こんばんはー!マックです。
※この話は蓮キョ結婚後設定です。
熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。
途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。
皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。
今回もオリキャラ登場です(荒井の方です←)
そんなに心臓に悪い絡みではありませんが、お嫌な方はご注意ください。
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「―――はいっ!カット!!これで『Good Will』クランクアップ、放送終了です~!!」
拡声器で助監督の声が大きく響く冬の夜空。
放送終了の言葉に、スタッフや演者達からわっと歓声が上がる。
蓮が主演を務めたこの月9は、最後の15分間を生放送すると言うタイプの最終回を迎えていた。
夏場は観光客に人気の高い、コテージのテラスでラストシーンを演じていた主演の二人は、直前まで室内で一緒に演じていた共演者達からサプライズの花束を手渡されてにこやかに笑っている。
温かい室内に置いてあった花からは、ほんのりと温かい空気が瑞々しい香りと共に立ち上がってくる。
蓮はその花の香りを嗅ぎながら、心は既に遠い地へと馳せていた。
全話のオンエアが完了した事と生放送が無事終了した事による安堵感と喪失感。
それと、数か月一緒に作品を作り上げてきた連帯意識。
それらがこの場にいるすべての人間の感情を支配する。
誰もがテンション高く、笑い合うその輪の中からさらりと蓮は逃げ出そうとしていた。
実際には、主演がそんなに簡単に逃げられる筈もなく、共演者やスタッフに次々と声をかけられる。
社がそっと抜け出す機会を蓮に用意しても、蓮の相手がいなくなったと気が付いた人達が「あっ、敦賀さん~!」とすぐに入ってくる。
最終的にもともと用事があったのと、ローリィから23時までには現場を離れさせてくれと言付かっていた監督が蓮を呼んだ事で、やっと人の輪から外れる事が出来た。
「ハリウッドでも活躍する君を、月9で撮る事が出来て幸せだったよ。」
「いえ、こちらこそ。有名な花田監督と一緒に作品を作る事が出来て幸せでした。『カナタ』はすごく楽しくて、もう少し演じていたかったですね。」
「結局初回から視聴率下げる事もなかったし、きっとこの最終回の視聴率も、ここ数年の記録を塗り替えるだろう。
―――もしかしたら、『Dark Moon』にも迫る勢いかもしれない。そうなったら私としても非常に鼻が高いよ。そうなれば、続編の企画があがるかもしれないし、まだまだ『カナタ』を演じる機会が回ってくるかもしれないね?」
「それは嬉しいお言葉ですね、是非そうなってほしいと思います。」
輪から外れて話をする監督と主演には、さすがに誰も近付かない。
他の誰とも変わらずにこにこと笑い合う二人だったが、急に監督の声のトーンが落ちた。
「君には・・・奥さんが大変な時に貴重な時間を割いてもらってしまったけれど、本当にいい作品を作る為に頑張ってくれて、感謝してるよ。」
「それは、仕事ですから。」
すまなさそうに眉を下げる監督に、蓮はきっぱりと告げる。
元々が仕事人間な蓮としては、プライベートはあくまでプライベート。
職場に持ち込むべきではないと理解している。
・・・過去、京子と共演していた時には別問題だったりもする、青い時期もあったが。
「京子君とは、以前2時間ドラマでご一緒させてもらった事があってね。彼女は準主役だったけど、他の誰よりも惹かれる演技をしていたよ。
―――できれば次は、君達夫婦の共演で撮らせてもらいたいと願っているよ。」
「京子は必ず戻ってきます・・・だから、それまで待っていていただけたら嬉しいです。」
御年68を数える有名監督が手掛ける作品は、ここ数年で少なくなってきている。
体調を崩す事が増えて来た事と、制作サイドと折り合いを合わせられなくなってきたのが原因だ。
自分の経験に基づき、いい作品をじっくり一つ一つ手がけていくその様は、まさに堅気の職人。
たった一度軽く袖振り合せただけのそんな彼をもたらしこむ『京子』の才能に、蓮は自分が褒められたような誇らしさを感じ・・・
誓いを新たに胸に刻み込んだ。
(キョーコは絶対に、戻るから・・・)
その後、他の人間に捕まらないようにさりげなく監督が手配してくれたおかげで、蓮は誰に絡まれる事もなく社から荷物を受けとり、スタッフの車に紛れて駐車していた自分の愛車へとたどり着く事が出来た。
キーを開け、荷物を後部座席へと放り込むと「敦賀さん・・・!」と呼びとめられる。
振り向くと、そこには荒井がいた。
「お疲れ様でした・・・!」
「荒井さんもお疲れ様。こんな所までどうしたの?」
「わ、私・・・本当に京子さんに申し訳ない事をしてしまって・・・敦賀さんにもご迷惑をおかけしてしまって、本当に申し訳ありませんでした!!」
ぎゅうっと両手を胸の前で握りしめ、急に頭を下げた彼女が言っているのは例の不倫疑惑の事だった。
社長や棚瀬に発覚した頃、マスコミがネット投稿の記事を発見してしまい少しだけ騒がれたのだが、幸いな事に他の共演者達が証人になってくれた事と最終回が近いドラマの話題作りととられて他局ではあまり大きく取り上げられなかった事で、すぐに鎮静化したのだ。
腰を大きく曲げて深々と頭を下げる荒井に、蓮は静かに「頭を上げて」と声をかける。
「いや、あれは本当に俺の不注意だった。荒井さんのせいじゃないから、気にしないで。」
「でも・・・」
「一緒に共演出来て楽しかったよ、ありがとう。」
最後にと手を伸ばし、握手を求める蓮に、荒井は一瞬複雑そうな表情を浮かべたが・・・
その手を力強く握ると、にこりと笑った。
「本当はね、敦賀さん―――私、敦賀さんの事がずっと好きだったんです。だけど、私が芸能界に入った時には既に京子さんとお付き合いされていて・・・悔しかったの。
だからいっぱい調べたわ、『京子』さんの事。
そしたら、すごく素敵な人で、私なんか足元にも及ばない人で・・・大ファンになっちゃった。だって本当にすごい人だったんだもの。」
「・・・」
「だから、『京子』さんが今の私の目標なんです!京子さんみたいな素敵な女性になって、いつか敦賀さんみたいな素敵な人と大恋愛をして、幸せな家庭を築くの!
