※この話は、夜はホステスな才女きょこたんと、同じく夜はホストの准教授蓮の組み合わせです。
完全パラレルです。


この回は蓮キョ両方の目線です。
完全に誤解のきょこたんです。


両片想いのすれ違い系が苦手な方にはあまりおすすめできません。

お気をつけください。




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「………え?」


キョーコが再び目を覚ました時には、半分ほど開かれた遮光カーテンから橙の光が天井に眩しく零れていた。
更にだるく、重くなった頭を必死で働かせながら、キョーコは現状を確認する。

1DKの自宅よりも広いのではないかと思えるようなこの部屋は、やはり蓮の寝室なのだろう。

横たわっていてもわかる規格外の広さ。
そして自身が横になるベッドもまた、規格外。

きょろきょろと視線をさ迷わせて気づいたのだが、ベッドの端がかなり遠いのだ。
キングサイズ以上はある特注品だろうと、簡単に想像できた。
そして上掛けは、朝とは違うが肌触りのいい毛布。


(なに…?准教授ってそんなに偉いの……?)


いや、そんなはずはない。
自分の仲のいい准教授もそれなりにしっかりした身形ではあるが、しかし話をしていると生活はそれなりに大変そうだ。

研究に論文、時には学生時代から師事する教授の手伝い。
そして自分の生活。

よく24時間で動けていると思う。

と、ぼんやりしているとがチャリとドアが開き、蓮が入ってきた。


「おはよう。よく眠れた?」
「……どう考えても寝過ぎてますよね。」


しれっと挨拶の言葉など投げ掛けてくる蓮に少し腹が立ち、むすっと返事をする。
すると蓮はニヤリと笑った。


「もう寝たふりしないんだ?」
「酷い目に遭うとわかりましたからね…同じ過ちは繰り返さないんです。」
「ふーん…まあ、いいや。お腹空いただろう?買い物行ってきたから先にシャワー浴びておいで。」


ツンとした態度のキョーコはお気に召したのだろうか、蓮はクスクス笑いながら上掛けごと抱き上げた。
まさかお姫様だっこをされると思っていなかったキョーコは、思わず悲鳴を上げてしまう。


「きゃあっ!…なっ、何するんですか…っ」
「立つの大変だろうから、バスルームまで送ってあげようと思ってね。」
「誰のせいですか、誰の!」


自分を軽々と担ぎ寝室を出て廊下を進む蓮の胸を、キョーコは力がうまく入らない2本の腕で必死に押し退けようとする。


(私のことあれだけめちゃくちゃにしておいてこの余裕……何よ!!)


しかしあまりの倦怠感で押す力は弱く、そして抱える蓮の力は強い。
広い室内も何のその、長い脚は歩幅も広く、あっという間に目的地までキョーコを送り届ける。


「はい。ある物は何でも使っていいよ?バスタオルや着替えは洗面台にもう用意してあるから。」


浴室内に下ろされると、体にかかったままだった毛布が取り払われ、明るい浴室の光でキョーコの白い肌が露になる。
慌てて大事な部分を隠そうとするが、蓮はもう何も動じることなくキョーコの頭をポンポンと撫でると、そのまま浴室から出ていった。


「………何、あれ……」


パウダールームと浴室を繋ぐドアがパタリと閉じると、蓮のそのあっけない退出と全力でフルマラソンを走らされたような倦怠感から、ぺたりと座り込んでしまいそうになる。
昨晩からあれだけ何度も自分を翻弄していた蓮なら、この状況、自分に何か仕掛けてきてもおかしくないと思っていたのだが…

やはり気紛れで抱く女など、3度目はないと言うことだろうか。


(そうね、やっぱり貧相だものね……)


強く吸われ過ぎたために、深紅の薔薇の花びらのような鬱血痕が散りばめられたささやかな二つの膨らみを見下ろして、キョーコは溜め息を吐いた。

蓮ほどのルックスの持ち主であれば、どんな女性でもあっという間に落ちるだろう。
自分のような幼児体型など、きっと物珍しさから抱いたのだ。


そう、きっとそうだ。

そう………だからイヤ。


「…やっぱり、キライよ………」


頬を流れ、床へと落ち行く涙の滴が、ぱたっ…ぱたたっ…と広いバスルームに響く…そんな気がする。
内腿をつう…と流れる一筋の白濁すら憎らしい。


昨晩から散々泣かされていたのにまだ出るものなんだ。
キョーコは自嘲気味に笑うと、シャワーのコックへのろのろと手を伸ばした。


***


キョーコから引き剥がした毛布を持ったまま、蓮はダイニングキッチンへと来ていた。
自室の冷蔵庫は独り暮らしには大きすぎるほどなのだが、中身は基本酒と水。
稀につまみになりそうな物や頂き物の何かが入るくらいだ。

蓮自身は決して料理が出来ないわけではないのだが…
しかし大学の研究とホストの二足のわらじは、決して楽な事ではない。

顔には出さないが、体力的にも精神的にも強い蓮でも、結構しんどいと感じる時が多い。

加えて、料理が得意でない母を持った事と元来食に無頓着と来ている。
故に彼の食事事情は、もっぱら外食か、カロリーなんちゃらに始まる栄養補助食品で終わってしまうのだ。

ドアを開くと、一番手前には買ってきたばかりのサラダ。
パックに入ったままでは見た目がよろしくないので、取り出すと先にテーブルに用意していたボウル皿に盛る。
彩りに華を添えるかのような真っ赤なトマトを一番上に置き、クロワッサンを焼く為にオーブントースターの用意をする。


『―――ありがとう、コーン…っ!』


トースターの橙とも赤ともとれる色を見て、ふとあの日の事を思い出す。

あれは、キョーコの中では簡単に忘れてしまえる出来事だったのかもしれない。
確かに当時の彼女は幼かったし、彼女の中で既に王子様は決まっていた。

だけど…10も年が離れ、既に思春期特有の反抗期に入ってやさぐれていた蓮にとっては、その出会いは日本に来てから…いや、生まれて初めて身体中を電流が流れるような衝撃をもたらしていた。


「…キョーコちゃん。」


トースターにパンを入れて、タイマーをじじじと動かす。

自分だけが思い出にしがみついている現状が、切なくてもどかしくて腹立たしい。


蓮はキョーコを包んでいた毛布を持ち上げるとそっと抱き締め、その毛布に顔を埋めた。




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完全なるすれ違い。

さすがに歳の差4つで准教授にはなれないので、今回10歳違いになりました(それでも蓮さん准教授にしては結構若いはず…)





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