- きのうの世界/恩田 陸
- ¥1,785
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「これは私の集大成です」と帯にある- 装丁が ”いかにもミステリ” な
- 3.4㎝の分厚い本。
どこが集大成か、考えた。
◎ 冒頭から「あなたは」と2人称を使い
いきなり読者を恩田ワールドに立たせる。
・・・これは「中庭の出来事」の最後に感じた
”私まで物語に参加させるのか”というハプニング感。
◎ ”塔と水路の町”。蛇行した川の中州にある旧市街。
・・・給水塔なら「像と耳鳴り」だし、水路といえば「月の裏側」。
「蛇行する川のほとり」も川つながりか。
◎ 水無月橋で死んだ男、市川吾郎は何でも記憶できる能力があった。
・・・遺伝する超能力といえば「常野物語」。
あまりの情報化社会となった現代ではその能力は
かえって人を苦しめ暴走させる。
◎ 市川吾郎の事件を町の人それぞれが語る。
・・・この手法、「Q&A」や「ユージニア」か。
◎ 特徴ある町に隠された秘密がどんどん膨らんでいく。
・・・豪雨の場面を頂点に加速していく感じは「ネクロポリス」を
思い出した。次々に提示される謎に ”この先どうまとめるのよ” と
読み手を不安にさせるのも同じく。
都市伝説というあたりは「球形の季節」ぽい。
◎ 最後の市川吾郎のモノローグ、事件の真相。
・・・雰囲気は「蛇行する川のほとり」のラスト。
意識の拡散というところは「いのちのパレード」のような
天からの目線を感じたし。
読後感は、”あー派手にやっちゃったわね”。
吾郎の弟は消えてしまったし、「あなた」は不遇。
あの町はこれからどうなっちゃうんだろ。
昨夜読み終えてこんなことをつらつらと考えていたら
3つの塔がそびえる夢を見た。
怖かった。
読後満足度 ★★★★