私、リングに再び上がります。
天心VSロッタン観戦記
先月から思い立って再開したブログ記事ですが、
そろそろまた何か書きたいなあ、と思いつつも、いざ書こうと思っても、もうすでに若干息切れして書くことが思いつかずでして、、、
自分の引き出しがかなり浅いことを思い知らされています。
そこで、一応元格闘家の端くれとして、ちょっと最近見た試合の観戦記なんかを書いてみようかなと。
あ、ちなみに今の僕は年に数回、キックボクシングや格闘技のイベントでジャッジやレフェリーの仕事をやらせてもらったりもしてますので、試合を見る観点はジャッジ目線からの評価も入れてみたいと思います。
先週の土曜は、K-1とRISEが同日開催してましたね。
何も同じ日にやらなくても、、と少しファン目線からは思いましたが、今はこんな時代なんで、どこにいたって試合は観戦できるし、
僕もこの日は家でこんな風に観てました。
試合前、個人的に一番気になってた試合は、
K-1 上原 VS 加藤
RISE 天心 VS ロッタン
RISE 裕樹 VS 野辺
このあたりです(敬称略)。
あ、もちろん他にも素晴らしい試合はたくさんあったんですけど、
個人的によく知ってる選手だったり、自分が昔戦ってた階級の試合だったり、と言う事だけのチョイスなので選定基準はお気にせずで。
試合を観終わった後は、もちろんほかにも素晴らしい試合はたくさんあったし、
特にRISEのセミファイナル、森本VS工藤戦なんかは素晴らしかったですね。
あれこそプロの試合。
技術的にも素晴らしいし、選手の覚悟を感じられた魂のこもった試合でした。
この2人に限らずですが、戦った選手の皆さん本当にお疲れ様でした。
さて、そこで僕の観戦記ですが、、
やっぱりこれ書きます。
天心 VS ロッタン
もうこの試合、というか天心君に関しては格闘技ファンからしたらもはや何も説明がいらないし、彼が史上最高のキックボクサーであることに疑問を抱く人はいないでしょう。
なので、彼自身の話しや試合にまつわる背景なんかは省いて、純粋に5R通してみ試合を観た、自分なりのジャッジングと所感を書こうと思います。
まず最初に、リングインした天心を見て思ったのが、これは少し前の試合から思うんですが、パッと見た彼の体つきを見て、最近は少し無理をして、本来よりも上の階級で試合をしてるな、と言う点。
彼ぐらいの選手になれば多少上の階級の選手であれ、問題なく倒せる力はあるんでしょうが、前回の中村戦でも感じた若干の当たり負けと、体格面での若干の見劣り。。
体重を増やすというのは実はすごく難しく、もちろん単純に増やしたら良いものではないし、筋量だけで数キロ増やし、なおかつそれで以前の体重と同じように戦うと言うのは、ホントものすごく難しい事なんです。
まず本来であれば増量には単純に時間が掛かります。と言うか時間をかけて増量し、身体を慣らしていくものです。
それをこの短期間での増量。
また、まだまだ成長期ともいえる年齢なので、完全に身体を作るには若すぎるという点。
彼に掛かる期待度、同階級に敵がいない等、色々な理由はあると思いますが、まず観ている皆さんには、今彼が戦っている相手達は本来上の階級であるという事は理解してほしいです。
身体の仕上がりだけを取って言えば、天心君の身体はまだ完成されたものではなく、同体重であってももっとキレのある身体に出来るはず。(これにはやはり少し時間が掛かると思います)
まあそれでも連勝している彼が本当に化け物ではあるんですが。。
さて、まずは1R。
天心は相手の出方をしっかりうかがいながらも、来る攻撃にはすべてカウンターを合わせてやろう、と言う準備と集中力が見て取れる。
ただ、ロッタンの圧力と、身体の頑丈さからくる自信満々の前進に、若干圧力は感じているようにも見えた。
さすがロッタン、今までの対戦相手とは明らかに違うプレッシャーを天心に与えている。
ただその中でも天心もさすが、カウンターのタイミングは合っているし、実際軽いながらも飛び膝蹴りもヒットさせる。
序盤にはローキックでロッタンのバランスを崩し転倒もさせる。
前進するロッタン、カウンターを当てる天心。
