こんばんはー!マックです。


※この話は蓮キョ結婚後設定です。

熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。

途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。

(かっこいい蓮さん不在で申し訳ない←)



皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。







゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚








「ごめんなー、明日も朝9時には迎えに来てもらわないといけないのに、こんな時間になっちゃって・・・」

「仕方がないですよ。時間が押したのは社さんのせいではありませんし。」



まだ書類整理が残っている為今夜は事務所泊だと言う社を送り届けた際、こんな言葉を交わしたのが既に午前2時近く。

本日最後の仕事だったバラエティの収録が、MCを担当するお笑い芸人の遅刻で押してしまったのが原因だ。

当初の予定よりも1時間半遅れた収録終了の合図で、セットに立つ蓮も、それをスタジオの端で見守る社も同時に詰めていた息を吐き出した。


「でもな・・・キョーコちゃん、こんな時間じゃさすがにもう寝ちゃっただろ?」

「まあ、今日は遅くなるとは最初から伝えてありましたし・・・問題はないかと。」

「あるよ、大有りだよ!毎日ちょっとずつでもいいからキョーコちゃんと二人で話す時間を作ってやりたいのにさー!」


相当ご立腹の社は口を尖らせているが、彼が怒るにも理由がちゃんとあった。


遅れてきたMCの芸人は、既に1時を回っていると言うのに蓮を「これから飲み会するんですけどどうですか!?」と誘ってきたのだ。

それは蓮も丁寧に断ったのだが、その後がいけない。


「京子ちゃんが家で待ってるんですね!記憶どうなんですか?俺も心配で仕方ないんすよー!」


どこに仕事に行ってもスタッフや共演者が気を使ってそっと見守ってくれる中、こうして堂々と絡んでくる人種も決していないわけではない。

一方的に捲し立てた上に「今から京子ちゃんも呼んで一緒にどうですか!?」などと空気が読めない発言が飛び出したところで、社が止めに入ってくれたのだった。


「社さんはちゃんとスケジュールを色々調整してくれてるじゃないですか。さっきも・・・社さんが止めてくれなければ、俺が怒ってたと思います。『温厚紳士な敦賀蓮』のイメージを守ってくれてありがとうございます。」

「別に・・・俺は純粋に腹が立っただけだよ。お前やキョーコちゃんが酒の席の場で晒し者にされるのが、堪らなく嫌だっただけだ。」

「くす・・いつも感謝してますよ。」



病院での退院会見でのやり取りを、キョーコの演技だとか偽善だ何だと誹謗中傷する人も残念ながらいる。

だけど、キョーコはそんな人達にも自分と同じような思いをしてほしくないとテレビを見ながら話していた。

記憶を失くしても他人を思いやるところは「キョーコ」そのもので。

そんなキョーコに社も蓮も愛おしさを感じ、あまり雑音が入らないように、少しでもゆっくり静養できるようにと気を配っていた。


「じゃあ申し訳ないけど、明日は事務所出発で。お休み、蓮。」

「お休みなさい、社さん。少しは寝てくださいね?」

「勿論!倒れるわけにはいかないからねぇ。蓮もちゃんと寝ろよー。」








蓮が自分の家のドアを開けたのは既に2時半を過ぎていた。

もう寝ているだろうと思い、物音を立てないようにそっと靴を脱ぎ上がる。

せめて寝顔だけでも見れたのなら・・・と思い、今は彼女の部屋となったゲストルームへ足を運ぶがベッドが綺麗にメイキングされたままだ。

はて・・・と思いながらリビングへと向かうと、キョーコはソファーの上に横たわっていた。



(待ってて、くれたんだ・・・)



