こちら、ずっと前にチカさんから頂いたリク『子供にメロメロな蓮様が、幼稚園戦争に参戦する姿を見たい!』を形にしたシリーズです。

幼稚園戦争…まだまだ全然先の話になってますが、のんびり亀更新にお付き合いいただければと思います。

週1で更新していきたいと思ってます。


゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆My Sweet Home*Page2『定番の台詞(新婚編)』゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆



がチャリと玄関のドアを開けると、途端に美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
蓮の口角は、自然と上を向いた。

どんなに遅い帰りになっても自分を出迎えてくれる、この美味しいご飯の匂いが蓮は好きだった。

それと一緒に、小走りで出迎えに来てくれる可愛らしい新妻も…


ぱたぱたぱたとスリッパの音が広い廊下に響き、白いフリルのエプロンをつけたキョーコが玄関までお出迎えに来た。

「お帰りなさい、蓮…っ!」
「ただいま、キョーコ。」

ぱぁっと明るい華やかな笑みを溢す愛妻を見て、一日の疲れを溜め込んだ心がふわりと軽くなっていくのを蓮は感じた。
上着を預かろうと差し出された手を引っ張り、自分の元へと抱き寄せて啄むような軽いキスをたくさん贈る。

「…ふふっ、蓮ったら甘えんぼさんねぇ。」
「別に、『ただいま』のキスは普通だと思うんだけどねぇ。」

ぎゅうと力一杯抱き締めると、キョーコは真っ赤な顔をしてそろそろと細い腕を背中に回した。

毎日毎日こうして帰宅の儀式を繰り返すのに、まだ同居を始めた頃のように恥ずかしがるキョーコの事が、蓮は何とも愛おしく感じていた。
同時に、彼女と重ねるこの日々も、愛しくてたまらない。

溢れる愛情を伝えたくて、蓮はすぐそばにある旋毛にまたキスを贈った。





「ご飯はもう用意できてるの。先にお風呂入ってくる?」

しばらく玄関先で抱き締めあった後、キョーコは蓮から上着を預かりながらいつも通りの質問をする。
しかし、蓮は「うーん」と一言唸ったまま黙ってしまった。

その小さな間にキョーコは不安になる。

「えっ?どうかした!?ご飯を先にする?」
「いや、そういう事じゃなくてね?一度でいいから聞いてみたいなぁって…」
「ん?何を??」

「『お帰りなさい、あなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも私?』って。」
「……はい?」

キョーコは一瞬、思考回路が止まった気がした。

(もーっ、どうしてそう言う余計な知識をすぐ仕入れてくるんですかぁ!)

「だって、新婚の定番の台詞なんだろう?そう教わったよ。」
「そんな台詞、定番な訳ないじゃないですか!誰ですか、そんなこと言った人は!?」
「えー、社さんが教えてくれたよ?今日のロケで貴島くんもスタッフの皆も言ってたから、普通なんだと思うよ?」
「社さんたら……!」

普段は自分達の事を応援してくれる、一番の理解者なのだが…
交際する前からそうだったが、とにかく恋愛事に関しては女子高生並みに騒がしいのだ。

ありがたいと思いつつも、キャーキャー騒ぎ立てたりこう言う余計な事を蓮に教え込む事は、本当にやめてほしいとキョーコは呆れていた。

「もぉ、今度会ったら抗議しなくちゃ…」
「でも俺はその台詞、ぜひ聞いてみたいんだけど。」
「聞いてみたいって…」
「駄目?」

蓮が首を少し傾げると、濃茶の髪が艶やかにさらりと流れる。
その首をかしげる様が、きょとんとした表情が。
キョーコのときめきスイッチを激しく刺激した。

(~~っ!だって、そんな聞く前から答えのわかってる質問しても…!あぁ、でもおっきなワンコが背後に見える……)

過去に『ヒール兄妹』として過ごした頃から、キョーコは蓮のこのワンコ攻撃にめっぽう弱い。
蓮もそれをわかって、この技を繰り出しているのだが……キョーコはそれが、意図的な物であるとは気付いていない。

結局、今回もキョーコが負けた。

はぁ、と一つため息を吐くと蓮から体を少し離し、頬を染めながら蓮に尋ねる。

「…『お帰りなさいあなた。ご飯にする?お風呂にする?それともわた』」
「キョーコがいい。」

キョーコの言葉を最後まで聞かずに蓮は即答し、お姫様抱っこでキョーコを担いだ。

「きゃっ!なに…!?」
「え?キョーコを一番最初にいただこうかと思って。」
「もおぉーっ!ちゃんとご飯食べてくれない人は嫌ですうっ!」

ぷりぷり怒りながら広い胸をぽかすかと叩くキョーコを抱え、蓮はすたすたと廊下を進む。

「クス、冗談だよ。キョーコの事はデザートにとっておくよ。でもせめて、リビングに入るまではこのまま抱っこしてたいな。」
「…寝室まで行ったら嫌ですからね?」
「善処します。」

叩く手を止め、首に腕をまわしてくれたキョーコの頬にキスを一つすると、蓮は広い我が家の廊下を突き進んでいった。

その行き先が、本当にリビングで落ち着いたのかどうかは………




新婚さんな二人だけの秘密のはなし。




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これは、大学の腐れ縁が「男はみんな憧れるんだよー!」と熱弁を振るっていた事をふと思い出して。

奴も今は愛娘が生まれ、デレデレパパになりました。
新婚当時、この台詞は無事に言ってもらえたんだろうか…

いや、あそこのお嫁さんはSぽいから言わなそうだ( ̄▽ ̄;)