こんばんはー!マックです。


※この話は蓮キョ結婚後設定です。

熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。

途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。


皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。







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お互い手探りで相手を傷つける事のないようにと過ごす、ぎこちないけれどささやかな夫婦の日常。

しかしながら仮初めの平穏は、ゆるやかに蓮の中の何かを。

そして、キョーコの中の何かを変えていく。



それは、小さく息を吐いた瞬間に。

ふいに伸びる手が止まる瞬間に。

優しく微笑んだ瞬間に始まる。



優しい侵食。柔らかな崩壊。



見ないフリをしてきた綻びが、いつの間にか大きな穴に代わり大事なモノを総て零れ落としていく。

はじまりは、一瞬の気の緩みから―――




***




その日、奏江が遊びに来ていた。


千織の所へ遊びに行った帰りに、奏江の行きつけの店でカットソーをお揃いで購入してみたり。

有名なカフェで新作のケーキを購入してみたり。

あまり遠出をしないキョーコにとっては、久し振りにおめかしをしての外出となった。

その後「どこかのカフェに入るのもいいけど、やっぱりゆっくりできないから」と言う事で、キョーコの家に奏江が寄ってくれたのだ。



熱い紅茶はオーソドックスなダージリンだけど、ミルクを入れると香りがふわりと柔らかくなった気がする。

奏江はストレートを口に付けると、ふぅと温まった息を吐いた。


「・・・で?アンタ、何思いつめてるわけ?」

「―――え?」

「今日、人の目がなくなると必ず眉間に皺寄せてたわ。そういう時のアンタって、大抵何かを悩んでる時よね。」

「・・・そうなんですか?」

「もう癖なんでしょうね。そういう時は必ず私を無理矢理相談乗らせたりしてたんだから、今のアンタも言うといいわよ。」

「でも・・・」

「「迷惑じゃない?」って聞くのは今更なのよ。いいからさっさとこの親友様に話して御覧なさい。」


キョーコは一瞬戸惑ったものの、昔から相談役だったと言う奏江の言葉がすんなりと心に浸透する。

ああ、きっと私本当に奏江さんには色んな話をしてきたのね・・・と納得した所で、ゆっくりと口を開いた。


「・・・私、このままここにいてもいいのかなって思って。」

「ここ・・・って言うのは?」

「ここ。」


奏江の問いかけに、キョーコは静かに目を伏せる。

それは、この家・・・連の側と言う意味だと受け取った奏江は、少し考えた。


「それって、敦賀さんが嫌だって事?まさか、アンタ何かされたの!?」

「ううん、何もされてない!敦賀さんは優しいですよ?」

「でもそしたら、そんな事は思わないでしょう?」


記憶の戻らないキョーコが何かをされたと思った奏江の言葉は、丁寧ながらも少々怒気を孕んでいて、キョーコは慌てて訂正に走る。


「敦賀さんは優しいです。記憶の戻らない私でも、優しく見守ってくれているから・・・」

「じゃあ、どうして。」

「敦賀さんは、優しい・・・けど、時々息が詰まりそうになるんです。記憶が戻るかもしれないから優しくしてくれてるって思う時があって・・・」

「そうなの?」

「きっと敦賀さんは、ここまで記憶が戻らない私に呆れてるんじゃないかなって、そう思う時もあったり・・・」

「―――何があっても、アンタは「キョーコ」だと思うけどな。」


「・・・でも、それならもっと側に来てくれてもいいと思う。・・・時も、あります・・・」



キョーコは、蓮が置く微妙な距離に傷付いていた。

側にいるけど触れられないその距離にいて、だけどそこから見つめる瞳には記憶の欠片を探る色。


壊れ物が壊れないようにと、柔らかな緩衝剤で何重にもつつんで、くるんで。箱の中に閉じ込める。

キョーコはこの家で、彼の幾重にも巻き付けられた愛と言う名の緩衝剤で窒息しかけていた。



「アンタは敦賀さんの事、好き?」

「・・・」



好きかと問われると、それは今のキョーコには答えられなかった。


蓮の行動に傷付くと言う事は、きっと彼に好意を持っているのだろう。

何も思っていなければ、彼の取る行動総てどうでもいいはずなのだから。

しかし、だからこそ―――


キョーコは静かに首を縦に振った。


「・・・んモーッ!!きっとまた敦賀さんがヘタレモードに入ってるから、キョーコがうじうじ悩まなきゃいけないわけね!?」

「へっ?ヘタレモ・・・!?」

「そーよ!アンタの旦那ったら、本当に付き合うまでもヘタレで小細工ばっかり仕込んでからさ!付き合ってからもキョーコ命なのはいいけど、アンタの一挙手一動で凹んだり舞い上がったりさ、ほんっっとーにどうしようもないんだから!!」
「そ・・・そうなの?」
「そうなのよ!モーッ!!あー、今思い出しても腹立つし砂吐けるわ!」


いつも優しく微笑む蓮からは想像もつかない奏江の言葉に、キョーコはあっけにとられてしまう。

更に続けられる奏江の口撃にぽかんと口を開けたままじっと見つめていると、その視線に気付いた奏江が「あ・・・」と小さく声を上げてストップした。


「ゴメン、言い過ぎたわ。今のアンタは何にもわかってないのに・・・旦那の悪口、気持ち良くはないわね。」
「ううん、悪口には聞こえないですよ。だって奏江さん、本当は蓮さんの事好きなんでしょう?」

「はっ!!??何を言ってるのキョーコ!?私は敦賀さんなんて好きじゃないわ!」

「あ。そういう意味じゃなくてですよ?なんて言うか・・・仲良しって言うか、優しいなって思えて。」


キョーコがそう思ったのは本当だった。

罵っているようにも聞こえるけれど、その言葉の裏に友情や戦友に近い愛情が籠っているように感じたのだ。

きっと、記憶をなくす前の自分もそこで二人と一緒に笑い合っていたんだろうと想像すると、嬉しくて胸がほわんと温かくなる。


「仲良し?私と敦賀さんが?冗談じゃないわ!一生仲良くなんてなれないもの。」

「そうですか?男女の友情って成り立たないのかしら・・・」

「(と言うか、アンタなしでは会話すら成り立たないですから)」

「?奏江さん?」

「・・・別に、何でもないわ。」


ぼそりと漏らした奏江の言葉は聞き取れなかったけれど、今の蓮からでは想像もできない「へたれ」な姿も知りたくて。

もっと色んな蓮の姿を聞いてみたくて。


ティータイムに始まったガールズトークは、秋の日が落ちても、夕飯の時間になっても。

キョーコの質問によって続けられた。








作品用拍手アイコン ←旦那になってもけちょんけちょん。←


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大事な親友を嫁にもらわれていったら・・・ね^^;

蓮とモー子さんのライバル関係は一生続くと思うのですよw

キョーコを想う戦友同士、キョーコを挟んでバチバチ火花散らし続けるんだww

(しかし、今回はけちょんけちょんでごめんよ蓮←)



ちなみに今週は予定がぎゅうぎゅうで、どうやら話が書けそうにありません。

金曜土曜で5話ストック書けましたが・・・そこで更新止めたら最悪だろうと言う場面。

ああぁぁぁぁ・・・(悶絶)