東京オペラシティアートギャラリーで「エレメント セシル・バルモントの世界」展を観た! | とんとん・にっき

東京オペラシティアートギャラリーで「エレメント セシル・バルモントの世界」展を観た!

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東京・初台の東京オペラシティアートギャラリーで「エレメント セシル・バルモントの世界」展を観てきました。建築の展覧会というとどうしても図面や模型、あるいは写真などを使って、建築家が言いたいことを伝えるというのが一般的ですが、今回の「エレメント セシル・バルモントの世界」展は、図面や模型がまったく見当たりません。感覚的に伝えたいという試みでしたが、果たしてどれだけ伝わったか、疑問に思いました。やはり現実の仕事の中にその思いを託すべきだったのではないでしょうか?


セシル・バルモンドの経歴は、以下の通りです。1943年スリランカ、コロンボ生まれ。 1960年セイロン大学入学。 1961年両親の住むナイジェリアに移住。イバダン大学(数学、化学)。 1962-65年サウサンプトン大学(シヴィル・エンジニアリング)。 1966年オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ(ARUP)入社。 1971年ロンドン・インペリアル・カレッジ修士課程修了。 2002年ARUP副会長、建築部門会長に就任。建築と構造エンジニアリングの社内研究機関アドヴァンスト・ジオメトリー・ユニット(AGU)を創設。 2004年ARUP特別研究員就任。ペンシルヴァニア大学教授就任。


ギャラリー1は、自然界のイメージや抽象的なスケッチが描かれた無数のバナー(プリントされた布)が、天井から吊られています。迷路状になっていて、バナーを押し開けて次の場所に移動します。中央には円形の広場があります。


ギャラリー2には、フラクタルな川が流れます。「H_edge(ヘッジ)」は、H形のアルミプレートとステンレスのチェーンという単純な仕組みでできた立体的なヴォイド(空隙)です。「H_edge(ヘッジ)」は、決まった領域やヴォリュームを持たない、歩くごとにヴォイドが変形します。まるで迷路です。「Danzer(ダンザー)」は、白黒一対の四面体はフラクタルな川の流れに転がる巨石です。どちらも4種類の四面体が三次元的に集合してできた大きな石です。「ヘッジ」と「ダンザー」が今回の主たる展示です。ギャラリー2は、靴を脱いで見て歩きますが、果たして靴を脱ぐ必要があったのかどうか?


コリドールで、やっと現実の仕事の紹介が出てきます。アルヴァロ・シザの「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」、伊東豊雄の「サーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン」、OMAの「CCTV(中国中央電視台)新社屋」、等々。やはり僕らの興味の的は建築家との協同でできた実際の建築です。コリドールにおざなりな展示ではなく、この部分に重点を置いた展示をしてほしかったと思います。







昨年行った北京旅行で見た中国中央電子台の火災跡、未だに仮囲いがしてあり、まったく手つかずの状態でした。設計者はオランダのレム・コールハウス率いる設計事務所OMAです。中央電子台の本屋の方の形態は実際に観てみると圧巻でした。2009年2月9日、元宵節の夜、違法な花火によって北配楼に火災が発生しました。



「エレメント」構造デザイナーセシル・バルモンドの世界
セシル・バルモンドは、エンジニアリングの枠を超えて建築家と創造的な協同を行う構造デザイナーです。構造エンジニアと聞くと、建築家によってデザインされた建築を、力学や施工などの制約を踏まえて物理的に成り立たせ、建物に丈夫な骨組みを与えるための技術的なサポートをする縁の下の力持ちとしての役割がイメージされるでしょう。しかしバルモンドの仕事はそこにとどまりません。「丘の上に空飛ぶ絨毯のように家を飛ばしたい」「運動がみなぎる四角の箱をつくりたい」建築家から寄せられるこのようなリクエストに独自のアプローチで挑み、彼らの実験的な思考を実現に導くバルモンドには、世界中の建築家から期待と信頼が寄せられています。

スリランカに生まれ育ち、アフリカ、ヨーロッパで化学、数学、建築を学んだバルモンドは、イギリスの総合エンジニアリング会社アラップび加わり、以来レム・コールハウス、伊東豊雄、アルヴァロ・シザを始めとする世界の名だたる建築家とともにさまざまなプロジェクトを手掛けてきました。バルモンドが生み出す新しい幾何学は、建築を従来の資格、三角、縁を基本とした静的で閉じたものから解き放ち、複雑さをはらんだ動的で有機的なものへと飛躍させて現代建築の可能性を大きく開きました。最新のコンピュータ技術と施工技術を駆使しながらも、バルモンドの思考の原点は私たちにとって身近なものにあります。太陽を求めて回転しながら成長する植物、枝分かれする葉脈、燃え盛る炎のゆらめき、刻々と変化する陽の光。自然の仕組みの注目し、その豊かで美しい秩序を構造に取り入れるバルモンドは、建築に脈動、鼓動を与えて命を吹き込みます。

バルモンドがデザインする構造は、その建築を訪れる人々の奥底に眠る本能を呼び覚まし、感覚と知性を刺激します。自然の形を模倣するのではなく、その根源にある美しさを抽出して広がりを持った幾何学へと展開するバルモンド。展示室をいっぱいに使ったインスタレーションによって、バルモンドが開く建築の新しい世界を体験していただきます。(以上、チラシ裏より)


「東京オペラシティアートギャラリー」ホームページ