こんばんはー!マックです。


※この話は蓮キョ結婚後設定です。

熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。

途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。



皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。







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キョーコが久し振りのガールズトークにワクワクした夜、蓮は出演中の連続ドラマのスタッフや共演者達と飲みに来ていた。



普段であれば断っているのだが、今一緒に作品を作り上げている人達との関係も大事だ。

ちょうど奏江がキョーコに外出の誘いをかけているのを聞いたので、「夕飯の心配はいらないから、キョーコもゆっくり琴南さんと楽しんでおいで」と告げ、自分も飲み会に出る事にしたのだ。


既に3話目が先日オンエアされたばかりだが、他局の伸び悩む一押しドラマを押しのけ飛びぬけて視聴率が良かった。

それは、キョーコのニュースの後しばらくテレビ出演を控えていた蓮が主演だから・・・と言う、少し残念な理由もあったが。

それでも、そんな邪な理由で見始めた人達も圧倒する蓮の演技力で、初回以降の視聴率もほとんど下がる事なく好調だった。


そんな事から、今日は監督を筆頭に限られた人数での祝いの席となったのだ。



「れ~ん~。たまには思いっきり飲んでもいいんだぞ~?」

「社さん・・・飲みすぎましたか?」

「ん~?俺は酔ってないぞー!!」


開始1時間ですっかり出来上がってしまった社の横で、琥珀色の液体をゆっくりと喉の奥へと流し込む。

そう言えば、最近ずっと社さん眠そうだったもんな、疲れがたまってたんだなと思いながら、彼が他の人に絡まないようにやんわりと他の宴会参加者から遠ざける。

こうしておけば、ついでに自分もあれこれ騒がれる事なくゆっくりと飲めるので、心の中で社に感謝しながら水を飲ませるとくったりと机に突っ伏す。


そんな珍しい社の姿に苦笑していると、新人女優の若い女の子がやってきた。


「お疲れ様です敦賀さん、ちゃんと召し上がっていらっしゃいますか?」

「荒井さん、お疲れ様。ちゃんと摘んでるよ。」

「そうですか?さっきからウィスキーのグラスばかり触っているの、見てましたけど・・・」

「そう?」


(しまった、今夜は社さんが見張ってないから大丈夫と思ったんだけど・・・)


記憶を失くしたキョーコの作る料理は相変わらず美味しいのだが、以前のように蓮仕様で作らなくなっている為、量が多い。

でも残したくない蓮としては、家で食べるご飯の量が増える代わりに外での食事量が減った。

社に咎められて何とか少量は口にするものの・・・

ドラマの撮影や番組宣伝で飛びまわっていたここ数週間では、社の胃薬を拝借する事も何度かあった。


「駄目ですよ?ご飯もちゃんと食べなきゃ!京子さんに怒られちゃうんですよね?」

「え?それ・・・」

「うふふー。実は私、京子さんの大ファンでして。以前雑誌で京子さんがインタビューで答えてたの、覚えてたんです。」

「そうなんだ・・・ありがとう。」


過去のキョーコとの絆が他の人に認められたような気がして嬉しい。

今のキョーコの余所余所しさに疲れて来ていた蓮としては、新人の彼女の言葉は心にすっと沁みた。



そして―――「会いたい」

食事を疎かにする自分を心配して怒ってくれる、あの頃のキョーコに会いたい。

叶わない願いが仄かに顔を出し始める。



それは、いつも希(こいねが)っていて、しかしキョーコには届かない。

蓮の求める「キョーコ」は、例えるなら未だガラスの棺の中で眠る白雪姫。

そこにいるのは解っているのに、触れる事が出来ない。


童話の中の白雪姫なら、棺を落とした拍子に林檎の欠片がぽろりと出て来て息を吹き返す。

しかし今のキョーコは、激しく揺さぶってしまえば壊れてしまうのではないかと思えてならない。


もともと繊細なキョーコにそんな真似は出来なくて。
もどかしい思いを抱えながら、蓮はキョーコを包み込むふりをしながら遠巻きに監視していた。



ドラマ内での接点はそれなりにあったものの、あまりプライベートな話などしない蓮だった為に知らなかった彼女の事。

アルコールで少し気分も上がって来ていた蓮は、珍しく新人女優と「京子」の話で盛り上がった。







酔い潰れた社を送り届け、自分も帰宅したのは1時を過ぎたところだった。

きっと明日は二日酔いに苦しむだろうと踏んで、最後に飲ませた酔い止めの飲料。

本当は食前に飲むべきだが、後からでも飲まないよりはましだろうと判断した。


しかし、今度は自分がふわふわとした感覚に襲われているのに気が付き、自分の分も買うべきだったと後悔した。


荒井と話せた、冷やかしでない「京子」の話題が嬉しくて、ついつい勧められるがままにアルコールを煽ってしまった。

普段の蓮であればそれでも何ともなかったかもしれないが・・・

やはり、連日早朝から深夜まで撮影が続くと神経がすり減っていたのだろう。

社を送り届けた事で緊張も解け、今は確実に酔っていると自分で判断できた。


(でも・・・嬉しかったんだ)


熱心な京子ファンだと言う荒井の言葉はどれも嬉しかった。

まるで昔のキョーコが戻って来てくれたような気がして、自然と今のキョーコの状態もぽろりと彼女に告げてしまった。



自分が今のキョーコに抱える想いも―――吐き出してしまいそうになった。



途中で社が「蓮くん!吐きそうです!」と遮ってくれなければ、何を口走っていたかわからない。

そんな自分が怖くなったのもあり、二次会への参加を断って帰路に着いた。



(何してるんだ、俺・・・)


初めてまともにお互いのプライベートに踏み込んだ話をする、自分よりもキョーコよりも年下の女の子を相手に口を滑らせそうになった失態は、蓮にそれなりにダメージを与えた。

それでも、アルコールで理性のネジが緩んだ頭はまだキョーコを欲していて。



(会いたい――――)



キョーコの寝ているゲストルームへと足を向けさせていた。






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すみません。

自分で書いていて上の台詞、めっちゃ気に入っちゃったんですよ・・・

へべれけやっしーも可愛いと思っちゃったんだww



タイトルでは「ねが・う」とフリをつけておりますが、本来の読み方は「希(こいねが)う」が正解です。