※この話は、夜はホステスな才女きょこたんと、同じく夜はホストの准教授蓮の組み合わせです。
完全パラレルです。

うっかり会話が長引いたせいで、今回通常公開です。

マックが激しく後悔しておりますorzすみません。


両片想いのすれ違い系が苦手な方にはあまりおすすめできません。
お気をつけください。



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「こんばんは、最上さん。」
「敦賀せんせ…」


『大学の先生』と聞いて、頭をちらりと掠めた人物に間違いはなかった。
他の先生方へ失礼にならなかった事に安堵し、蓮へは不快感が先に立つ。

何故勝手に「やめる」など話を持ってきているのか。


(これじゃあの人と一緒じゃない…!)


自分に興味を持ってくれない癖に、妙に自分の行動はチェックし、縛っていた母。


100点取ろうと生徒会に入ろうと、何一つ自分を見てくれる事はないくせに。
どうでもいい時だけ世間体を気にして怒る。
「つまらない子で」と言われる度に、自分の何を理解ってくれているの?と問うてみたくなった。


だけど、それはできなかった。
自分自身が、結局空っぽな人間だと気が付かされるだけだったから……


「本当に最上さんは素晴らしい学生なんですよ。このまま院へ進んで研究をすれば、世界でも名の通った学者になれると思います。」
「確かにうちの店でも本当によく気が利くし、話一つでも頭のよさが窺えて、人気なんですけどねぇ…」
「だからこそ、今が一番大事なときなんです。4年に進級すれば、さらに専門分野の深い部分を追求していく事になる。今はその分野選択をする段階なので、最上さんの才能を一番生かせる分野をしっかり見極めて判断してほしいのです。」


まるで自分が受け持つゼミ生であるかのように話を進めているが、彼は別のゼミ…と言うか、別の学科の准教授ではないか。

勝手な事をして!と、キョーコは眉間に皺を寄せて睨むも。
一見人畜無害そうに見える、彼の得意とする万人受けする笑顔は綺麗な顔立ちの蓮をさらに輝かせており。
銀座で長年勤めていて、男の扱いなら百戦錬磨のはずのママですらもうっとりと虜にしてしまっている。


この蓮の笑顔が作り物と気付いたのはいつだったか。
案外早い段階だったかもしれない。

学祭の準備で賑やかな秋、暇潰しで行った第二図書室で見かけた蓮はとても穏やかに微笑んでいた。


マニアックな書物が多すぎる為にあまり人のいない第二図書室は、分厚い本を枕に少し寝たい生徒が行くくらいで、滅多に人が寄り付かない。
キョーコもその日は、ずっと待っていた作家の新作に夢中になりすぎて徹夜していたので、静かに眠れる場所を探していたのだ。
だけど、蓮を見つけた瞬間にそんな眠気は吹っ飛んだ。

窓から降り注ぐ柔らかな光と揺れる白いカーテンを背景に、反対側の本棚を背もたれにして一冊の本を読む蓮はとても美しかった。
それは、その優しい表情を向けられる本に嫉妬してしまいそうなほどに。

後からその本を確認したら、童話を心理学の観点から読み解いた本だった。
蓮が童話…?と思うも、彼の先行分野の書物と言う事で納得できる。

もともとシンデレラや白雪姫と言ったお姫様の登場する童話が好きだったキョーコは、それからその本に登場する童話はすべて読み直した。
それ以外の、蓮が手にした心理学の書物にも興味が湧いて、そこから蓮の講義を聴講するようになったのだが……


「じゃあ、キョーコちゃん。今日はちょっと出てもらわないと亜美ちゃんもいないから困っちゃうんだけど…」
「体調が大丈夫であれば彼女の事です、出ると言いますよ。私も今日はいいと思うんです。」

「え…?あっ、待ってママ!私は…っ」


思考の部屋に閉じ籠ってる間に、いつの間にか完全に「今日で辞める」方向で話が決まっていたらしい。

ママと蓮の二人に見られ、ハッと気がついたキョーコは慌てて蓮の言葉を否定に走ろうとするが、どこから否定したらいいのか解らずに詰まってしまう。

その一瞬の間に蓮はするりと言葉を続けた。


「最上さんはまだ若いから目先の事しか見えていませんが、将来有望な学生です。説得最中にバイトを辞めさせるのは手荒な方法だとは思うのですが、とにかく彼女が自分の才能に無頓着なもので…」
「キョーコちゃんは本当に自分の魅力に疎いからねぇ…そこはわからなくもないですけど。」
「ま、ママ?!」
「まあ、そんな怖い顔で今お店に出るのもあれだから、ちょっと先生とお話してからいらっしゃいな。あとはみんな同伴だと連絡入ってるから、しばらく控え室には誰も来ないし。」


お店の方からママを呼ぶ声が聞こえて、ママはさっさと控室を出てしまった。

残されたのは、ニコニコ営業スマイルを崩さない蓮と、険しい顔のキョーコ。
先に口を開いたのは蓮だった。


「ほらほら…眉間にシワが寄ってるよ?」
「誰のせいですか、誰の。」
「まぁ、そんな顔も可愛いけどね。」
「ふざけないで!」


ニコニコと胡散臭い笑みを浮かべたままの蓮に、苛立ちばかりが募るキョーコ。
自然と声は大きく、荒くなっていく。


「勝手なことしないでよ。バイトは辞めないわよ!?私のことなんて何一つわかりもしないくせに…!!」
「解ってるよ。」
「わかるわけないわよ!!」
「解っているよ、大丈夫。」
「ふざけないでよ!!……もうそこ通して。私は店に出るの。」


ポーチを投げつけると腹が立つほどスマートに受け止められてしまい、更にキョーコの苛立ちは増すばかり。
店の方へ出たくて、控え室の入り口前に立つ蓮の脇を抜けようとしたのだが…

いきなり肩を掴まれ、側の壁へと押さえつけられてしまった。


「君の事は解っているよ…君が教えてくれたじゃないか。」
「私が?そんなのありえないですよ。だって先生とそんなこと話したことありませんから。」
「いや、確かに最上さんが教えてくれたんだ。忘れてるなんて酷いよね…そんな子にはお仕置きかな?」


「いつ教えたのか?」そんな記憶が全くないキョーコはただただ眉をひそめて悩むしかなかったのだが、蓮の『お仕置き』と言う言葉にハッと意識を蓮に戻した。
するとそこにはすでに妖しい雰囲気を纏った蓮がいて、昨日の情事を思い出したキョーコのからだは自然にふるりと震えた。




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どういうわけか、超長くなって分割に…!
ほんとすみませんすみません…




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