こんばんはー!マックです。
※この話は蓮キョ結婚後設定です。
熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。
途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。
前回に引き続き、無/理/矢/理的な描写が若干入ります。
全話全体公開を目指してますので相当ぬるめに仕上げてますが、それでも桃色気味ですのでお嫌な方はご注意くださいませ。
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目覚まし時計のベルが広い部屋に鳴り響いて、ゆっくりと起き上がる。
今日は1度目のアラームで無事に起きる事が出来たらしい。
社に怒られる事なく起きられた・・・その事にホッとすると、無性に水が飲みたくなった。
ミネラルウォーターを取りに台所へ向おうと寝室のドアを開けると、ぱたぱたぱたと走るスリッパの音がする。
がちゃバタン!と扉が開けられ閉める音が慌ただしく響くと、蓮の心はずんと沈んだ。
(今日も駄目か・・・)
あの夜の一件以降、キョーコは蓮を避けていた。
食事についてはちゃんと用意をしてくれているのだが、蓮が朝部屋から出て来る前にゲストルームへ篭ってしまう。
夜も蓮が戻る前に部屋へ引き上げてしまっている。
結果、声を聞くどころか、キョーコの顔を見る事すら叶わないでいた。
(いや、まあ・・・当然の結果、だよな・・・)
ダイニングキッチンへと足を運ぶと、コーンポタージュスープから温かな湯気が立っていた。
今日は洋食にしたらしい。
綺麗な色のスクランブルエッグにベーコン、クロワッサンは3個皿に乗っている。
更にサラダのボウルもあるので、小食の蓮にはかなり多い朝食だ。
しかし、残すわけにはいかない。
少しでもキョーコの気持ちを自分の元へ取り戻したい蓮としては、例え胃が壊れようとも腹がはちきれようとも全部食べてしまわねば・・・
つい先程までキョーコがいた痕跡に安堵し、今この場にキョーコがいない事に悲観し。
蓮はひとまず喉の渇きを潤そうと、冷蔵庫のドアに手を掛けペットボトルを取り出した。
キンキンに冷えたミネラルウォーターは蓮の喉を冷やしながら滑り落ちる。
だけど蓮の喉は潤っても、心は乾いたままだった。
***
主寝室の扉が開く音がした為に慌ててゲストルームへと走り込んだキョーコは、ずっとベッドの上で座り込んでいた。
蓮が家にいる時間は、こうしてベッドの上で息を殺して過ごすのがキョーコの日課となっていた。
夜はどこかで食べてから帰宅してくれるので、何も用意する必要はないと言われているが・・・
あの夜から2週間、ずっとそうしてキョーコは蓮と顔を合わせずに来ていた。
(だって・・・どんな顔をしたらいいの・・・)
ぎゅうと強く肌掛け布団を握りしめながら、キョーコはあの日の夜を思い出していた。
息が苦しくて、身体のあちこちがくすぐったいような、気持ちいいような感じがして。
何よりも、身体中から湧き上がる熱が抑えきれなくなって。
ゆっくりと開いた目の前に蓮の顔があった。
窓から差し込む僅かな光だけでもわかる程の近距離から蓮の顔を見た事がなくて、キョーコは何が起こったのかわからない。
ぼんやりとした寝起きの頭が働き出すと、自分がどんな状況に置かれているのか・・・
理解して、そして怖くなった。
勿論、蓮とは夫婦なのだから、それまでの生活の中で夜の営みがあった事も想像できる。
しかし、今のキョーコには「はいそうでしたか」と、三つ指ついて布団で待つなど到底無理な話だ。
一緒に過ごしてはいるが、キョーコにとって今の蓮はあくまで「他人」なのだ。
「家族」としての愛情を取り戻す事が出来ないでいる相手に、身体を開く事は出来ない。
それでも心とは裏腹に、勝手に快感を掴んで潤んでいく身体。
初めて感じる回避不可能なその熱に、キョーコは身体を捩って逃げ出そうとした。
「んぅ!やめ、つるがさ・・・っ!」
「きょーこ・・・」
身体をまさぐる大きな手はさすが自分の夫と言うだけあって、弱いポイントを確実に突いてくる。
悲鳴に近い嬌声を喉までこみ上げてくるが、深夜に大声を上げるのはいけないし蓮の為にはならないのではないかと必死で堪えた。
最上階ワンフロア―で防音も完備されているし、窓も閉まっているのだから全く問題はないのだが。
恐怖でうまく抵抗の出来ないキョーコにそれを確認する余裕がなかった。
そうこうしているうちに身体の奥を弄る指が引き抜かれ、蓮の身体が再びキョーコに圧し掛かってきた。
「ひぅ・・・!」
「キョーコ、愛してる―――」
感じた事のない腰の奥に燻る熱が、蓮の指で僅かに震えて小さな悲鳴をあげる。
それまで硬く閉じていた瞳を開いたキョーコが捉えたのは、自分を映していない蓮の瞳だった。
(貴方が愛してるのは、「私」じゃない―――!!)
「―――っ!うぅっ!!」
そこまで思い出した所で再び恐怖に駆られたキョーコは、抱えていた掛け布団をばさりと被って潜った。
真っ暗な布団の中では暗闇の中で見た蓮の顔を思い出してしまって更に叫び出しそうになるが、身体を抱きしめる事でここに自分一人だと確認し、何とか抑える。
決して蓮が嫌いな訳ではない。
むしろあの日奏江の話をたくさん聞いて蓮に好意を持ったからこそ、記憶をなくす前の自分しか知らない蓮の本能を見せつけられて恐怖が勝ったのだ。
「・・・キョーコ。」
その時、ゲストルームのドアが小さくノックされ、自分の名を呼ぶ蓮の声が聞こえてきた。
ドアと布団で二重に隠されていると言うのに、キョーコは心臓が止まりそうな程跳ねた。
「ご飯、御馳走様。今日も多分帰りは0時を過ぎると思うから・・・ちゃんと布団、かけて寝るんだよ。」
ゆっくりと、戸惑いの色を見せながら紡がれる蓮の声。
自分の事を心配してくれているのは声だけで十分にわかるのだが、まだそのドアを開ける勇気がない。
どうしたらいいのかと困惑していると、遠慮がちに「じゃあ・・・行ってきます」と言う言葉が聞こえてくる。
(あ―――)
せめて「いってらっしゃい」くらいは言うべきだろうかと布団から顔を出すと、蓮のスリッパの音が遠ざかる。
慌ててドアに駆けより耳を澄ますと、そのうち玄関のドアがばたんと閉じられる音がして、蓮が出て行った事をキョーコに知らせた。
蓮はわざと玄関のドアを大きな音を立てて閉めてくれるので、キョーコはそれからやっと部屋から出て来られるのだ。
ゲストルームのドアに耳を立ててるのまでは知らないだろうが、自分の不在時は好きに部屋を使ってくれと言う蓮の思いが込められているような気がする。
(このままじゃいけない・・・それはわかってる)
「でも・・・どうしたらいいの―――」
あの一件からそろそろ2週間が過ぎる。
いつまでもこうして逃げ続けるのはいけないとは解っているのだが・・・
それでも、今蓮と顔を合わせるのはまだ怖い。
キョーコはピタリとくっつけていた耳をドアから離し、今度は額をこつりと付けた。
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くーらーくーてーすみません。