掃除中もずっと側に置き続けたリモコンでエントランスの客人を確認すると、それはやはり最上さんだ。

最新式のインターホンを取り入れてるとは言え色味の薄い画面の向こうに、最上さんの少し戸惑った表情が映っていた。

「いらっしゃい、最上さん。すぐ開けますね。」
『えっと…こんにちは』

インターホンに向かったまま、ぺこりと頭を下げる最上さん。
礼儀正しい彼女の美しいお辞儀では、あっと言う間に画面の外に彼女が消えてしまう。

そのままリモコンでドアを解除して開くと、頭を戻した最上さんは再び画面の外へと消えていった。

俺の家は最上階。
エレベーターが上がってくるまで、少し待たなければならない。

しかし、その僅かな時間すら最上さんを視界に入れられない事が惜しいと感じてしまう。

(どうしよう、エレベーターホールまで迎えに出てたらおかしいよな。でも少しでも早く会いたいし…)

ひとまず自室の最終確認に入り、ぐるっと見渡す。
そしていつも以上に綺麗に片付いている事を確めると、そのまま姿見で自分の身だしなみチェック。

今日は重ね着に見えるデザインシャツを1枚さらりと着、下はクリーム色のパンツ。
シャツが濃い色だから、自分なりに一応バランスをとったつもりだ。

うん、たぶん大丈夫なはず。

じゃあ今度こそ玄関へ……と、自室の扉を閉めたところで今度は玄関のチャイムが鳴った。

思ったよりも早かったその知らせに、廊下を歩く足が自然と早くなる。
普通の家より規格外に広く長いはずの我が家の廊下に、思わず舌打ち。

ガチャリと玄関のドアを開けると、少し緊張した面持ちの最上さんがそこにいた。

「こんにちは、久し振り…ですね。」

何も始まっていないうちからこんな緊張されていたら、こちらとしても何も出来ない。
当たり障りない挨拶を述べ、さぁどうしよう…と思ったところで、彼女が口を開いた。

「敦賀くんの家って、やっぱり凄いのね…最上階ワンフロアーだなんて聞いてなかったわよ?」
「え?」
「マンションだって立地いいし、高級の部類に入るし…」
「まぁ、両親の仕事は前にお話しした通りですからねぇ。規格と言うか、枠の中に収まるような人間じゃないので。」
「聞いてたけど、お家の情報ももっと聞いておくべきだったわ。入るのに心の準備が必要だったわよ…」

ああ、この緊張は住居に対してで、俺と二人っきりでどうしようか…などと言う類いの物ではなかったのか。

身構えられて何も進展なしよりはいいのだが、同時に未だ『男』として見られてる感じが薄くて、ホッとすると同時にがっかりした。

ちゃんと『異性』として認識してもらえていた事は、この夏既に確認済なのだが。
一緒にいても『友達』の部類に入りそうなライトなお付き合い。

昔の『彼女』達のようにベタベタしてくる事のない最上さんに、俺ばかりが『好き』なのかと落ち込まされる事はしょっちゅうだ。

「合宿のお土産買ってきたんだけど、もっと豪華なのにしたらよかったかしら…」
「お土産とか別にいいって言ったのに…本当に大丈夫なんですよ?うちは……」
「うん、でも敦賀くんのご両親に渡るものでしょう?それならちゃんとしないと。
今回お土産選ぶのがね、とっても楽しかったの。あと何日で敦賀くんに会える~って思ったら、ワクワクしちゃって。」

ふふ、と可愛らしく笑う最上さんに、俺は瞬間『やられた』と思った。

どうしてこの人はいつも俺の気持ちを簡単に浮上させてくれるんだろう。

俺の家へのお土産選びが楽しい。
俺に会えると思ってワクワクしてくれる。

たった二言三言のその言葉が、『俺ばかりが好きなんじゃ…』という弱気な気持ちを吹き飛ばしていく。

こうしてどんどん最上さんの事を好きになって、そのうち俺の心の中は最上さんしかいなくなるような…『ハマって』しまえる自信があった。

「あの、俺も最上さんに会えるの楽しみにしてました……」
「本当?嬉しい…」

ピンクに染まっていく頬が、会えない間思い描いていた以上に愛らしくて。

思わず腕を伸ばしたところで、何故か玄関のドアが開いた。




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あら、まだ玄関でしてよ!
内面書いていくと超長いですね。
これ一体何話になるの…!?((((;゜Д゜)))コワイヨー

そして某掲示板やマスター様方の所でネタバレ読んで「ああ!血が騒ぐ!」…とはなっているものの。
入れないんですよー、ピグに!!←ピグどころか庭もだけど
みんなと喋れないじゃん!orz
本誌の熱い話をかれこれ4ヶ月くらい連続で出来ていなくて、さすがに心が折れてます(´Д`)
やさぐれちゃうわ。