tonton3
2006年08月02日 00時01分30秒

絲山秋子の「袋小路の男」を読む!

テーマ:本でも読んでみっか
fu1

発売されたばかりの文庫本を購入して、絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」を読んですぐに、ブックオフで「袋小路の男」と「ニート」の単行本を購入し、一気に読みました。絲山秋子の経歴などについては前に書いていますので、ここでは2004年の作品「袋小路の男」に限って書きたいと思います。本の帯には、第30回川端康成文学賞受賞。指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間。<現代の純愛小説>と絶讃された表題作、「アーリオ オーリオ」他1篇収録。注目の新鋭が贈る傑作短篇集、とあります。


帯の裏面には川端康成文学賞の選考委員二人の選評が載っています。
<袋小路の男>は純愛物語です。多くの作家が書こうとして、なかなか書けなかったテーマを、絲山秋子は達成しました。小川国夫氏
大都会の真ん中で育った子供たち特有の、過度なまでの節度、孤立したとまどいと寡黙の出口のない切なさが、読者である私にも迫ってきた。津島祐子氏


この本は、「袋小路の男」と「小田切孝史の言い分」、そして叔父と姪のやりとりが心地よい「アーリオ オーリオ」という3つの短編からなっています。「袋小路の男」と「小田切孝史の言い分」は、出会ってから12年、あまりにも長い片思いを描いた作品です。「袋小路の男」は日向子の視点で語られ、「小田切孝の言い分」は小田切の視点で語られています。この2作が、男と女の相互補完的な構成になっているのは言うまでもありません。それぞれの相手に対する思いや、複雑な葛藤を知ることができます。


fu2


辞書によると「袋小路」とは、「建てこんだ家に行き当たったりなどして、通り抜けられない小路。また、比喩的に、物事が行きづまった状態をいう」とあります。この二つの意味が、この作品を表しています。小田切孝の住んでいる家の場所が建てこんだ家の奥、「袋小路」であり、そして二人の関係がまさに「袋小路」なのです。つまり、物事が行きづまった状態、にあるわけです。日向子が高校一年生のときに出会った「あなた」、一学年上の小田切先輩との関係、新宿のジャズバーでの最初の出会いから、片思いが現在に至るまで12年間も続きます。


私服通学をいいことに学校をサボっては新宿の街をうろうろしていた「私」。行きつけのジャズ・バーで、射るように自分を見る「あなた」の視線に気づきます。「私」はそのときから「あなた」に恋をします。しかし「あなた」はまったくその気はありません。「私」はそんなことはおかまいなしに、「あなた」をひたすらに追いかけます。「私」がストレートで大学に入ると、「なんでおまえが現役なんだ」と言う。「私」はあなたの口の悪さが好きだった。「あなた」は頭はいいのに大学は2浪する。


「私」は就職して大阪勤務になるが、偶然「あなた」と再会します。「あなた」は小説を書いているが賞には通らず、「エグジット・ミュージック」でバーテンダーのアルバイトをしています。社会的な地位も定職もないダメ男。なんでこんな男に振り回されてるの、という疑問は置いておいて。この辺、男はあとの「ニート」につながります。「私」は東京に来るたびに「エグジット・ミュージック」に顔を出すようになります。「おまえさ、俺と結婚しようったってだめなんだぜ。そもそも俺にその気がないんだからよ」二人は恋人同士ではないし、手を握ったことすらありません。そんなこんなで12年が過ぎます。


「恋人未満家族以上。それってなんなんだ。」大都会の今を生きる若者である、そんな日向子と小田切の関係を言葉にするのは難しい。「襲ったりはしない。せまったりはしない。あなたを袋小路に追いつめるようなことは一切しない。静かな気持ちだ。」しかし、この作品は、その歯がゆくてもどかしい関係を、見事に凝縮して描ききっています。絲山秋子の「袋小路の男」は、小説らしい小説であり、年甲斐もなく共感を持って読むことのできた作品です。


過去の関連記事:
絲山秋子の「沖で待つ」を読む!
絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」を読む!その1
絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」を読む!その2

コメント

[コメント記入欄を表示]

1 ■袋小路の男

絲山秋子の作品の中でも、これは特に好きです。TBさせていただきました。

2 ■baabamama さん、コメントありがとう!

僕もこの作品、小品ながら、素直なよくできた作品だと思い、ブログで取り上げました。これからも、よろしく!

コメント投稿

コメント記入欄を表示するには、下記のボタンを押してください。
※新しくブラウザが別ウィンドウで開きます。

一緒にプレゼントも贈ろう!

トラックバック

この記事のトラックバック Ping-URL :

