※この話は、夜はホステスな才女きょこたんと、同じく夜はホストの准教授蓮の組み合わせです。
完全パラレルです。
両片想いのすれ違い系が苦手な方にはあまりおすすめできません。
お気をつけください。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
翌日は、キョーコも蓮も朝から学校だった。
4コマも授業があったキョーコと、受け持つゼミの他には1コマしか講義のなかった蓮。
休み時間に一度だけすれ違ったが、キョーコは次の教室へ急いでいたし、蓮は相変わらず女子生徒達に囲まれていた。
お互い、ちらりと存在を確認しあったが、声をかけることもなかった。
(全く…あんなの、気にしてちゃダメよキョーコ…)
広いキャンパスの中庭で、可愛い女の子達に囲まれて笑顔を振り撒いていた蓮の姿に、チリリと胸の奥が焦げる。
昨日あれだけ自分の心もからだも翻弄しておきながら、今日は今日でもう違う女の子を物色…?
(何よ、それ…!!)
シャープペンシルを持つ手に無駄な力が入ってしまい、パキッと乾いた音を立てて細い芯がどこかへ飛ぶ。
板書をとっていたはずのノートに、ビッと穴が開くが、キョーコの思考はノートの上にも、そして教授がチョークを滑らせる黒板の上にも帰ってこない。
キョーコの頭を占めるのは、蓮の発した言葉とその表情。
そして、先程見た女子生徒達に囲まれての笑顔……
(やっぱり、嫌い…きらいキライ…!)
噛まれ吸われ、しっかりと残された鬱血痕は、全部タートルネックの下。
肘を付いていた左の手を、一番濃く付いていた喉元へと伸ばして擦る。
すると、まだ仄かに痛みを感じるような気がして、キョーコは小さく肩を竦めた。
その痛みは、本当に鬱血痕の痛みなのか、それとも心の痛みなのか。
キョーコには深く訴求するだけの思考は残っていなかった。
*
夜は先輩に頼まれて、予め店へ出る事が決まっていた日だった。
どうしても法事で帰らなければならない…そう言われれば、後輩の自分が断る理由などない。
店の5本指に入る先輩の休みとなれば、現在トップの座におかせてもらっている自分がその1日を代わるのは当然の事。
そうキョーコは思っていた。
「あわわ…すっかり遅くなっちゃった!」
さすがに4教科分の参考本やノートを持って銀座の街を歩く気になれなかったキョーコは、一度家へ戻り、荷物を置いてきていた。
着替えやすいように、前開きのシャツとスカート。
ぺたんこヒールは走りやすさ重視。
自宅方面からの通勤路である新橋駅地下のコスメショップで切れていた化粧品を買い込むと、階段を一段飛ばしで上がっていく。
すでに他の店のホステスが着飾って出勤していく中、キョーコは高速下のショップが犇めく中をすいすいと走っていく。
そして、その脚力を活かしあっという間に店の入った雑居ビルまで辿り着くと、すっぴんなのを気にして周りをこそりと確認し、すっとエレベーターへと乗り込んでいった。
普段なら駅のトイレなどで化粧をしてくるのだが、今日は化粧品に不足があった上、する時間がなかったのだ。
(も~…本当にあのおじいちゃん先生の話は長いんだから……)
5限の教授は高齢で、話が時々ループする。
だから基本的にこの曜日はバイトを入れないのだが…
だが、法事は本当に仕方のない事。
心の中で悪態を付きながら、従業員用の入り口からこっそりと控え室へ滑り込んだ。
そして一息つくと、メイク道具とヘアワックスを取り出す。
本当ならば、出勤の度にキチンと美容室へ行き、髪を結い上げてもらったりメイクを施してもらうのが一番なのだろう。
しかし、キョーコは一応苦学生の身。
金銭を稼ぐのが第一の目的ではないこのバイトだが、それでも今後何があるかわからない事を考えると、どうしても無駄遣いはしたくない。
器用な手先を持っているキョーコは、その道のプロに数度メイクを施されただけでやり方を覚えてしまった。
そして、それを真似る事でヘアメイク代を浮かせているのだ。
髪も、たまにはウィッグを着ける事もあるが、基本的には前髪を斜めに流して終了だ。
それだけでも幼めのキョーコの雰囲気は随分変わるし、ショートヘアーのホステスは珍しいらしく、評判がいい。
出勤の度に美容院へ通わなくて済むのは、キョーコとしては本当にありがたい話だった。
一通りのヘアメイクを終わらせて掛けてあるホルターネックのドレスを着込むと、鏡で確認をする。
すると、喉元から濃いのがひとつ、肩口からいくつかの鬱血痕が確認できた。
(これでもダメなの…)
自分が持ってる中では一番胸元が隠せる黒のドレス。
しかしこれでも目立ってしまう蓮の痕に、軽く舌打ちしたくなった。
こんなもの付けたホステスなんていない。
男の存在をちらつかせてしまったら、客が離れてしまうではないか。
本気の蓮の妨害にイライラしながら、キョーコはポーチから取り出したコンシーラーで痕を隠していく。
ひとつ、ひとつ。塗り潰して。
ひとつ、ひとつ。悦んでしまった自分を否定する。
「ああ、キョーコちゃんおはよう。」
すべてを隠し終わる頃、ママが控室へと入ってきた。
この店でキョーコを本名で呼ぶのはママだけだ。
初めて会った時の印象が強いからだそうだが…。
結い上げた和髪をいじりながら、大きな鏡でちらりと着物の崩れ具合を確認する。
そしてキョーコの方へ体を向けると、残念そうに声をかけてきた。
「そうだキョーコちゃん。学校大変なんだって?やめなきゃいけないのは仕方がないけど、それならもっと色々先に話してほしかったなぁ。」
「えっ!?やめ…っ?何の事ですか!?」
『やめる』だなんてキョーコ自身思ってもいない事だし、一言も話した事がない。
何故ママがそんな話をするのかわからない。
綺麗に形を整えたばかりの眉を歪ませ、キョーコの顔は険しい表情になってしまった。
「いえね?キョーコちゃんの大学の先生がいらしてね?院に進む為の大事な時期だから、学内一の成績を誇るキョーコちゃんの心配をすごくなさってたのよ。」「大学の先生……?」
「失礼します。」
不審にキョーコが思ったところでドアがノックされ、部屋へ入ってきたのは予想に違わずスーツ姿の蓮だった。
←赤ちゃんがえりの激しい3人(娘・息子・旦那←)を抱えるマックに愛のポチをお願いします…!
