今回の「ウェザー・リポート聴き」で、リアルタイムに聴いていた時とウェザーの音楽的印象が大きく違うことに気づいた。リアルタイムに聴くということは、その評価がレコードセールスに大きな影響を及ぼす。当時、そのような意識はなかったのだが、結局そのアルバムに1票投じたかどうかは、ミュージシャンにとっては、次のアルバム制作では大きな問題だったということを、改めて知ることになった。そう、オイラたちも参加していたのである。やっぱり自由にさせてくれるのはヒットアルバムなんだよね。
アルバムセールスの結果が、ハービーよりも重くのしかかるウェザー・リポートというグループは、かなり不器用なグループだったんだと思う。やっと、明るい兆しが見えた!

●今耳で"ウェザー・リポート"を聴いてみた-6-
発売時にかなり気合い入れて聴いた「幻祭夜話」
ウェザーはブードゥー教に魂を売ったと思った
黒魔術の力がウェザー・リポートを包む

妥協的なアルバム『ミステリアス・トラベラー』のヒットで、所属レコード会社に最初の義務を果たしたウェザーは、またまた実験的な音楽に取りかかります。
しかし、これまでと違ったのはザヴィヌルがシンセサイザーという楽器を使いこなせるようになったこと、ポップなサウンドは遺しながらインプロヴィゼーションする術を身に付けたことでした。
そして前作よりも黒くなって行きます。ザヴィヌルのクラシック的な手法も、ショーターの元気なサウンドも戻り、ヴィトウスが抜けたことで、心置きなくアルフォンソ・ジョンソンのエレベがより全体のグルーヴ感を引っぱっています。メデタシ!メデタシのアルバム。但し、ライブでちゃんと再現できたかどうかは疑問。
オイラはこの時期、ウェザーの音楽のテーマは「黒人のルーツ」にピントをフォーカスしたと思っています。「幻祭夜話」はきっと、アメリカ上陸以前の黒人たちの営みではないでしょうか?そんな想像さえもしてしまうコンセプト組曲に仕上がっているのがこのアルバム。
ジョー・ザヴィヌル(Rhodes piano, melodica, acoustic piano, TONTO synthesizer, Arp 2600 synthesizer,
organ, steel drums, out, mzuthra, vocals, West Africk, xylophone, cymbals)
ウェイン・ショーター(Soprano and tenor sax)アルフォンソ・ジョンソン(Electric bass)
レオン・チャンクラー(Drums, tympani, marching cymbals)アリリオ・リマ(Percussion)
Recording: February 1975, except "Five Short Stories," recorded April 4, 1975.

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Tale Spinnin'「幻祭夜話」/Weather Report(1975/Columbia)

ウェザーの幸運は、チックのリターン・トゥ・フォーエヴァー、ハービーのヘッドハンターズの2作目が、1作目程のセールスにはならなかったことと、そろそろみんなが、そんな音楽に飽きはじめていることでした。そこにザヴィヌルのシンセサイザーは新鮮に聴こえたのです。
『ミステリアス・トラベラー』は、彼ら程のセールスではありませんでしたが、流動的なグループ作品としては安定感があり、次回作に期待が持てる内容だと判断されたのでしょう。
何よりもライブ活動においても、ジャズのスタープレイヤーのショーターがグループを離れる気配がないのが、ファンにとって大きな安心材料だったと思います。
そして、ミステリアスでクリエイティブなアルバム「幻祭夜話」が発売されたのです。自分たちの音楽をやりながらも一般大衆にも受け入れられる「楽園」をイメージさせるサウンドメイク、クリエイティブとコマーシャルの絶妙なバランスが取れたアルバムだとオイラは思います。今度は逆にショーターのジャズのサウンドを多くちりばめることにより、ウェザーにしか出来ない音楽ヘと発展しています。ウェザーのジャズフュージョンの最初の快作。時すでに'70年代中頃、意外と遅咲きなウェザーなのです。
リターン・トゥ・フォーエヴァー、ヘッドハンターズで音楽に目覚めた若者たちが、少しだけ大人になったのもウェザーに味方したと思います。音楽は不思議な相互関係で成り立っています。

オイラ、このアルバムは好きだなぁ
チョ~駄作の後に傑作は生まれる
(笑)
不思議なものです。妥協の産物の『ミステリアス・トラベラー』が売れたことで、ウェザーは自分たちの音楽を取り戻すことが出来たのですから。また、それ以上の音楽的な発展も手に入れることが出来たのです。
ウェザーが結成時の音楽的コンセプトを全うしたかどうかには疑問が残る(笑)。これは成り行きで来てしまった感じはする。当然試行錯誤を重ねた結果の音楽だとは思うし、そういう意味では結果オーライかも知れないが、ヒットアルバムというのは怖いものだ。テクノロジーの進化もね!

●いっきさんのコメント
■面白く読んでいます。

今耳でウェザー再考察するのって面白いですね。
楽しく読んでいます。
私はラッキーでした(笑)。ウェザーを聴きを始めた時、tommyさん曰く駄作『ミステリアス・トラベラー』を抜いて、『ブギウギ・ワルツ』から『テール・スピニンン』を聴きましたから(笑)。『ミステリアス・トラベラー』を聴いたのはかなり経ってからです。
ただひとつ言いたいのは、このアルバムの《ヌビアン・サンダンス》がその後続くザビヌルの”祝祭サウンド”の原点として評価べきということです。
それから世の中では、人気作『ミステリアス・トラベラー』と『ブラック・マーケット』に挟まれて、『テール・スピニン』は人気がないとも言われますよ。

『テール・スピニン』については村井康司さんが素晴らしいライナーノーツを書いているので是非読んで下さい。
http://blog.livedoor.jp/coseyroom/archives/8835621.html
なかなか鋭い分析だと思いました。


◎サンキューです。確か《ヌビアン・サンダンス》は、幼い頃に休みになると行っていたオーストリアの母方の田舎の村祭りをモチーフにしていると云っていたような・・・ザヴィヌル・サウンドです。
この母方の田舎の民族音楽がザヴィヌルには、生涯忘れられない音楽的ルーツのようです。
そうなんですよ。『テール・スピニン』は、それ程売れなかったと思います(泣)。それが『ブラック・マーケット』の爆発的ヒットに、繋がったのだと思います。ん~、レコード会社のプレッシャーつーものですね。
村井さんのライナーは、『ミステリアス・トラベラー』~『ブラック・マーケット』が発売になった頃、SJ誌に頻繁に書かれていたことなので、特に目新しさはないです(笑)。当時は記者が取材に行っていた。