があります。

(以下、画像は資生堂ギャラリーホームページより)





石上純也展 建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?

資生堂ギャラリーは、2010年8月24日(火)から10月17日(日)まで「石上純也展 建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?」を開催いたします。石上純也は、2009年に日本建築学会賞を受賞。ヴェネチア・ビエンナーレ建築展には2008年に日本館、2010年にグループ展と2回連続での参加が決まるなど、国内外で活躍し、現在最も注目されている気鋭の建築家です。「私たちがまだ知らない世界を切り開くひとつの手段として建築があるのではないか」と考える石上は、既成概念にとらわれない自由な発想で建築の新しい可能性を追い求めています。現在、石上はロンドンに本拠を置く美術系の出版社、テームズ・アンド・ハドソン(Thames & Hudson)から、2011年に出版予定の本を制作中です。この本は単なる作品集ではなく、石上純也の建築に対する考えを示すものです。これまでのものから未発表の新たなものまで、約100のプロジェクトが掲載される予定です。展覧会では、そのなかから主要なもの約60を選び、模型を主体とした展示を展開します。展示予定のプロジェクトは、指先ほどの器の内部を空間としてとらえ、小さな草花をその小さな壁に展示する「little gardens」、スコットランドの古い美術館をとりまく巨大な庭を新たな環境に計画しなおすことで美術館そのものを再生する「landscape for the old museum」、大きな草原や山など、本来都市を取り囲む自然環境を建物で取り囲むことで生まれる中庭のような空間、それを街の環境としてとらえなおすことで、自然環境のスケールと都市のスケールを等価にとらえていく「big patio」など。それらのプロジェクトは、実際のものとその延長で生まれたものとの間に明確な区別はなく、等価に思考された結果としてあらわれたもので、その背景には常に、建築のカテゴリーを超えた専門家へのリサーチ、それをもとに行う物理計算・論理展開などの具体的な試行がともなっています。そして、それらはどれも石上が追求している建築の可能性の一端を担っているのです。世界の状況を瞬時に知ることができ、人々の意識の範囲が広がっている現在、従来の価値観やスケール感を超えた建築が必要と石上は考えます。展覧会タイトルの「建築はどこまで小さく、あるいは、どこまで大きくひろがっていくのだろうか?」には、「惑星と建築、素粒子と建築、建築以外のすべてのものと建築、たとえば、そういうスケールの広がりをもって建築の可能性を考えていきたい」という石上の確信と期待が込められています。建築家として、着実に現在から未来へと向かっている石上純也の世界をぜひお楽しみください。


「資生堂ギャラリー」ホームページ


以下のサイトで、模型がみられます。

ART iT「石上純也展」資生堂ギャラリー


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ここまでは昨晩書いた記事です。今朝の朝日新聞朝刊(2010年8月29日)に、以下のような記事が、いや、驚きました。なんと、石上純也の作品がベネチア建築展で「金獅子賞」を受賞したというビッグ・ニュースです。残念ながら、画像ではどのような作品なのか、よく分かりませんが。

(以下、記事と画像はasahi.comより)


ベネチア建築展金獅子賞に石上さん 日本人は04年以来
【ベネチア(伊)=大西若人】第12回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展の開会式と授賞式が28日、ベネチアで開かれ、全体テーマに基づいてつくった作品を発表する企画展示部門で最高賞の金獅子賞を建築家の石上純也さん(36)が受賞した。日本の建築家が同賞を受賞するのは2004年の妹島和世さん、西沢立衛さん以来。 石上さんの作品は糸のように細いカーボン製の柱が24本並ぶ、幅、高さ約4メートル、奥行き約13メートルの仮設建築。内覧会途中で倒れてしまったが、石上さんは「究極の状態を追求した結果が認められてうれしい」と話した。 石上さんはガラスなどを使った透明感のある建築で知られ、08年にはベネチアの建築展の国別部門の日本代表になった。09年に「神奈川工科大学KAIT工房」で日本建築学会賞を受けている。






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前日の朝日新聞夕刊(2010年8月28日)には、世界最大規模の建築展として知られるベネチア・ビエンナーレ国際建築展の第12回展が29日、ベネチアで始まる、という「ベネチア(伊)=大西若人」の記事がありました。総合ディレクターは建築家の妹島和世、日本人としても、女性としても初めて務める。53カ国が参加した国別対抗展示と、大会場を使った企画展があり、企画展の展示内容は妹島さんが決め、46組の建築家、美術家らが出展している。 妹島さんの起用が発表されたのは昨年11月、「人生に一度の依頼と考え挑戦した」。「ピープル イン アーキテクチュアー(人は建築で出会う)」というテーマを掲げ、「どの出展者も一生懸命やってくれ、きちんと方向性は示せたと思う」と語ったという。

*いつもは買わない「文藝春秋」、9月特別号は「芥川賞発表」ということで、「選評」を読むだけのために購入しました。その「文藝春秋」の巻頭グラビアには、「日本の顔」として妹島和世さんの写真が8ページに渡って載っていました。押しも押されぬ「日本の顔」となったようです。