こんばんはー!マックです。


※この話は蓮キョ結婚後設定です。

熱中症によるキョーコ記憶喪失のお話し。

途中は色々と辛いですが、ラストはハピエン確定。

(かっこいい蓮さん不在で申し訳ない←)



皆様、どうぞ体調にお気をつけてお過ごしくださいませ。







゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚








きいぃ・・・とドアが開く音がする。

廊下の光が暗い寝室内に差し込み、ベッドの中で微睡んでいた蓮の意識はゆっくりと浮上した。



ふわりと漂ってくるのは赤味噌のいい匂い。

それと、魚を焼いた時の独特な匂いが一緒に乗ってやってくる。



―――知っている。これは、キョーコがよく用意してくれる朝ごはんのメニューだ。



シャーっとカーテンレールが心地よい音を立て朝日を呼び込む。

その光がとても眩しくて目を開けば、そこにいたのはキョーコだった。


「久遠、起きて。もう朝よ?」


優しい声。

逆光のせいで顔が良く見えないが、きっと美しく微笑んでくれているのだろう。


(待って、もう少しだけ・・・)

「なぁに?起こしてあげないとダメ?あまえんぼさんねえ。」


ふふっと笑いながら近づいてきてくれるキョーコに手を伸ばし、優しく抱きとめる。

すると、華奢なキョーコの体が急に大量の白い羽根に変わって散ってしまった。



(え・・・キョーコ?キョーコ・・―――!!)





「キョーコ!!」



気が付くと、蓮は自分の叫ぶ声で飛び起きていた。

寝室の扉もカーテンもきっちりと閉まったまま、室内は真っ暗だ。


慌てて広いベッドから飛び出し、ドアを開けて居間へと急ぐ。

しかし広いリビングはしんと静まり返っていて、誰かがいた形跡がない。
バーカウンターの横をすり抜け台所兼ダイニングへと駆け込むと、そこにやっと求めている姿があった。



「・・・?おはようございます・・・」

「――うん。おはよう、キョーコ。」


バタバタと駆け込んできた蓮の形相に驚いたキョーコはびくりと身体を縮こまらせ、トレーを抱えてしまった。


「あの・・・大丈夫、ですか?」

「うん・・・少し夢見が悪かっただけだから。」

「そうですか・・・汗を掻かれてるのでしたらシャワー浴びられますか?」

「いや、それは大丈夫。それよりいい匂いだね、お腹空いてきた。」


キョーコが起こしに来てくれたのは夢の中だけだったが、食卓に並んでいたのは夢で嗅いだ匂いと同じメニューだ。

和食派のキョーコらしく、朝から栄養価の高そうな献立がテーブルで蓮を待っていた。


「どうしますか?今朝はこのままご飯にします?」

「そうだね、着替えよりもご飯が食べたいかな。」

「はい、わかりました。」


クスリと笑いながらカウンターへと向き直り、味噌汁をついでトレーに乗せる。

その一連の動作を眺めながら、蓮はダイニングチェアーに座った。


キョーコが可愛いと選んだ、控え目フリルが上品なピンクのエプロン。

料理を作る際は身だしなみを気にして、後ろで一つに束ねられる短めな濃い栗色の髪。

トレーを持って運んでくる姿も、蓮に給仕してくれる姿も、蓮の目には倒れる前とは何一つ変わりなく映る。



だけど―――



「―――・・・・・」
「・・・どうかされましたか?」
「あ・・いや。何でもないよ。」


味噌汁に口を付けて蓮は止まってしまった。



―――違う。味が違う。

以前のキョーコであれば、素材のよさを最大限に生かす為にこんな濃い味付けはしなかった。


それに、記憶の戻らないキョーコは、誰に対しても敬語を使う。

勿論蓮も敬語の対象で・・・それが今の蓮とキョーコとの心の距離の遠さを物語っているようで、蓮は時折夢に見る以前のキョーコとの違いに苦しんでいた。



「今日は10時に社さんがお見えになるんですよね?」

「そうだね。一緒に愛さんも来るって話してたから必要な物があれば買ってきてもらうのもいいし、気分転換に一緒に外に少し出るのもいいかもしれないよ?」

「そうですねぇ・・・野菜を少し買い足しておきたいかな。」

「自分も買い物に降りるかどうかは、愛さんと相談して決めるといいよ。」

「はい、そうしますね。」




キョーコが家に帰って来た事で、やっと戻った以前のような温かい空気。

けれども、それは以前と全く同じと言うわけではなく、その微かな違和感に蓮は戸惑っていた。









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やっと家に戻ってきましたよー。

病院長くてすみません。