吉祥寺美術館で「土門拳写真展 日本のこころ」を観る! | とんとん・にっき

吉祥寺美術館で「土門拳写真展 日本のこころ」を観る!






武蔵野市立吉祥寺美術館は、2002年2月2日開館。日本画、油彩画、書、写真などさまざまなジャンルの作品を収蔵。いずれも市に縁の作家やご遺族から寄贈されたもので、その数は2000点に及びます。吉祥寺駅の北口を下りてすぐ、伊勢丹新館の7階にあります。館内には、浜口陽三の銅版画および萩原英雄の木版画作品を常時鑑賞できる「浜口陽三記念室」と「萩原英雄記念室」の二つの記念室があります。僕が行ったときは、「浜口陽三記念室」では、メゾチントのシリーズ「黒いシルエットの残像」が展示してありました。併せて「メゾチントの製作過程」と浜口が使った「プレス機」も展示してありました。「萩原英雄記念室」では、木版のシリーズ「心の故郷・富士」が展示してありました。


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「山崎妙喜庵・待庵」
撮影時の土門拳1970年

武蔵野市立吉祥寺美術館の「企画展示室」で行われていた「土門拳写真展 日本のこころ」に行ってきました。土門拳の写真を纏まって観るのは初めてです。土門拳は1909年に山形県酒田市生まれ、「リアリズム写真」を確立した写真界の巨匠です。ライフワークであった「古寺巡礼」は、土門拳の最高傑作とされています。その他に「筑豊のこどもたち」や「江東のこどもたち」、「風貌」もよく知られています。土門拳の芸術は、日本の美、日本人の心を写し取ったといわれています。土門拳の代名詞ともいわれる「古寺巡礼」は、当初報道写真家として手腕を発揮していた土門が、写真の方向性の違いに気づき、昭和14(1933)年、24歳のときに室生寺を訪ねたことに始まったそうです。




今回の写真展は、山形県酒田市にある土門拳記念館の協力で開催したそうで、所蔵品の中から、約120点を選び紹介したものです。「風貌」「古寺巡礼」「筑豊のこどもたち」「こどもたち傑作選」「勅使河原蒼風との共作」「女優と文化財」等々に分けて展示してありました。「風貌」シリーズは著名人の肖像を写したもので、若い頃の梅原龍三郎や川端康成、三島由紀夫の表情には厳しいものがありました。他に、イサム野口、黛敏郎、勅使河原蒼風、棟方志功など、女性では水谷八重子や朝倉響子、宮城まり子が目に付きました。




また筑豊や下町の子供たちの生き生きとした表情は、子供の好きな土門拳の独壇場です。女優と文化財をテーマに撮影した「婦人公論」の表紙、特に深大寺釈迦倚像と吉永小百合は見事な対比で、しかも美しい。僕も奈良の室生寺へ行き、土門と同じような角度から写した写真がありますが、ぜんぜん段違いです。また雪の三仏寺投入堂は静謐さが伝わる素晴らしい作品で、印象に残りました。約120点でしたが、多岐にわたる土門拳の作品を十分に楽しめた写真展でした。




山形県酒田市には「土門拳記念館」があり、水に映る印象的な建物で、谷口吉生の設計によるものです。日本初の写真専門の美術館として、また個人の写真美術館としては世界でも唯一のものとして誕生しました。土門の全作品約7万点を所蔵しているそうです。一度は訪ねてみたい建築ですが、残念ながら未だに訪ねる機会がありません。



武蔵野市立吉祥寺美術館