うっかり後編…


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『それが恋の前兆さ』

いつだっただろうか。

鶏の格好をした自分が敦賀さんに放った言葉が、頭の中でこだまする。





「ねぇ…最上さん。俺も最近ね、似たような症状が出てるんだ。」

ずっと雲に邪魔されていた日光が、再び地面を照らし始めた。
おかげで、目の前のガラス面に敦賀さんの顔が写りこむ。

…思った通り。
目深に被った帽子の下からは、神々スマイルが私に向けられていた。

ガラス越しにかち合う目線に、勝手に胸が熱くなっていく。

―――もしかして。…もしかして。
自惚れバカ女にはなりたくないんだけど。
その笑みを向けてもらえてるってことは…

その症状は、私に対して出てるんですか…?

「………そ、れは…たいへんですね…」

カラカラの喉ではまともな声が出なくて、擦れた声になってしまった。
慌ててこくんとつばを飲み込む。

「誰に?って聞いてくれないの?」
「だって、言いたくない場合だってあるじゃないですか…」
「最上さんだけには聞いて欲しいかな?」

何だか変な言葉のやり取り。
だけど自惚れて勘違いして、それで膨らんだ期待を凹まされるのなんてまっぴらごめんだわ。

黙っていると、そっと敦賀さんの口が耳に寄せられる。
かかる息がくすぐったい。

「……最上さんだけだよ。こんなにドキドキするの…」
「…っ」

決定打を打たれて、ひゅうっと空気を吸い込んで呼吸が止まった。
体がカッと一気に熱を持つ。


そんな事言われたら…もう認めるしかないじゃないですか。

自分のこの気持ちも、この熱も。
貴方のその気持ちも言葉も全部。


貴方はいつもそうやって、人が何重にもかけた心のカギを吹き飛ばしていくんだから…!

「それ…本当ですか。」
「本当だよ?嘘言ってどうするの。」
「本当に本当ですか?」
「本当だよ。」
「本当に…?」
「うん、最上さんが好きだよ……」

抱き締める腕に、よりいっそうぎゅうっと力が籠るのを感じた。

からだが今までにないくらいぴっとりくっつくことで、敦賀さんの心臓の音が分かるようになる。

〈どくん、どくん、どくん………〉

私と同じくらい、大きくて速い音。
私と、同じ気持ち…

同じリズムを刻む鼓動に、何故かドキドキが止まらないのにホッとする。

「わたしも、好き……かもしれないです。」
「うん、それは最上さんなりの『好き』って事だよね。ありがとう。」

旋毛にふにんと柔らかい感触が降りてきた。

これって、敦賀さんの……

(くくくくくちび……!!)

「ねぇ、あそこの男の人帽子被ってるけどかっこ良さそうじゃない?」
「ってか、敦賀蓮に似てない?」
「うっそ!女の方誰!?」

その時、遠くから女の子達の声が聞こえてきた。
ハッと気がつくと、周りに人が集まり出している。

…敦賀さんがバレちゃう!!

(つっ、敦賀さんダメです!バレますよーーっ!!って、バレたら私の命が終わる…っ!)

バレてしまった後の、阿鼻叫喚の地獄絵図を思わず想像し、一気に冷や汗が出てきてしまう。

敦賀さんは女の子達の声が聞こえたのか、それとも私があわあわしだしたのに気が付いたのか、急に体を離すと手を引っ張ってぐいぐいと歩道を突き進んでいく。
どこへ行くのかと思ったら、ふたつ先の人通りの少ない道に敦賀さんの車が停まっていた。

(あ…そうよね、車で移動してるわよね。)

さりげなく助手席側の扉を開け、エスコートされるままに車へと滑り込む。
扉を閉めた敦賀さんはすぐには乗り込まず、一本だけ短い電話をかけてから乗り込んできた。

「社さんにお願いして、この後の予定ずらしてもらった。」
「……は!?何をおっしゃってるんですか?お仕事に穴開けんですか!?」
「やだなぁ、穴なんて開けないよ。ただせっかく想いが通じたのに、このままお別れなんてイヤでしょ?だからちょっとだけ…ね?」

『ね?』と言いつつ首を少し傾げる敦賀さん。
にっこり無邪気に笑うその表情がちょっと可愛らしいかも…とか、うっかり思っちゃったんですけどー!!

「~~~っ!もぅ、ちょっとだけですよ…お仕事ちゃんとしない人は嫌いですからね?」

『可愛い』なんて思っちゃったのが悔しくて、ぷくぅっと頬を膨らませて顔をそらす。

「勿論、ちゃんとお仕事はしますよ?でも今はまず最上さんとドライブね?」

クスクス笑いながらキーに手をかける敦賀さん。

「あ……忘れてた。」
「え、何をですか?」

そのままをエンジンをかけるかと思ったら突然の『忘れた』の一言に、膨らました頬を戻し、敦賀さんの方に顔を向ける。

すると、ちゅっと唇に柔らかい何かが当たり、ハッと焦点を合わせると敦賀さんの顔がすぐそばにあった。

「…………○▲×◇※&☆◎〒♯!?」
「うん、これからよろしくね?俺の彼女さん。」

ビックリしすぎて声にならない声をあげる私を見て、にっこり笑う敦賀さん。


そんな貴方は、今日から私の彼氏…さん?




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終わろう。
頭痛がやまないから終わろう←

明るい太陽の下での創作は、マックには似合わないと言うことが判明しました。
(普段は深夜帯に真っ暗ベッドでポチポチ派)

そして知り合いが案外並んでるので、本も読んでられないことがわかりました。
…耐久レースは24時間を切ってるし、頑張ろう。