きのうの世界/恩田 陸
¥1,785
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「これは私の集大成です」と帯にある
装丁が ”いかにもミステリ” な
3.4㎝の分厚い本。

どこが集大成か、考えた。







 冒頭から「あなたは」と2人称を使い

  いきなり読者を恩田ワールドに立たせる。


・・・これは「中庭の出来事」の最後に感じた

”私まで物語に参加させるのか”というハプニング感。






 ”塔と水路の町”。蛇行した川の中州にある旧市街。


・・・給水塔なら「像と耳鳴り」だし、水路といえば「月の裏側」。

「蛇行する川のほとり」も川つながりか。






 水無月橋で死んだ男、市川吾郎は何でも記憶できる能力があった。


・・・遺伝する超能力といえば「常野物語」。

あまりの情報化社会となった現代ではその能力は

かえって人を苦しめ暴走させる。






 市川吾郎の事件を町の人それぞれが語る。


・・・この手法、「Q&A」や「ユージニア」か。





 特徴ある町に隠された秘密がどんどん膨らんでいく。


・・・豪雨の場面を頂点に加速していく感じは「ネクロポリス」を

思い出した。次々に提示される謎に ”この先どうまとめるのよ” と

読み手を不安にさせるのも同じく。

都市伝説というあたりは「球形の季節」ぽい。






 最後の市川吾郎のモノローグ、事件の真相。


・・・雰囲気は「蛇行する川のほとり」のラスト。

意識の拡散というところは「いのちのパレード」のような

天からの目線を感じたし。



読後感は、”あー派手にやっちゃったわね”。

吾郎の弟は消えてしまったし、「あなた」は不遇。

あの町はこれからどうなっちゃうんだろ。





昨夜読み終えてこんなことをつらつらと考えていたら

3つの塔がそびえる夢を見た。

怖かった。





読後満足度    ★★★★