つなさん が北森鴻さんにハマってらして、私もハマってしまいそう・・・。

面白いですね。とっても。

北森 鴻
狐罠

「冬狐堂」という屋号をもつ旗師の陶子は、若手ではあるが凄腕の目利きで店舗を持たない骨董商を営んでいる。

ある日、裏の世界ではかなりきな臭い評判を持つ橘薫堂から買った硝子器が贋作だったことが分かる。「騙された方が悪い、未熟」という骨董の世界では、騙されたと騒ぎ立てることも出来ない。陶子はプライドをかけて騙し返す策を練るのだが・・・。女性の殺人事件や昔の贋作事件を追う刑事、陶子に味方する保険会社の男、陶子の元夫の大学教授などが複雑に絡み合い、陶子の予想しなかった展開へと事は進んでいく。陶子は橘薫堂に一矢報いることができるのか?


もう胡散臭いことこの上ない(笑)

骨董の世界ってホントにこうなの?かなり「ありそうな世界」ではある。あまり実生活ではなじみの無いその世界の話をここまで一気に読ませる北森さんがすごい。

無くなった祖父が趣味で骨董屋をやっていたので、古ぼけた器や刀剣の鍔などが「え?」と驚くぐらいの金額になる事は知っている。私の勤めている会社の社長も焼き物が大好きで、よく聴かされている(笑)。

胡散くさい世界だなぁと思いながらも惹かれるのは、美術品や芸術品の素晴らしさもさることながら、水面下で暗躍する商人達の知恵比べを覗いてみたいという純粋な好奇心によるところが大きいのではないだろうか。(そういえば祖父もそんなに価値の無い変なものを業者から買わされていたなぁ、笑) 


このお話は、そんな狐や狸が跋扈する世界を描きつつ、殺人事件、贋作作り、過去の贋作事件を追っていくストーリーである。よく出来ていると思う。後半に差し掛かると、なんとなく犯人が見えてくるんだけど、陶子の橘薫堂への逆「目利き殺し」が成功するんだろうか・・・っていうところが気になって、ページを捲る手はノンストップだ。
陶子はとても腕がいいし、気が強いし、頭も切れる。その上長身の美人ときた。なぁんかイヤな女?いやいや、彼女が生きている世界が特殊すぎて、「頑張れ!頑張れ!」と応援したくなってしまう。気が強いけどすれてなくて、一生懸命なんだよね。プライドを傷つけられて黙ってはいられないっていう強気さに共感できてしまう。この陶子の仕事仲間で写真家の硝子とのコンビも絶妙。さっぱりとした友情が清清しい。戦う女には、こういう強い女が良く似合う!!

この2人の女性人に負けないくらい、個性的な面々が顔をそろえているのも本書の魅力である。凸凹コンビの刑事2人も、贋作者の潮見も、悪党であるはずの橘薫堂の店主さえも、なんだか良いのである。登場人物たちが生き生きと動き回る様子を嬉々として追いかけてしまう私が可愛い(笑)

別の作品も是非読んでみたいところ!

そして、陶子と硝子のコワレモノコンビのネーミングがまたいいっす!

本書では結構若さや青臭さがある陶子だが、他の作品ではどうやら凄みのあるいい女になっている模様。そちらもチェックしなくてはっ!!