「横須賀美術館」を見学する! | とんとん・にっき

「横須賀美術館」を見学する!




1時少し前に自宅を出て、渋谷から山手線で品川まで、品川から京浜急行線快特「三崎行」に乗り、「堀之内」で乗り換え、2時前には「浦賀」へ着きました。そこから「観音崎行」のバスで約10分、終点の「観音崎」へ着きました。目指す「横須賀美術館」は「観音崎」から海沿いを歩いてすぐのところにあり、2時すぎに着きました。昼食を食べていなかったので、さっそく美術館のレストランへ入り、お昼の「スパゲッティ・セット」をいただきました。このレストラン「アクアマーレ」は、東京・広尾のレストラン「アクアパッツァ」の日髙良実シェフプロデュースによるイタリアン・レストランだそうです。


横須賀美術館は、2007年4月28日開館しました。この美術館の設計はQBS(Qualification Based Selection : 資質評価)方式で選ばれた山本理顕。1945年、中国・北京生まれ。日本大学理工学部建築学科卒業、東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。東京大学原広司研究室出身。山本理顕設計工場主宰。工学院大学教授。日本建築学会賞はじめ多数受賞作品を持つ。と、そうそうたる経歴です。初期には鉄骨のキャのピーを持つ「GAZEBO」や「ROTUNDA」、そして国立能楽堂の前の住宅「HAMLET」などで一世を風靡しました。


参考:QBS(Qualification Based Selection : 資質評価)方式とは
設計者選定の際に、技術提案(設計の案)ではなく設計者の資質と実績を評価する方式。全国の自治体で初めて採用された「(仮称)横須賀市美術館・横須賀型資質評価方式建築設計候補者選考」においては、資質表明書の審議、プレゼンテーション及びインタビュー、実績作品の現地視察評価等が行われた。(山本理顕設計工場HPより)




横須賀美術館は、手前の緑の芝生の向こうに、今流行りの真っ白い、鉄骨とガラスでできた軽快な外観です。美術館へはゆるいスロープを上り、アプローチします。建物は埋まっており、ほとんど道路側(海側)からは平屋建てに見えます。それだけ見たのでは「なんだ、こんなものか」と思ってしまいます。竹中の設計でもできるんじゃないかと。


周辺環境と溶け合うように建物の約半分は地下に埋め込まれ、高さは低く抑えられています。そして海の潮風に耐えられるように美術館内部はガラスで覆われ、天井や側面に開けられた大小の丸窓からは柔らかな陽光が差し込み、開放的な空間が演出されています。また展示スペースは1階エントランスホールを囲むように3室、そして地階にも4つの回廊式の展示室が配され、その他にミュージアムショップ、ワークショップ室、図書室、海を眺めるレストランが併設され、屋上広場からは東京湾を一望することもできます。(日経ビジネス:杉江隆の美術散歩 より)


どうも構造は鉄板製らしい?壁面はほとんどをガラスで覆った建築です。もちろん鉄板は外断熱を施し、ガラスとのダブルスキンの間を空調制御しているようです。鉄板は外断熱しガラスとの間のダブルスキンによって気候制御している。壁面の鉄板は要所要所に丸い穴が開けられており、そこから海や山の景色が見えたりします。絵画作品は鉄板の壁に磁石を使って吊してあります。






「なんだ、こんなもんか」、の続きです。この建物、表現はあくまでも白く、鉄とガラスの繊細な建物です。が、しかし、この建物の特徴は、図面だけじゃ判りません。というか、図面を見てもよく判りません。中へ入って歩いてみてやっと判りました。もちろん美術館ですから、内部には大中小の3つの展示室が配置されています。その展示室が3重の「入れ子構造」になっています。さて、「入れ子」ですが、あるところに判りやすく書いてありましたので、以下に引用します。


「あるものの中に、それと同種のものが入っていること。物理的表現をすれば、『大きなつづらの中に中くらいのつづらが入っていて、その中くらいのつづらの中に小さなつづらが入っていて、小さなつづらの中にもっと小さなつづらが入っていて……』というような構造のことを『入れ子構造をしている』または単に『入れ子となっている』と表現する。このつづらや、『マトリョーシカ人形』が該当する」。


展示室の一つひとつに空間的な特徴があります。特に地下の外周にある展示室は圧巻です。地下から2階まで3層吹き抜けで、天井までの高さは12mほどもあります。しかも天井の外周側が丸められており、入り隅のない不思議な空間が連続して現前します。展示室としてまことに心地よい空間です。なぜ今まで、こういう展示室がなかったのか?プランニングの妙です。こういうのを「目から鱗が落ちた」と言うのでしょうか?美術館内部の他の個所のデザインも、スッキリしていて軽快です。鉄骨階段や油圧のエレベーターも、きれいに納まっています。



また、屋上にはガラス屋根の上に浮いたグレーチングを敷いた広場が広がっています。その広場はそのまま裏山の芝生広場へとつながっています。ここからの海の眺めは素晴らしい、船が行き来する浦賀水道の先にはすぐそばに千葉の富津が見えます。空には「トンビ」が鳴きながら飛んでいました。欲を言えば、谷内六郎館の前の駐車場入り口やバス停周辺が、正面にあるにもかかわらずやや殺風景で、もうちょっとなんとかならないものかと思いました。


横須賀美術館


山本理顕設計工場