菊池寛実記念智美術館で「第3回菊池ビエンナーレ展」を観た! | とんとん・にっき

菊池寛実記念智美術館で「第3回菊池ビエンナーレ展」を観た!

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実は僕は初めて行った美術館、ホテルオークラ新館横の坂道は何度も通っていましたが、菊池寛実記念智美術館があることはまったく気がつきませんでした。菊池寛実記念智美術館、マンションのような建物にあり、玄関を入ると庭側にレストラン、奇妙な曲線を描く螺旋階段で地下に下りるとそこが美術館でした。「菊池寛実記念智美術館」という名前からして不思議な感じで以前から興味を持っていました。美術館の設立者が菊池智、その父親が菊池寛実、だそうです。いつもはどのような展示なのか、菊池智は現代陶芸のコレクターだそうで、今回は「第3回菊池ビエンナーレ展」が開催されていました。


正直言ってあまり期待してなかったのですが、今回の展示されていた陶芸は、驚くほど質の高いものばかりでした。陶磁器は、古いものは茶道に連なる「わび」「さび」といった古色蒼然としたもの、あるいは柿右衛門など、派手派手な文様の高級なものという印象が強いものです。現代の陶芸というと、どちらかというと過去のものに対抗した実験的な、アバンギャルド的な作品が多いように思われます。池田満寿夫の晩年の作陶もそうとう実験的なものでした。しかし、今回「第3回菊池ビエンナーレ展」に入賞した作品は、実験的、アバンギャルド的な作品もありますが、総じて見事に完成した作品ばかりでした。


大賞をとった山口淀の「窯変銀扁壺」を筆頭に、形の素晴らしいもの、文様の緻密なもの、色の美しいもの、等々、一つ一つの作品が観応えがありました。残念ながらチラシはなくなっていて貰えませんでした。いただいた「作品目録」によると、なんと53もの作品が展示されていました。作品の一つ一つを引き立てるやや照明を落とした会場構成は、落ち着いて作品と向き合えて素晴らしいものでした。平常の展示は知らないのでなんとも言えませんが、今後、「菊池ビエンナーレ」については注目していきたいと思っています。






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【1】大賞:山口 淀 《窯変銀扁壷》

【2】優秀賞:西田 宣生 《碧の器》
【3】奨励賞:南 公二 《夢の香気の蒸留器》

【4】奨励賞:間野 舜園 《タタラ極細線文様茶注三種》

【5】奨励賞:和田 的 《白器「ダイ/台」》

【6】奨励賞:鈴木 徹 《緑釉壷》

【7】奨励賞:新里 明士《光器》



最後の一室に、菊池ビエンナーレ公募展とは関係がなさそうな「書」が展示してありました。名前を見ると、篠田桃紅と堀口捨巳とありました。篠田桃紅は、大正2年(1913年)生まれの前衛的な書家です。映画監督の篠田正浩は桃紅の従弟にあたります。堀口捨巳(1895-1984)は、東大の仲間と「分離派建築会」をつくり「近代建築(モダニズム)」を推進しますが、後に日本建築(数寄屋)に転じます。長く明治大学で教鞭を執り、1966年には「宮中歌会始」の召人もつとめた人です。


帰ってからどういう流れでこれが展示されたのか気になったので、美術館に電話で問い合わせたところ、学芸員の方が丁寧に説明してくれました。今回の展示が始まる頃、ちょうど桜の季節、花の季節だったので、美術館のオーナーである菊池智(高齢の女性だそうです)が今の季節に合ったいい「書」を持っているという話が出て、そういう流れで今回展示した、ということでした。下が薄暗い会場で僕が書き留めてきた「書」の全文です。


「篠田桃紅/筆 堀口捨巳/詠草」

 散りゆく はかなさゆえに

 花ひらく

 そのひとときぞ(こそ)

 いのちなりけれ(り)



菊池寛実記念智美術館


とんとん・にっき-ki2 第2回菊池ビエンナーレ展

とんとん・にっき-ki1 第1回菊池ビエンナーレ展