僕の判定は10対10
あるいは有効打で若干上回り、飛び膝をヒットさせた天心が、昔のK-1判定基準でいう所の10対9.5で取ったか。
*9.5と言う判定基準は今は本来ありませんが、ここでは個人的なジャッジとして書いています。
2R
序盤、展開は変わらず。
途中、天心は前蹴りでまたロッタンを転ばす。
このレベルの選手相手にこれが出来るのはさすが天心。
天心は左ストレートをカウンターで狙いに行くが、ロッタンの右ミドルが強くて重い。
これのせいで天心は思うように左腕を伸ばせない。
途中、カウンターを当てた天心が、”やっぱり打てば当たるじゃん!”って感じで、一度ラッシュをかけて勝負に出る。
しかし、ロッタンはひるまない。。
このラッシュの最後、天心は圧力から一回後方に転ばされる。
起き上がった天心はニヤっとわらったが、ここで天心は、ロッタンのすごさを少し肌で感じたようにも見えた。
その後、距離を取って下がる天心、前に出るロッタン。
ロープ際でカウンターを当て、サイドに回り込む天心、という展開が数回続く。
ラウンド終了。
1Rよりも有効打を当てた天心。
10対9 あるいは10対9.5で天心がこのラウンドを取ったか。
3R
ロッタンがギアを1つ上げてくる。
ガンガン前に出るロッタン、1、2Rはロープ際に詰めた際に、カウンターのパンチを出してからスルッと天心に逃げられるのを学習したロッタンが、ロープ際で天心を逃がさないよう、パンチでは無く左右のミドルキックで、天心のサイドへの転回をさせないような作戦に切り替えてきた。
また、ロープ際ではなくコーナーに天心を詰めていくようにうまく圧力を掛ける。
ロッタン強い。
ミドルキックも強烈。
このラウンドはこの試合初めて劣勢がはっきりついたラウンドだと思う。
僕のジャッジは10対9でロッタン。
観ていた人も、ここでロッタンの強さに驚愕したんではないでしょうか。
4R
3Rを見て、このままロッタンの圧力にどんどん押し込まれていく最悪のパターンが頭をよぎるが、さすがは天心。セコンドからの指示もあったのか、このラウンドは落ちついて距離を取り、しっかりとカウンターを当てる戦法をとり直す。
前進するロッタン、距離を取ってカウンターを当て、サイドに回り込む天心の図式に変わりはないが、3Rの様にロッタンにはつかまらない。
ただ、ロッタンもサウスポー相手のセオリー道り、右のミドルと右のパンチで圧力をかけ続ける。
強い選手というのは、特別な技術や隠れたテクニックがあるわけではない。
ただ、”やるべきことを、やるべきところでやれるかどうか”、そこだと思う
ロッタン、派手さはないが本当に強い。
ただ、天心も自分のやれることをしっかりやり切り、このラウンドは3R目の劣勢を盛り返した。
ラウンド終了
僕のジャッジは10対10でイーブン。
ここまで(4R目まで)の判定だと、はっきりとロッタンがとった3R、僅差ながらジャッジによってはどちらかは天心に付けている可能性もある1、2Rを含めて、イーブン、あるいは僅差でロッタン優勢か。
5R
序盤から激しい打ち合い。
天心は打ち合いの中、左ストレートの後の返しの右フックを狙っていた様にも見える。
何発かそれがヒットもする。
それでもロッタンも止まらない。
やはりガンガン前に出るロッタン。
ボディブローとミドルキックで若干天心はダメージを受けているようにも見える。
勝利を確信しているようにも見えるロッタン。どんどん前に出て天心にプレッシャーを与える。
こんなに疲れて動けない天心は初めて見た。。
このままずるずる行くか、、、
しかし天心、最後の最後で動きを取戻し、終盤は有効打になるカウンターをしっかりあて、最後はスタミナを絞りきるように攻勢を仕掛け、見せ場を作る。
この辺りは、幼いころから空手の大会にでていた天心が、空手の試合でのセオリーでもある、”最後のラッシュで印象を良くする”という闘いの習慣が出ていたのではないだろうかと思う。
僕の判定は、10対9.5でロッタン。
ここで判定。
正直、試合を通した印象ではロッタンだった。
