魔笛(2006英) | CINEPHILIA~映画愛好症~

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気づいたら11月。もうすぐ1年終わっちゃいますねー。今月はフィルメックス見に行かれたらと思ってます。

魔笛1 魔笛2 魔笛3


2006年のモーツァルト・イヤーに作られた作品。これまでシェークスピア作品を次々映画化してきたケネス・ブラナーが監督として、モーツァルト・オペラの傑作「魔笛」に全く自由な解釈を試みたようです。

第一次世界大戦前夜のヨーロッパ。毒ガスに侵された兵士タミーノ(ジョセフ・カイザー)は、3人の従軍看護婦に命を助けられる。そんなことがきっかけで、看護婦らの使える夜の女王(リューボフ・ペトロヴァ)のため、囚われの身となっている娘パミーナ(エイミー・カーソン)を救いに行くことになる。(私の適当なあらすじ)

この映画を観にいく人には3種類いるかと思うんです。
①本格オペラファン
②なんちゃってオペラファン
③オペラになじみの薄いただの映画好き
私は②でして、特に(音楽も内容も)見やすい「魔笛」は日本、NY、ウィーンで観てきました。そんな私でもこの映画にはちょっと面食らいました。③の人はなおさらなんじゃ・・・。

内容が・・・もともと矛盾があったり大きく転換したりと難しいのは分かるのですが、色々な要素を入れすぎて中途半端に感じます。設定を第一次世界大戦とリアルにした一方で、どこと言わないファンタジー色もあり。戦争と平和を訴える割には、ばかばかしさで締めたり。シリアス系ラブストーリーを描いた直後に、コメディタッチの描写があったり。チグハグさが観ていて落ち着かないんです。喜劇なんだから、全体的に可笑しくコンパクトに見せてよかったんではないかな(40億かけたら、そうも行かないのかしら)。基本を知っている人なら、この映画の夜の女王の描き方などは、結構ツボ(例えて言うなら、杉田かおる)。

でもさすがケネス・ブラナーと思わせるところも。小難しくせず、CGをエンターテイメントに用いて、ファンタジーはとことん。特に想像の世界のモノトーンの使い方は素敵でした。また冒頭の長回し(に見せているのか?)にあるほのめかしも見所です。撮影は上からも、下からも、まさに鳥のように自由自在のカメラワーク。うっかりするとよいお昼寝タイムになりそうな音楽に、ほどよい刺激を与えていました。


音楽は本格的です。キャストは全員オペラ歌手(中にはミュージカル俳優もいますが)を起用し、本人の歌をあてています。特に夜の女王のアリアや、長塚京三似のルネ・パーぺの声は素晴らしかったです(←この方、秋にはベルリン国立歌劇場来日公演で、「トリスタンとイゾルデ」のマーク王を歌うらしいです!)


私としては満足とはいえませんが、つべこべ言わずによい音楽を聴きに映画館へ・・・でいいかもしれません。

7月にシャンテシネ、テアトルタイムズスクエアにて公開予定
5月中旬には監督の来日も予定しているそう。
満足度:★★★★★★☆☆☆☆