http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/10015345323/41ac038f

  • 1 ブログタイトル:☆バーバママの小説大好き日記☆
  • 記事タイトル:「袋小路の男」絲山秋子
  • 記事概要:絲山 秋子 袋小路の男  第30回川端康成文学賞受賞の表題作を含め、3篇収録。2005年本屋大賞ノミネート。     袋小路の男     小田切孝の言い分     アーリオ オーリオ  どの短編も面白かったです。”いい味出てる!”という感じ。こ
  • 2 ブログタイトル:「本のことども」by聖月
  • 記事タイトル:◎◎「袋小路の男」 絲山秋子 講談社 1365円 2004/10
  • 記事概要: 前回132回の芥川賞を、御贔屓作家の阿部和重が受賞してご満悦の評者なのであるが、本書『袋小路の男』を読んで、早くこの作家にこのようなタイプの作品群で受賞してほしいと痛切に感じてわけで、それが今の評者のあらためての心持なのである。  最近の芥川賞、受賞作を
  • 3 ブログタイトル:+ ChiekoaLibrary +
  • 記事タイトル:袋小路の男 [絲山秋子]
  • 記事概要:袋小路の男絲山 秋子講談社 2004-10-28 表題作の「袋小路の男」は高校時代に出会ったひとつ年上の「あなた」を、ずっと想い続ける「私」の物語です。ずっともずっと、12年間です。 この物語が「純愛物語」と言われるのは、指一本触れずに想い続けたからなのではなくて、
  • 4 ブログタイトル:ひなたでゆるり
  • 記事タイトル:『袋小路の男』絲山秋子/講談社
  • 記事概要:袋小路の男絲山 秋子講談社2004-10-28by G-Tools 指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間。 <現代の純愛小説>と絶讃された表題作、「アーリオ オーリオ」他1篇収録。 注目の新鋭が贈る傑作短篇集。第30回川端康成文学賞受賞 2編連作の「袋小路の男」「小田
  • 5 ブログタイトル:花ごよみ
  • 記事タイトル:袋小路の男  (絲山 秋子)
  • 記事概要:第30回川端康成文学賞受賞 指一本触れないまま、 「あなた」を想い続けた12年間。  <現代の純愛小説>と絶讃された表題作、 「アーリオ オーリオ」他1篇収録。 注目の新鋭が贈る傑作短篇集。…内容紹介より   【袋小路の男】 袋小路に住んでいる男っていう意味の
  • 6 ブログタイトル:かえるリポート
  • 記事タイトル:岡崎京子、絲山秋子、袋小路の男、ブンガクの逆襲
  • 記事概要:岡崎京子の漫画が好きです。リバーズエッジ、pink、etc.etc.彼女が世に出た時、コミックは文学を越えた、と言われた。確かに。はるかに越えていた、と思う。もう日本のブンガクは死んだかに思えた。村上春樹と村上...
  • 7 ブログタイトル:本を読んだら・・・by ゆうき
  • 記事タイトル:■ 袋小路の男 絲山秋子
  • 記事概要:袋小路の男絲山 秋子 講談社 2004-10-28by G-Tools 川端康成文学賞受賞作。帯によると、現代の純愛小説、と、絶賛されたんだそうです。 うーん。小説としては、嫌いじゃない。「袋小路の男」と続編の「小田切孝の言い分」は、特に、なかなか良かったと思う。あ、悪い男
  • 8 ブログタイトル:あざやかな瞬間
  • 記事タイトル:絲山秋子「袋小路の男」
  • 記事概要:こういう話は、全然理解できない人と、すごく共感できる人に分かれると思う。私は後者。この手の話には萌えるんです。すごく楽しめたし、理解できた。 恋人関係に発展することはないけれど、長年互いの存在を必要としてきた男女の、その「距離感」が魅力的なのですよ。...
  • 9 ブログタイトル:ゆらbooks
  • 記事タイトル:袋小路の男  絲山秋子
  • 記事概要:袋小路の男 『袋小路の男』という題名に、ミステリー?と思ったのですが、全然違いました。お話自体は普通に日常を描いたものだけど、でも一冊まるまるを見るとかなり異色な本…かも。 収められているのは全部で3話。1話目が表題作『袋小路の男』で、小田切孝を愛する
  • 10 ブログタイトル:ついてる日記Ⅱ
  • 記事タイトル:袋小路の男
  • 記事概要:袋小路の男posted with amazlet on 05.08.04 絲山
  • 11 ブログタイトル:百貨店ではたらくOLの事件簿
  • 記事タイトル:同期ってどんなもの?
  • 記事概要:久々に小説を読みました。 絲山 秋子 沖で待つ お気に入りに登録しているとんとんにっきを読んでいたら、 ここのところ著者の本の紹介が結構あり、 ふと読んでみたくなりました。 ★とんとん・にっき★ 数ある絲山 秋子 さんの作品のなかで この本
  • 12 ブログタイトル:AOCHAN-Blog
  • 記事タイトル:「袋小路の男」絲山秋子
  • 記事概要:タイトル:袋小路の男 著者  :絲山秋子 出版社 :講談社 読書期間:2005/10/01 - 2005/10/02 お勧め度:★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 「あなた」とは指一本触れないままの12年間、袋小路に住む男にひたすら片思いを続ける女を描いた究極の純愛小説。
  • 13 ブログタイトル:"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!
  • 記事タイトル:袋小路の男 絲山秋子
  • 記事概要:袋小路の男 ■やぎっちょ書評 いやぁ。良かったですね。空気が。 むにょむにょとした日向子と小田切孝の関係がなんなと良かったです。自分がこういう関係になるのはちょっとヤだけど。。。 あ、でもね。 先に書きたいんだけど、「袋小路の男」「小田切孝の言い分」は連.
  • 14 ブログタイトル:飴色色彩日記
  • 記事タイトル:袋小路の男 / 絲山 秋子
  • 記事概要:「袋小路の男」絲山秋子 川端康成文学賞受賞作 --- あなたは好きな人と一夜を共
powered by Ameba (アメーバ)|ブログを中心とした登録無料サイト