ウサリンは闇夜へ出て食事をし、この富士山近辺を周知している者である。
だから、夜間活動する悪奴の情報を何か持っているかも知れない
それをヤッ吉は、期待していた。
洞窟(西湖 蝙蝠穴)の入り口付近に来ると、誰かの歌声が聞こえてきた。
よく澄んだ通る声で、何故か心地良い。
歌詞はともかく、見事な天使の歌声だ!・☆・!聖の音域を持っている。
<何か持っているかも知れない。>と、ヤッ吉は感じた。
「 ウサリン☆ウサリン どこへ行く~♪♪
闇夜の中を どこへ行く~♪♪
それはね☆それはね! お食事☆お食事する為よ~♪♪
おいしい☆おいしい! お食事☆お食事する為よ~♪♪
いいでしょ☆いいでしょ お食事☆お食事する為よ~♪♪
可愛いウサリン どこへ行く~♪♪
お耳の☆可愛いウサリン どこへ行く~♪♪ !・☆・!」
どうやら声の主はウサリン、自己中そのものが分かる歌詞だ。きっと、自作だ。
それはともかく <よかった~!!ご機嫌みたい。>と、思うヤー坊がそこにいた。
ウサリンは気難しい子なのだ、以前へそを曲げて大変だった事を思い出した。
蝙蝠穴に入ると、すぐウサリンに会え声をかけてきた。
「 あーら、おチビさん達!何しに来たの?何か御用?」
(参考:ウサリンは、二ホンウサギコウモリでハツカネズミとほぼ同じ大きさ。
つまりヤッ吉達ニホンヤマネより、少し小さい感じである。)
以前会った時より、大人びた顔になっていた。もうすっかり、お嬢さんだ。
「 こんにちは、お久しぶりウサリン。今日は、お話を聞きたくて来たのよ。」
ヤッチが切り出した。
「 あーら、ヤッチ。何かしら聞きたい事って?」
「 最近、この辺で変わった事はないかしら?」
「 そうね~ ・・・。」
「 そうそう、お食事のお話なんだけど。
最近変な虫が増えたわ。みんなは、顔が悪魔に似ているから
マクア虫と呼んでいるわ!
聞いて聞いて~、それがね、まずいのよ!失礼しちゃうわ。
せっかく捕まえたのに・・・。
苦くて・硬くて・それで臭いのよ!!食べられないは、あんなの!
本当失礼しちゃうわ。
ヤッチなら、この気持ち分かるでしょ。」
なるほど、食べ物となると真剣だ。
「 フフ そうね・・・、困った事ね。」
笑いをこらえていた。
ここで笑ったら、ウサリンはどこかへ行ってしまうだろう。
「 ところで、その虫はどんな顔をしているの?
私に教えて、今思い浮かべてみて。」
ヤッチは、意識を集中させウサリンの脳裏に入った。
その虫の正体は、一目瞭然だった。
<この顔どこかで見たわ。>
ヤッチは、すぐに思った。
<・・・ これは。>
ヤッ吉も、同じ事を考えていた。
映像を見て、直感的にヤー坊が叫んだ。
「 気持ちワル~、マクア 顔ゴキブリだ。きっと 宇宙ゴキブリ だ!!」
それは当たっていた。
同時映像を見ていた<ヤーの森>の指揮官は、危機感を持った。
誰にも知られずに、すでに事は進んでいた。
ポツリと、指揮官は言った。
「 確か・・・、これは惑星を滅ぼすと言われるスペース・ゴキブーリ。
すべてを食い尽くすまで、それをやめない。たとえそれが硬い岩でも。
幾つもの惑星はそれで消滅した・・・ ・・・。
俗称:<悪魔の使者>と呼ばれ、その生態は誰も知らない。」
いつの間にか苦悩の顔に変わっていた。
すでに虫という形で、生態系は蝕まれていたのか。
しかも、地球人は知らない未知の宇宙虫に。
いったい、いつから・・・ ・・・。地球はもう終わりなのか。
今後の影響はいかほどに・・・。
(森のレンジャー Mr.F)
つづく