―――だから、そんな時が来たら・・・私と噂になった事、ほんの少しでも誇りに思ってくださいね?」
「・・・うん、わかったよ。」
薄暗い外灯のみの駐車場ではわかりづらいが、声が少しだけ震えている。
きっと彼女は泣きそうなのを堪えているのだろう。
彼女の想いには応えられないが、「その夢には応えられるよ」との思いを込めて、蓮も握られた手に力を優しくかけてやる。
すると、荒井は「共演できて嬉しかったです、またどこかで会ったら声かけてくださいね!」とだけ言葉を残すと、まだ撮影陣が騒いでいるコテージの方へと駆けて戻って行った。
木々の合間に見える撮影用の眩しい光源と笑い声が、蓮の吐く息で一瞬白く曇って瞳に写る。
荒井はきっと涙が落ち着いてから本陣に合流するのだろうなと思いながら、蓮は車に乗りこむ為にコートを脱いだ。
一枚上着がなくなった事で急激に体の周りの温かい空気が冷やされていく。
寒気からぶるりと震えた蓮は、静かに車体の低い車の中へとその大きな身体を滑り込ませた。
―――キョーコへの想いを強くした後冷静になった蓮は、荒井の想いにうっすら気付く事が出来ていた。
だが、自分への想い以上にキョーコへの憧れが強い事も、何となくだが理解する事が出来た。
同性故の憧憬、嫉妬・・・色んな物を、彼女はキョーコから学んだのだろう。
(本当に君って子は・・・凄いんだから―――)
ただ、そこにいるだけで誰をも魅了する。そんな存在。
自分の預かり知らない所でも誰かに大きな影響を与えるキョーコの存在に、蓮は嬉しくなって頬を緩ませる。
そして、これからそのキョーコに会える事を思うと、長時間の深夜ドライブも苦ではなくなった。
キーを差し込み、エンジンをふかせる。
ラジオの情報を仕入れてくれていた社によると、高速は比較的スムーズ流れているようで、これなら明け方にでも京都に着けそうだと言う。
時計を見ると、デジタルな緑の信号は23時15分を告げている。
蓮はひとつ息を大きく吐くと、ゆっくりとギアを外してアクセルペダルを踏み込んだ。
*スキビ☆ランキング
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ドラマタイトルは超適当に、でも一応調べて付けました。
(本当のドラマ検索でヒットしちゃっても困るからね)
荒井さん・・・ね。
途中「この人何?すっごい心配・・・!」とのお声をいくつか頂きましたが、杏子みたいな悪キャラとして登場させたわけではなかったのでした。
(でもあの時点で言い訳してたらネタバレやー)
好きな人の好きな人を好きになるってヤツです。←わかりにくっ
嫉妬とか自己嫌悪に陥っちゃう事もあるけど、好きな人の好きな物を好きになれたら、待ってる幸せは二倍だよね。
そんな幸せを感じられるようになりたいな。
で、荒井さんは好きになってドハマリしちゃったパターンね。
今の彼女は京子激ラブですww
さて、ワタクシ事で恐縮ですが、日曜からちょっと旅行に行ってまいります。
月曜は一応予約投稿していきますけど、ガラケーなマックは文字数制限に引っかかる為、記事を弄る事が出来ません。
水曜は帰宅直後でPC触れる気がしません。
何かあっても記事を下げる事すら出来ない状態に入りますので、急ぎの御用等ございましたらメッセージの方にお願いいたします。
(本館に関しては、拍手コメもPCからじゃないと確認できないので・・・)
どうぞよろしくお願いいたします。