キーラ・ナイトレイの「つぐない」を観た! | とんとん・にっき

キーラ・ナイトレイの「つぐない」を観た!


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なんと言っても映画「つぐない」は、キーラ・ナイトレイありきの作品です。どう考えても「つぐない」のヒロインは、キーラ・ナイトレイ以外は考えられません。キーラの美しさを前面に打ち出した、哀しくも切ないヒロインですから。スカーレット・ヨハンソンに置き換えてみればよく分かるでしょう、というようなことを書いている人もいましたけど、たしかにそうです。スレンダーな体型、おっぱいが小さいのに、平気で露出するとけなす人もいますが、そんなことはまったく関係ありません。「つぐない」のヒロインであるセシーリア役は、キーラ・ナイトレイなのです。と思いきや、当初、キーラ・ナイトレイにオファーがあったのは、妹のブライオニー役だったというから分からないものです。


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「元々、監督は私にブライオニーを演じてほしかったのよ。でも最初に脚本を読んだ時、私の役はセシーリアだって思ったの。私はセシーリアをやるんだって監督を説得し、監督はブライオニーをやるべきだと私を説得していたわ。結局はセシーリア役で満足しているけど」と、キーラ・ナイトレイはインタビューで答えています。「最初、セシリア役を誰にするか考えていた段階では、キーラは若すぎると思っていた。彼女はある意味少女っぽくって、セシーリアはもっと洗練されていて、よりセクシーで、官能的で、負の部分を沢山持っていると考えていた。そんな時あるパーティーにキーラが入ってきた。その時、僕らは彼女が大人の女性になったことに気づいたんだ」と、監督のジョー・ライトは言います。


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タイプライターを叩く音が鳴り響き、それがリズムとなってピアノとオーケストラがメロディーを紡ぎ出します。小説家志望の13歳の少女ブライオニー、短めの金髪、白いワンピース姿は、少女の生真面目さと潔癖さを表しています。少女は、2階の窓から庭の噴水を眺めています。そこには姉のセシーリアと使用人の息子ロビーが、なぜか言い争いをしています。2人は兄弟のようにして育ったのですが、上流階級の娘と使用人の息子という階級差が厳然としてあります。「ロミオとジュリエット」はここでも永遠の課題です。2人の言い争いの描き方が、この作品の見事なところです。同じ場面が2回出てきます。が、しかし、よく見れば、視点が異なります。ふたつの視点、ひとつはブライオニーから見た視点、もうひとつはセシーリアとロビーのレベルから見た視点です。小説ではよく見られますが、映画では僕は初めて見た珍しい描き方です。時間差攻撃?おかげでキーラ・ナイトレイの、池から上がった身体に、薄い衣服が密着したエロチックなシーンが、二度見られたわけです。そんな問題じゃない?でも、この最初のシーンがこの作品の見どころです。



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セシーリアとブライオニーは姉妹ですが、おおよそ10歳くらい違っています。従って、一方は女性であり、もう一方は少女で多感なお年頃です。ブライオニーが「なぜロビーと話さないの?」と聞くと、セシーリアは「住む世界が違うだけよ」と、妹にはいともあっさりと答えたりします。しかし、セシーリアとロビーは兄妹のように育ったが、実は男女を意識するようになっていました。図書室でのシーン、これも見どころのシーンです。セシーリアは図書室があるほど立派な大邸宅の娘、というわけです。セシーリアは泣きながら言います。「気づいていたのね」、ロビーは「なぜ泣くの?」と言うと、「わからないの?」、「わかるとも」、そして2人は感情が高ぶり、激しく抱き合います。2人が初めて告白し合ったというわけです。なかなかこのシーンはエロチックです。


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それを偶然ブライオニーが見てしまいます。多感なお年頃、見てはいけないものを見てしまいました。拒絶反応も、無理はありません。もうひとつ、タリス家に預けられていた15歳の従姉妹ローラが強姦されるという事件が起きます。現場に居合わせたブライオニーは、ロビーが犯人だと証言してしまいます。彼は無実を証明することができずに、警察に連行されていきます。つまり、このブライオニーの証言が嘘であり、「贖罪」の意味となるわけです。嘘の証言の背景には、姉に負けず劣らず、ブライオニーはロビーにほのかな恋心を抱いていた、ということがあります。


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一旦刑務所に入り、その4年後、フランス軍に入隊したロビーは戦地に送られます。セシーリアは家族の元を離れてロンドンで看護士になり、ブライオニーもロンドンで看護士見習いをしていました。セシーリアとロビーの別れのシーンは素晴らしい。セシーリアは「バスが来なければいいのに」と言いながら、海辺のコテージの写真をロビーに手渡します。セシーリアとロビーは再び会えるのでしょうか?戦地でのロビーは本体から外れて戦友とたった3人の小隊、撤退に次ぐ撤退、彷徨い歩きます。見るものは折り重なる遺体の山です。ロビーの希望はセシーリアと海辺のコテージで暮らすこと。やっと海に近くなり、戦友と共に皆が一斉にかけ出します。小高い丘の上からロビーたちが見たものは、帰るに帰れない海辺を埋め尽くした兵隊の群でした。いわゆる「ダンケルクの撤退」のシーンです。2000人のエキストラと、大規模なセットによるこのシーンは圧巻です。カメラは舐めるような長まわしで、戦争の愚かさを見事に描き出します。これは本題ではないのですが。


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ビックリさせられたのは、ラスト、老年を迎えたブライオニーが出てくるところ。あまりにも一足飛び過ぎます。セシーリアとロビーのその後も描ききれていません。少女時代のブライオニー、看護士時代のブライオニー、そして老作家としてのブライオニー、3人の女優がそれぞれを演じています。こうした配役の使い方も珍しいと思います。「つぐない」の題名からすると、この映画の主役はブライオニーとも言えます。もちろん少女時代を演じたシアーシャ・ローナン、抜群の表現力でした。作家として成功したブライオニーは最後の作品を書き上げ、テレビのインタビューに答えています。小説家を夢見る多感な13歳の少女が、無知で無垢なるが故に犯した過ちによって、愛し合うセシーリアとロビーを引き裂いてしまったこと、作家であるブライオニーが「贖罪」を書いたことによって、罪を贖おうとしたことです。ただし、セシーリアとロビーの消息については、つまりそれぞれの「死」については、あまりにもあっさりとしていて、ちょっと納得がいきませんが。


チラシには「本年度アカデミー賞最有力作品」とあります。ジョー・ライト監督の前作はキーラ・ナイトレイが出演している、ジェーン・オースティン原作の「プライドと偏見」だという。「つぐない」でキーラ・ナイトレイの魅力に取り憑かれたので、後先になりますが「プライドと偏見」は、近いうちに観ておかないとと思っています。



「つぐない」公式サイト