白いリネンのシャツワンピースに淡いピンクのカーディガンを羽織ったままのキョーコ。

ここまで遅くなると思ってなかったのだろう、きっと蓮に就寝前の挨拶をしようとリビングで待機していたものの、睡魔には勝てなかったようだ。

蓮本人もここまで遅くなるのは予定外だったのだから、キョーコは尚更だ。


肘掛けにクッションを一つ置いて、もうひとつあるクッションを抱きかかえて眠るキョーコの眉間には、ほんの少し皺が寄っている。


寝ている体勢が苦しいのだろうか。それとも何か辛い夢でも見ているのだろうか。

どちらにしても、その状態から解放してあげたい。


「ただいま、キョーコ。」


静かに優しく声をかけると、ぴくりと小さく反応はするもののキョーコの瞳は固く閉じられたままだ。


退院した後「気分転換に」とミス・ウッズからかけてもらったと言う巻き髪は、癖のつきにくいキョーコの髪に馴染む事なく毛先にゆるりと痕跡が残されている程度だ。

同じくパーマをかけられた睫毛も、今はゆるくカーブを描いているだけ。


そのカーブがキョーコの頬に描く影を見つめながら、蓮はそっと前髪を弄る。

するとふわりと口元が弧を描いて、蓮はドキリとした。



それは、昔からのキョーコの仕草。

深い眠りに入っている時に蓮が髪を優しく撫でてやると、無意識に口角が上がりふわりと微笑んでくれるのだ。

キョーコに何度「起きてた?」と確認しても「ううん、知らない」と答える、蓮しか知らないキョーコの可愛い癖・・・



蓮は思わずその口元に唇を寄せた。



「―――っ!!」



微かに触れたか触れないかの所で、びくんと大きくキョーコの体が跳ね、蓮は息を飲み飛び退いた。



「ご、ごめんなさい!帰られるまで待とうと思ったんですけど、寝ちゃうなんて・・・!」
「いや、収録が押してしまったのはこちらなんだから。こんな時間になってごめんね。」

「え、今何時・・・」

「もう2時半を過ぎたところだよ。」

「そんな時間まで・・・お疲れ様でした。」


慌てて飛び起きたキョーコの髪は、下敷きになっていた部分がもわんと大きく盛り上がってしまっていた。

シャツワンピースも少し皺になっていて、胸元部分に出来た皺は隠すようにカーディガンをぎゅっと掴むキョーコ。

少し身だしなみがましになった所で、ふわりと微笑んで「おかえりなさい。」と言ってくれた。


その優しい笑顔もまた、以前のキョーコのようで。

ふいに愛おしさで、胸がじわりと温かく染み出てくる。

まだ完全に直り切らないキョーコの乱れた髪を梳かそうとしたのか、単純に頭を撫でたくなったのか。

無意識に伸びた蓮の大きな手。


しかし、キョーコの身体は再び大きく跳ね、顔は強張ってしまった。


「あ・・・ごめん。その・・髪、少し癖付いてる。」

「え?あ、やだごめんなさい。私ったら・・・」

「ううん。俺が遅かったのがいけないから。今夜はもう寝よう?」

「はい・・・おやすみなさいませ。」

「うん、おやすみ・・・」


そのままそそくさとゲストルームへ引き上げてしまう後ろ姿を見送り、リビングから完全にキョーコの姿が消えると同時に蓮は盛大に溜息を吐いた。



キョーコが戻って来たのはいいが、彼女にとって結局今の自分は「赤の他人」。

こわがらせる事のないようにと、彼女との接触は蓮も意識的に必要最小限に留めている。



だけど、時折見せる以前と変わらない仕草に。

数日置きに夢で見る新婚当時のキョーコの姿に。


蓮の無意識下層にある「触れたい」と言う欲求が高まるのか、本人が気が付かないうちにふい・・・と手が伸びていたりすることがある。

そして、その度にキョーコに拒否反応を見せられて落ち込んで・・・


それが今の二人の日常だった。



(本当に・・・彼女をうちに戻して良かったんだろうか)



唇にほんの少し掠めた体温は確かに昔と同じで。

ほんの少し触れた感触も、近付いた事で香ったシャンプーやボディーソープの匂いも総てが以前と変わらないのに。


蓮を「恐怖」の対象として捉えた琥珀の瞳が、彼の胸に大きな穴を開ける。



だけど―――今はそれでも前に進むしかない。




翌朝の出発時間までそんなに時間が空かない事から蓮は戸棚の中で待つウィスキーを諦め、コーヒーでも飲もうとキッチンへとそのまま足を向けた。







作品用拍手アイコン ←そんな日常。


スキビ☆ランキング

************


飲酒運転は駄目ですからね(`・ω・´)キリッ

ところで・・・すみません。

最近体調がイマイチよくなくて、ストック分ついに切れてしまいました。

月水金のどこかでUPがない日があったら、書きあげられなかったんだなアイツと思ってやってください。

(処方された薬が微妙に合わないのか、寝落ちの日々なのです・・・)