今、痛む喉と対話しながらも心穏やかに夜を過ごしている。





一年半ほど前

東京世田谷区の自宅付近で探した小さな病院で、おやしらずの痛みを診てもらった。
一つ目の病院。

状況の酷さを知らぬ前だったので、


抜かなくてもよいなら抜きたくない


と医師に伝えていた。


薬で痛みをとりましょう、抜かなくてもいいですよ。



今思えば、なんてことを言ってくれたんだと思う。
私のようなビビリには、抜かなくてもよいなどと逃げを促す言葉はかけないほうがよいのだ。



結局、しばらくして再び痛みがおとずれた。


今年1月、福岡で痛くなり近くの病院へ行った。


多少は抜歯の覚悟で。
二つ目の病院。


医師には、抜こうかなと弱めに伝えた。



来週に手術のできる医院長が来るのでその時抜きます。
それと、あなたのおやしらずの生えかたでは、手術が1時間くらいかかります。



来週? 1時間の手術!

そんな待てない、もたない気がした。
おやしらずは急傾斜で出てきていて抜くのに大変な状態だという。


怖くなった。


それに一時間の抜歯って、あり得るのか?耐えられない。
だいたい院長が来週にしか来ないとは。

 


不信となり、次回の予約せずに去った。




しばらくして、また痛むので違う病院を訪れた。
いい加減、抜くぞという強い覚悟で。
三つ目の病院。
 

 

とても親切な、優しいお医者さんだ。

そちらでも、私のおやしらずは大変な手術となるため此処ではできませんと言われた。
今まで積んできた覚悟という名の積み木が崩れた。

ますます怖くなった。



ただ、優秀だと言われるある大学病院に紹介状を書いてくださった。

優秀、大学病院、であれば即日抜歯
訪れれば確実に遂行されるであろう。


いよいよ。


   



それから、一年。


それから一年!?

長い!

なんて長い月日が経ったことでしょうか、成美さん!



恐ろしくてなかなか訪れられなかったのである。

2016年が終わる前に、すっきり要らないものを捨てましょう。

そんな思いで再び作った積み木と紹介状を持って本日、行ってきた。
四つ目の病院。



大学病院だったので、学生の診察や手術に同意しますにチェックしておいた。





男性と女性の医師が二人、手術をしてくださった。

ベテランのようで、診察から安心感があった。

 
女性はレントゲンを指しながら穏やかな口調で、

○○さんのおやしらずは角度がこうなっていて、放っておくとほら、顎の骨が少し溶けているから早く抜きましょうね。


と恐ろしいことを仰って、また


ここには他の病院の先生ができないという手術の患者さんが来ます。
大丈夫ですよ、我々は毎日毎日こうした手術をしています。痛くないです。
麻酔が効いたら10分ほどで終わります。
とのことだ。


なんて頼もしい!

毎日のように手術されている豊富な経験。
痛くない。
麻酔後10分。

どこぞかの病院の1時間かかるは何だったのか。

おぞましい。




今日お願いします、抜いてください




手術の椅子に座ると、先の医師二人と、どうやら私の背後を大学生が数名囲んでいるようだ。

目の上に何もかけない。


麻酔が効く間にちらりと後ろを向いてみました。大学生が四人。
おしゃべりしていたのは気になるが、

ぜひしっかり学んで心も腕も善き歯科医となってもらいたい。

と心の中で呟き、親のような思いであった。


学生さんはいろいろとやってくれた。


彼は唾液をとる器具をいざ私の口の中に入れようとする瞬間にそれをガシャンと落とした。 


あ、しまった

(大丈夫?)←わたしの胸中


医師の「おまえ、何々は習ったか?」の
問いに

あ、はい、教わった、気が、します・・・


(大丈夫?)


医師の「では何々は、もう習ったか?」の問いに


あ、はい、何々は習ったんですけど・・・忘れちゃいました

(忘れてはいけないでしょう!)




でも最後は医師の指導のもと、出血状況をしっかり確認されていました。

善き医師となることを応援しています。





お二人の先生は、とても信頼できる方々でした。

手術中に男性の先生の、

よし、あとちょっと、がんばりましょうね


(がんばります!)


と勇気づけられました。



一度も左手を挙げなくて済みました。



神に見えました。