●今耳で"ウェザー・リポート"を聴いてみた-7-
『ブラック・マーケット』を酷評したら
全国のジャコパス・ファンが許しません!
"じゃこのめシンジケート"からの伝言
(笑)
ここまで快調に、"今耳ウェザー・リポート"を書いてきたが、ここに来て大きな問題が・・・今回のアルバム『ブラック・マーケット』から、ウェザー・リポートに天才ベーシスト、ジャコ・パストリアスが加入するからである。前作までは、ジャズ、ジャズ・フュージョン好きなエリアでよかったのだが、ジャコが入るとロック好きやベース好き、その他のジャンルの音楽ファンまでいるので、「いや~、ジャズ聴きのオイラとしてはさぁ~」ツー言い訳は通用しそうもないのだ(笑)。
早速、聞きつけた"じゃこのめシンジケート"から「気をつけた方がいいですよ。アルフォンソはイヤだと書いても問題ないのですが、ジャコはそういう分けには行きませんよ『ライヴ・アット・モントルー 1976』DVDを貸してあげるので、そこんとこヨロシク」とのメッセージを貰ったのだ(笑)。
仕方ない『ライヴ・アット・モントルー 1976』は観たいしなぁ~、1日中聴いて思ったホントのことは全て忘れて、ベタボメしよう(笑)。ファンの数には勝てないからなぁ~。早速「天才ベーシスト」とヨイショしておいたよ(笑)。それにしても『ブラック・マーケット』は、かなり売れました!ジャケットが好きだ。
ジョー・ザヴィヌル(Two ARP 2600 synthesizers, Rhodes electric piano, Yamaha grand piano,
Oberheim polyphonic synthesizer)
ウェイン・ショーター(Selmer Soprano and tenor saxophones, Computone Lyricon)
アルフォンソ・ジョンソン(Fender electric bass, Charles La Boe electric bass)
ジャコ・パストリアス(Fender bass)チェスター・トンプソン(Ludwig drums)
アレックス・アクーニャ(LP congas and percussion)
ナラダ・マイケル・ウォルデン (Drums)ドン・アライアス(Congas and percussion)
Recorded: December 1975

$Tommy's Jazz Caf'e ジャズブログ
Black Market/Weather Report(1976/Columbia)

まぁ、そうは言っても、このアルバムのメインのベーシストはアルフォンソなのである(笑)。
前作の『幻祭夜話』の流れではなく、ヒット作『ミステリアス・トラベラー』を意識したポップなアルバム。まぁ、またまたセールスを考えなくてはならなくなったのは、作品的要素を強めた『幻祭夜話』が、思った程の結果にならなかったからだと思う。
この時期、ソウル&ファンクのできるベーシストやドラマーは、ジャズ・フュージョンに限らずロックやポップスでも、スタジオやライブで引っぱりだこだった。当然、人気ミュージシャンのサポートバンドに入ると貰えるギャランティーが、ウェザー・リポートの比ではなかったことは云うまでもない。
ウェザーのドラマー、ベーシストがこれまで安定しなかったのは、当時の音楽状況もあるのだ(特にジャズのドラマーやベーシストを必要とはしていなかったので、大変だったと思う)。
同年に自身のソロ・デビュー・アルバムを発表したジャコ・パストリアスだが、まだ無名の新人に近く、アルフォンソのように人気ベーシストではなかったので、これからのウェザー・リポートにとっては、都合のいいベーシストだったと言える。
ここで、ジャコは2曲に参加しているが、この時点でザヴィヌルがジャコに対して高い評価をしていたかは疑問が残る。《キャノンボール》はジャコのフレットレスベースの音色が美しい曲だが、早々にソロパートを終わらせているし(あまりにも短い)、ベース・ヴォリュームも小さめで、必要以上にシンセの音量が大きい。ジャコ作の《バーバリー・コースト》は、もっと発展させられそうな楽曲だがフェイドアウト、このアルバムで一番短い曲になってしまった。
ジャコの楽曲を採用したところはスゴイ!が、ザヴィヌル自身が煮詰まっていたのをジャコが助けたのかも知れません。殆どの曲がフェイドアウトなのが残念。
まだザヴィヌルは、アルフォンソのようにファンク・ビートを叩き出す、ソウル&ファンク系のベーシストを必要としていたのかも知れない。まぁ、ジャコはお試し期間つーことだったと思う(笑)。
しかし、『ブラック・マーケット』が発売され、コンサートツアーに出た時に、ザヴィヌルとショーターは、ウェザー・リポートに今まではなかったジャコのライブパフォーマンス及びクオリティーに圧倒されることになるのだ。また、このアルバムがビッグセールスになったのも運命的だ。
という分けで『ライヴ・アット・モントルー 1976』を観ないことには、次には行けないね!

このアルバムから、ザヴィヌルがポリフォニックシンセサイザー"Oberheim polyphonic synthesizer"を、ショーターがウインドシンセサイザー"Computone Lyricon”を使い始めている。よりエレクトリックサウンドが強調されたと云っていいでしょう。シンセが増えると、全体のサウンドが軽く感じるのはオイラだけですかね?

$Tommy's Jazz Caf'e ジャズブログ
Computone Lyricon

オイラ、このアルバムが発売された当時はジャコのことは、詳しくは知りませんでした(SJ誌などでは盛んに特集していましたが)。「ずいぶん、エレクトリックでポップなアルバムが出たなぁ~」という印象だったのを覚えています。
また、ジャコの《キャノンボール》で聴かれるようなフレットレスベースのメロディーソロは、耳に馴染みがなく、ザヴィヌルのシンセの音だと、みんな勘違いしていたようです。
このようなサウンドは、当時の多くのジャズファンは「コマーシャルな音楽だ!」と軽視する人が多く、今日のようにウェザー・リポートを正しく理解していた人は少なかったと思います。ジャコ・パストリアスもフュージョンのベーシストとして見られていたので、適正な評価は'80年代まで待つことになります。
この頃のウェザーのライナーの殆ど(いや、フュージョン系は殆ど/笑)は、岩浪さんが書いていたように記憶しているのですが、「岩浪さんってホントにウェザーのことどう思っているの?」と、当時親しかったジャズ仲間が聞いたところ、「実はよく分からないんだよね!」と答えたという笑い話のようなウワサが、ホントのことのように現在まで伝えられています(笑)。

●じゃこのめさんからのコメント
■ブラックマーケットではジャコは仮メンバー
ブログ炎上させないように手配しておきました(笑)。
ジョーは、たまたまツアーで訪れていたフロリダでジャコと出会い交流を深めるのですが、その過程でジャコから受け取ったデモテープはアコースティックベースで演奏されたものだと思い込んでいたという話があります。いかにジャコのベースサウンドが特異だったかを示すエピソードです。《Cannon Ball》のイントロは、まさにその典型ではないでしょうか。
『ブラック・マーケット』とジャコのファースト・アルバムは、たまたま同じレーベルから同じ1976年に出るわけですが、『ブラック・マーケット』制作時にジャコを正式メンバーとする構想があったかどうかはわかりません。ジョーはジャコのアルバムの反響を見てメンバーに加入させる決断をしたのだと思います。