本谷有希子の「幸せ最高ありがとうマジで!」を読んだ! | とんとん・にっき

本谷有希子の「幸せ最高ありがとうマジで!」を読んだ!


本谷有希子の「幸せ最高ありがとうマジで!」を一気に読みました。「第53回岸田國士戯曲賞受賞」と本の帯にある通り、この本は「戯曲」です。戯曲とはなにか?広辞苑によれば「①上演する目的で書いた演劇の脚本。台本。②文学の一形式。主として会話・演技によって表現される芸術作品。」とあります。いや、お恥ずかしい、実は「戯曲」なるもの、僕は初めて読みました。


著者の本谷有希子は1979年石川県生まれ。「劇団、本谷有希子」主宰。高校卒業後上京。00年9月「劇団、本谷有希子」を旗揚げ、主宰として作・演出を手掛ける。06年に上演した「遭難」で第10回鶴屋南北戯曲賞を最年少で受賞。また、小説家としても活動しており、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(講談社)で三島賞候補に、「生きてるだけで、愛。」(新潮社)で芥川賞候補作ににノミネートされます。06年「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を最年少(27歳)で受賞します。そして「幸せ最高ありがとうマジで!」で第53回岸田國士戯曲賞を受賞します。


また、先日発表がありましたが、第141回芥川賞の候補作に、群像6月号に掲載された「あの子の考えることは変」が取り上げられました。演劇界と文学界、双方から新時代の担い手と注目を集めています。自ら主宰する「劇団、本谷有希子」以外では初となる作・演出作品「幸せ最高ありがとうマジで!」で、昨年、パルコ劇場に登場しました。主演は、本谷原作の映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」に出演していた永作博美でした。本谷有希子は、パルコ劇場のメッセージに次のように書いています。


「パルコには恨みがある。かつて田舎者丸出しだった私は、ファッションビルの放つテンションの高さや華やかさにビビッて「くそ、おしゃれめ」と俯きながら何度も入り口の前をそそくさと素通りした。今はさすがにそんなことはないけど。でも今回この劇場で芝居を打たせてもらえることになって改めて思った。『やっぱりここは私のコンプレックスを刺激する場所だ!』と。初期の強いコンプレックスを思い出すような舞台にしたい」。そして「永作博美には妬みがある。彼女は他人からどう思われるかだけを考えて生きてきた私とは対極の人だ。何があったのか、他人からどう思われようと心底どうでもいいらしい。真逆。私が憧れても憧れても絶対に手に入れられないものを持っている彼女に演出。嬉しい」と、渋谷のど真ん中で自分の芝居を上演する思いを述べています。


登場人物は全部で6人。明里(あかり)、ある日突然、慎太郎の愛人を名乗って新聞販売所に現れた、謎の女。曽根慎太郎、新聞販売所の主。彼の恐喝のような勧誘や、集金によって店はなんとか経営が続いている。生来の女好き。曽根美十理(みどり)、慎太郎の後妻。あらゆることを一万回許してきた女。再婚は4度目。曽根功一、慎太郎の息子。学生時代は猛勉強したが、どうにもならない知能の低さで、結局家業を継いだ。曽根紗登子(さとこ)、美十理の連れ子。ダンサー志望の短大生。山里えいみ、新聞販売所の住み込みバイト。


舞台は「エリートが書いたもんをヤクザが売る」とからかわれる、とある町の新聞販売所。店主の慎太郎の留守中、「旦那さん、いらっしゃいますか」と訪ねてきた明里が言います。「うちの、ですか?今は、まだちょっと集金から帰ってきてなくて、もし用があるなら・・・」、「・・・どちら、さまでしょう?」と美十理が聞くと、明里は平然と「愛人です」と答えます。美十理は去年、新聞販売所の主・曽根慎太郎と再婚したばかりです。慎太郎には、息子の功一がいて、美十理は紗登子がいます。もともと慎太郎の女癖の悪さは病的とも言えたため、妻と子供たちはその話を信じ込んでしまいます。



が、家族は一丸となって明里の存在を無かったことにしようとします。嫉妬でおかしくなったように家に上がりこもうとする明里を、妻と息子と娘は協力して阻止します。新聞販売所には住み込みのアルバイト・山里えいみがいます。慎太郎と愛人関係にあるえいみは、リストカットの常習者です。明里は家族かr道に放り出されますが、えいみの手引きによって、敷地内のプレハブ小屋に密かにかくまわれます。こうして、誰にも予想できない復讐劇の幕が上がります。「幸せ最高ありがとうマジで!」の舞台は、自称「明るい人格障害」の謎の女・明里が、曽根新聞販売所に入り込み、幸せに見える家庭を壊して真実を暴き出すという「無差別テロ」仕掛けます。


本の帯には次のようにあります。
「病むなら病むで、元気に病めばいいじゃない!私、病んでいるけど元気なのよ」。とある新聞販売所にやってきた、謎の女。女は聞きとして、その一家の不幸を抉り出していく。目的は復讐か?否。女は、縁もゆかりもない見ず知らずの人間だったのだ。悪魔的なエネルギーで一家を追いつめる女。真の目的は一体なにか?不幸の理不尽をブラック&シニカルに描いた、喜英のパルコ劇場デビュー作!永作博美主演!


パルコ・プロデュース

「幸せ最高ありがとうマジで!」


「劇団、本谷有希子」公式サイト


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