埼玉県立近代美術館で「都市を創る建築への挑戦」展を観た! | とんとん・にっき

埼玉県立近代美術館で「都市を創る建築への挑戦」展を観た!

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この展覧会は、去年、観に行きたいと思っていたのですが、どうしても都合がつかず、年が明けて会期末が迫ってきたので、一念発起して観に行ってきました。埼玉県立近代美術館は黒川記章の設計したもので、開館したのは1982年、今から27年前のことです。僕は開館してすぐこの建物を観に行きました。その時どんな展覧会が行われていたのかは、記憶がありません。覚えているのは、もちろん建物の形態や中心部の吹き抜けについてはよく覚えていますが、館内のあちこちに、著名なデザイナーがデザインした椅子が置かれていて、自由に座れたということです。今回行ってみてその記憶の通りで、館内あちこちに著名な椅子が置かれていました。




さて、「都市を創る建築への挑戦」展ですが、その頭に「設計組織のデザインと技術」とついています。「こうして街はつくられる」、これは大規模な建築を指しているようですが、誰がつくっているのか?、大規模な設計組織がつくっているのですが、今までその組織については、一般の人たちにはあまり知られていませんでした。丹下健三や黒川記章、そして安藤忠雄など、スター的な建築家は名前は知られていても、実際どんな仕事をしているのかは一般にはほとんど知られていません。大規模設計組織についてはなおさらです。施工会社の設計部についても同様です。


思い出したのは、かなり昔の話ですが、昭和38年9月30日に発行された「現代建築をつくる人々《設計組織ルポ》」(発行:KK世界書院)という本です。著者は浜口隆一と村松貞次郎の2人です。Ⅰ部は浜口隆一が担当、Ⅱ部は村松貞次郎が担当しています。この本の元になったのは、1961年11月号から62年5月号まで月刊雑誌「新建築」に「ルポルタージュ・設計組織を探る」として連載されたものです。それまで西欧的な建築家以外取り上げることのなかった建築雑誌が、組織的な設計事務所の他、建設業設計部や官公庁営繕、大学研究室などを取り上げて、建築界には地殻変動が起きていること、とりわけ村松貞次郎は「明日をになう建築家」として、建設業設計部を取り上げて、「彼らこそ明日の建築界のチャンピオンである」と言い切ったことでした。そして「設計施工一貫を推す」とまで言ったことで、建築界が大いに議論が沸騰しました。



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さて今回の「都市を創る建築への挑戦/設計組織のデザインと技術」展、チラシには以下のようにあります。


都市の大規模な建築は、にぎわう街の拠点として、都市の景観をつくりだすものとして、あるいは文化を発信していく場として、社会の中心的役割を果たしてきました。今日では、高度な技術と創造的なデザインによって、公共建築や大型建築が次々と生み出されています。このような大規模な建築の多くは、専門的能力を備えたスタッフの力を結集している設計組織(設計事務所)によって手がけられてきました。しかし、個人の建築家に比べると、設計組織が紹介される機会は限られており、その仕事や成果についてもあまり知られていません。今回は、こういった日本の設計組織にスポットをあて、都市の建築について考える初めての展覧会となります。現代の都市をめぐるテーマは、環境や景観への配慮、街づくりとの関わり、歴史や伝統の継承、街の再生など、多岐にわたります。この展覧会では優れた仕事に携わってきた15の設計組織をとりあげ、このようなテーマに対する建築の取り組みを紹介します。これらの実線は、都市の建築の行方、そして私たちの街の未来を考えていく上で、貴重な指針となるに違いありません。


「15の設計組織」とは、大規模組織的な設計事務所とゼネコンの設計部です。監修者として15社を選んだのは建築評論家の馬場璋造さんです。「都市はほとんど建築でできていて、その主要な部分をデザインしてきたのが設計組織なのに、存在があまり知られていない」と話しています。設計事務所は「山下設計」「安井建築設計事務所」「日建設計」「三菱地所設計」「日本設計」「松田平田設計」「久米設計」「佐藤総合計画」「石本建築事務所」の9組織、ゼネコン設計部は「清水建設」「竹中工務店設計部」「戸田建設設計統括部」「大成建設」「大林組」「KAJIMA DESIGN」の6組織です。


今回の企画は、各社がブースで展示する方法です。テーマはそれぞれの組織の自由裁量のようです。都市の記憶や持続可能性など時代を反映していますが、それぞれの組織の展覧会に対する力の入れ方が伝わってきます。やや見本市会場のようで、いかにも企業のPRコーナーのような展示もありました。15は多すぎか、個々バラバラなので、テーマは統一した方がよかったかもしれません。しかし、設計組織の光を当てて、美術館で展示する、設計組織にとっては、自分たちの仕事を一般の人たちに知ってもらう貴重な機会だと思います。



埼玉県立近代美術館