恩田 陸
球形の季節

「六番目の小夜子」に続いてこれも学園ホラー

東北の小さな町「谷津」で

高校生にある噂が広まった。

〔5月17日にエンドウさんが宇宙人に連れて行かれる〕

というもの。

その噂どおりに女子高生が失踪した。

退屈で眠ったような町、谷津。

しかし裏側には異界が存在している。


「六番目の小夜子」が学校の意識だとしたら

この「球形の季節」は町の意識が働いている。

感性の鋭い人、また大きな苦痛を感じたことのある人は

異界へと踏み込んでしまう時がある。

そこは曇り空の垂れ込めた一面の荒野だ。


町中に昔からある石。

黒い影が立方体のように立ち昇る交差点。

なにげない町の風景がふと怖くなる。


物語の結末では異界へ行くのか残るのか

明らかにならないままに終わる。

今でも異界が口を開けて待っているような

進行形の不気味さを感じた。


登場人物が多く、散漫な感じがあるところが

少しもったいない気がする。

それとこの文庫の表紙の絵は

どうも合っていないよなぁ。



読後満足度   ★★★