太田記念美術館で「芳年―『風俗三十二相』と『月百姿』―」展を観た | とんとん・にっき

太田記念美術館で「芳年―『風俗三十二相』と『月百姿』―」展を観た

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「芳年」、僕がこの名前を初めて聞いたのはつい最近のことです。昨年2月、千葉市美術館で開催されていた「日本の版画1941-1950」展を観に行ったのですが、上の階で「芳年・芳幾の錦絵新聞」展を開催しているとの案内がありました。副題には「東京日々新聞・郵便報知新聞全作品」とあります。僕は初めて見る「錦絵新聞」です。いただいたリストを見ると、「東京日々新聞」の錦絵114点(1点はパネル展示)、「郵便報知新聞」の錦絵62点(2点はパネル展示)の計176点です。大変な数でしたが、一つ一つの錦絵に引き込まれて、ついつい丹念に観てしまいました。


そこで「芳年」の名前を知ったわけですが、今年に入ってとらさん のブログを見て、専修大学生田校舎の図書館で「月岡芳年展 描く」が開催されていることを知り、観に行ってきました。専修大学の展覧会で僕は、月岡芳年の「風俗三十二相」と「月百姿」のあることを知りました。その後、ららぽーと豊洲にある平木浮世絵美術館UKIYO-e TOKYOでも「月岡芳年名品展-新撰東錦絵と竪二枚続-」があり、観に行ってきました。また、日本橋高島屋では「浮世絵 ベルギーロイヤルコレクション展」を観てきました。


「ベルギー展」、ここで異彩を放っていたのが、歌川国芳でした。その時、ブログに「この人が出てくると、会場に妨害電波が出たように思えてなりません」と書きました。その主旨は写楽、歌麿、春信、北斎、広重、国貞、国芳ら、江戸を代表する数多くの絵師の作品が数多く出されているにもかかわらず、芳年の作品がまわりを圧倒し、異彩を放っていた、というものでした。描かれたものがそれだけ個性が強いとも言えるでしょう。




実は「ベルギー展」では、なかなかよくできた図録を購入したので、ブログへは、チラシに載っていたものだけを画像に取り入れて載せるという、かなりいいかげんなブログの書き方でした。今回の太田美術館もまた、芳年の「風俗三十二相」と「月百姿」の全点が載っている素晴らしい図録を買ったので、それで安心して作品には細かく言及せず、「もういいかっ!」となってしまい、またまたいい加減なブログの書き方になりそうな気がしています。展示が前期半分、後期半分なので、受付に「全点載っていますよね」と念を押して購入しました。いや、これは「お宝」です。


僕が太田美術館へ観に行ったのは「前期」ですから、実際に観たのは作品の半分です。雨が降っていた日だったので下足を脱ぐのがちょっといやだったのですが、入場者は少なく、比較的ゆっくりと観ることができました。なぜかほぼ6割以上の人が外人の人でした。なにしろ一つ一つに解説があり、それを読んでから観るので、時間がかかります。図録にはその解説文がしっかりと載っています。「風俗三十二相」は明治21年(1888)の作、「月百姿」は明治18~24年(1885~91)の作です。言うなれば芳年の晩年の代表作です。


「ベルギー展」の図録の表紙は芳年の「金魚づくし」から採られていました。芳年はオールマイティ、万能選手です。役者絵、武者絵、戯画・風刺画・動物画、そして美人画に至るまで、どれをとっても抜群の個性豊かな水準以上の仕事をしてきた絵師でした。縦二枚でも、横三枚でも、なんでもござれ、「だまし絵展」のチラシにも「としよりのようふな若い人だ」が載っています。まだまだあります。「人かたまつて人になる」「人をばかにした人だ」そして「年が寄ても若い人だ」、等々。



Ⅰ.「風俗三十二相」~官能性溢れる美人画
さまざまな身分や職業の女性たちを描いた、全32枚からなる美人画です。嬉しそう、寒そう、痛そう、などといった、女性たちの心の内の感情を意欲的に表現しようとしています。官能性を帯びたその表情や仕草は、現代の私たちでも一見して共感できる魅力を放っています。明治21年(1888)の作。











Ⅱ.「月百姿」~幻想的な歴史画
月にちなんだ物語や説話を題材とした、全100枚からなる歴史画です。平安時代や戦国時代の武将たちや絶世の美女、幽霊や妖怪、滑稽な戯画など、同じ月でもそのジャンルは驚くほど広範囲に渡ります。芳年ならではの視点から切り取った迫力ある構図の作品がある一方、月夜の静けさがしみわたるような静謐さ漂う作品もあり、見る人を飽きさせないでしょう。明治18~24年(1885~91)の作。










参考:年景 大蘇芳年像
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以下、太田記念美術館のホームページより
月岡芳年(つきおか・よしとし、大蘇芳年とも、1839~92)は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師です。鎖国の世から突然の文明開化を求められた動乱の時代の中、激しい個性に満ち溢れた作品を次々と生み出し、しばしば「最後の浮世絵師」とも称されています。武者絵や戯画で知られる歌川国芳の下で浮世絵を学んだ芳年は、武者絵や歴史画、美人画などさまざまなジャンルで活躍しました。当時の人気は随一で、名実ともに明治時代を代表する浮世絵師と言うことができます。迫力ある構図が特徴で、血みどろ絵と呼ばれる残酷な表現や女性の妖艶さを捉えた美人画などの魅力は、時代を越えて現代の私たちをも惹き付けて止みません。本展覧会では、芳年の晩年の代表作であり、また今でも非常に人気の高い傑作、「風俗三十二相」と「月百姿」のシリーズを、前期後期に分けて全点紹介いたします。明治の巨星・芳年が最後に辿りついた境地は、浮世絵ファンならずとも十分にお楽しみいただけることでしょう。




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「芳年―『風俗三十二相』と『月百姿』―」

図録

2009年5月1日発行

編集:太田記念美術館









太田記念美術館


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