************
『高速下の』の第一変換が『拘束したの』でビックリ。
パソコンはおろか、携帯も恐ろしい変換ばかりで人様にお見せできません…((((;゜Д゜)))
肌身離さずが鉄則…!!!
新橋地下はダンスのレッスンに向かう時、随分お世話になりました。
スーツの鎧に混じって走る、ジャージ抱えたなんちゃってOL…←
順調に書ければ、次の回は別館のはずです。
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翌日は、キョーコも蓮も朝から学校だった。
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休み時間に一度だけすれ違ったが、キョーコは次の教室へ急いでいたし、蓮は相変わらず女子生徒達に囲まれていた。
お互い、ちらりと存在を確認しあったが、声をかけることもなかった。
(全く…あんなの、気にしてちゃダメよキョーコ…)
広いキャンパスの中庭で、可愛い女の子達に囲まれて笑顔を振り撒いていた蓮の姿に、チリリと胸の奥が焦げる。
昨日あれだけ自分の心もからだも翻弄しておきながら、今日は今日でもう違う女の子を物色…?
(何よ、それ…!!)
シャープペンシルを持つ手に無駄な力が入ってしまい、パキッと乾いた音を立てて細い芯がどこかへ飛ぶ。
板書をとっていたはずのノートに、ビッと穴が開くが、キョーコの思考はノートの上にも、そして教授がチョークを滑らせる黒板の上にも帰ってこない。
キョーコの頭を占めるのは、蓮の発した言葉とその表情。
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肘を付いていた左の手を、一番濃く付いていた喉元へと伸ばして擦る。
すると、まだ仄かに痛みを感じるような気がして、キョーコは小さく肩を竦めた。
その痛みは、本当に鬱血痕の痛みなのか、それとも心の痛みなのか。
キョーコには深く訴求するだけの思考は残っていなかった。
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夜は先輩に頼まれて、予め店へ出る事が決まっていた日だった。
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店の5本指に入る先輩の休みとなれば、現在トップの座におかせてもらっている自分がその1日を代わるのは当然の事。
そうキョーコは思っていた。
「あわわ…すっかり遅くなっちゃった!」
さすがに4教科分の参考本やノートを持って銀座の街を歩く気になれなかったキョーコは、一度家へ戻り、荷物を置いてきていた。
着替えやすいように、前開きのシャツとスカート。
ぺたんこヒールは走りやすさ重視。
自宅方面からの通勤路である新橋駅地下のコスメショップで切れていた化粧品を買い込むと、階段を一段飛ばしで上がっていく。
すでに他の店のホステスが着飾って出勤していく中、キョーコは高速下のショップが犇めく中をすいすいと走っていく。
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普段なら駅のトイレなどで化粧をしてくるのだが、今日は化粧品に不足があった上、する時間がなかったのだ。
(も~…本当にあのおじいちゃん先生の話は長いんだから……)
5限の教授は高齢で、話が時々ループする。
だから基本的にこの曜日はバイトを入れないのだが…
だが、法事は本当に仕方のない事。
心の中で悪態を付きながら、従業員用の入り口からこっそりと控え室へ滑り込んだ。
そして一息つくと、メイク道具とヘアワックスを取り出す。
本当ならば、出勤の度にキチンと美容室へ行き、髪を結い上げてもらったりメイクを施してもらうのが一番なのだろう。
しかし、キョーコは一応苦学生の身。
金銭を稼ぐのが第一の目的ではないこのバイトだが、それでも今後何があるかわからない事を考えると、どうしても無駄遣いはしたくない。
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この店でキョーコを本名で呼ぶのはママだけだ。
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結い上げた和髪をいじりながら、大きな鏡でちらりと着物の崩れ具合を確認する。
そしてキョーコの方へ体を向けると、残念そうに声をかけてきた。
「そうだキョーコちゃん。学校大変なんだって?やめなきゃいけないのは仕方がないけど、それならもっと色々先に話してほしかったなぁ。」
「えっ!?やめ…っ?何の事ですか!?」
『やめる』だなんてキョーコ自身思ってもいない事だし、一言も話した事がない。
何故ママがそんな話をするのかわからない。
綺麗に形を整えたばかりの眉を歪ませ、キョーコの顔は険しい表情になってしまった。
「いえね?キョーコちゃんの大学の先生がいらしてね?院に進む為の大事な時期だから、学内一の成績を誇るキョーコちゃんの心配をすごくなさってたのよ。」「大学の先生……?」
「失礼します。」
不審にキョーコが思ったところでドアがノックされ、部屋へ入ってきたのは予想に違わずスーツ姿の蓮だった。
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