ただ、試合というのはラウンド毎に10点法という減点方式の採点を取り、優劣はその合計点数で決める物。
冷静なジャッジとして集計すると、僕の出したジャッジはこれ。
49対48.5 ロッタンの勝利
*繰り返し言いますが、0.5ポイントと言う判定基準は今のRISEにはありませんが、もし0.5ポイント判定があった場合の僕なりのジャッジです。
ジャッジングと言うのは非常に難しく、人間の目でみて判断するものなので、機械の様に正確ではありません。
観る人の個性も出るし、見る場所や角度によって印象も変わります。
特にこの試合、みなさんおそらくはじめてみる天心の苦戦であったと思うんですが、
逆補正が掛かり、天心に厳しい目でみてしまった印象もあると思います。
僕が見た試合はディスプレイの中でしかないし、当然このジャッジが答えであるわけもありません。
経験がある程度ある僕も、この試合をジャッジングするのはとても難しく、ジャッジ泣かせの展開であったと思います。
そして、実際の試合のジャッジはこうでした。
49-49
49-48
49-49
1-0でロッタン
結果 ドロー
(ジャッジは2名以上の支持で勝利となります)
この結果は、僕のジャッジ表とは違っていますが、かなり的を得た、正しいジャッジであると思います。
1人がロッタンにつけているのも納得が出来ます。
さて、ここで試合は延長戦に入ります。
ロッタンからすると、勝ってたと思った試合がドローになり、ちょっとした絶望感もあったでしょう。天心相手だとこれでも勝てないのか?って。
天心からすると、負けたかもしれない試合に臨みが繋がった、希望の見えた判定であったと思います。
この差は実は大きいと思います。
勝ってたと思った後の延長。
負けたと思った後の延長。
どちらも苦しみの極限状態でのエキストララウンドですが、精神的には後者の方が僅かながら有利であるはず。
そんな状態でエキストララウンドは始まりました。
ExR
やはりこの日の試合全体の流れとは変わらず、
ロッタンの前進、天心のカウンターの流れでラウンドは進む。
ロッタンの圧力か、カウンターの天心か。
終盤、天心が的確なパンチをヒットさせてロッタンの顔をのけぞらせる。
これは少し印象に影響するパンチになったか。
ただ、先ほども書いたような”勝ってたと思った後の延長”のマイナス要素は、
ロッタンの攻撃からは感じられませんでした。
ロッタンの精神力も本当に素晴らしい。
最後まで打ち合う両者。
ラウンド終了。
僕の判定では、10対10イーヴン、
あるいは、どちらかに必ず優劣をつけるマストシステムであれば10対9で天心か。
そして判定です、、
3-0
天心の勝利。
判定の直後、涙する天心。
この涙は、きっと色々な感情が織り交ざってのものだと思いますが、
一番は悔し涙だったんじゃないかなと思います。
思うように動けなった自分、思うよりさらに強かったロッタン、そして薄氷の勝利であった事、
そのすべてを受け入れ、感情が噴出してしまっているように見えました。
確かに天心はこの日苦戦しました。
ロッタンが勝ったと思った人も多いでしょう。
それでも、相手の強さを受け入れながらも、最後まで自分を信じて勝利をもぎ取った事、
これは本当に素晴らしいし、この試合は彼にとって本当に良い経験になったと思います。
天心はこの先もっと成長するであろうと確信もしました。
ホントに、天心君は僕なんかが偉そうに言えるような選手ではないんですが(笑)、
このままもっともっと強くなって、パッキャオやメイウェザーの様に、
世界中のだれもが知っているファイターになって、世界を股にかけて活躍してくれていく事を期待しています。
以上、僕の観戦記でした。
それにしても、この日の両イベントは、天心君以外にも本当に良い試合の連続でしたね。
(K-1もRISEも)
僕らがやっていた90年台~2000年台の頃と比べると、選手のレベルも全然違います。
今のレベルでは、昔の僕らはきっと勝てないでしょう。
まあでも、僕らがやってきた闘いの歴史が、今の高いレベルに繋がっているとは信じたいですが(笑)。
選手の皆さん、本当にお疲れ様でした。
さ、次回はまた何か違う事書こ。