敦賀さんで始まって、敦賀さんで終わる毎日。

でもこの関係は、敦賀さんのネームバリューに私が押し潰されない実力を付けるまでは内緒という約束をしていた。


だって私がそう頼んだから。

公表したいと渋る敦賀さんを、大々的に愛を叫びたい社長さんを納得させるのに、一番良い言い訳だったから。



だけどそれは、ある日突然やって来た―――






いつもなら、夜だるまやの前で待ち構えているお姉さんが、今日は校門前で私を待っていた。

「京子ちゃん、これってどういうこと!?」

バサリと投げつけられたA4の茶封筒から飛び出してきたのは、車の中でキスをする人物を写した写真数枚。

上にある2枚は、助手席に覆い被さる人物の頭で誰なのかまではわからない。
しかし……その後ろに控える数枚には、登場人物の顔がはっきりと写し出されていた。

先週「少しだけドライブして帰ろう」と、敦賀さんに誘われて行った公園。
脇に止めた車の中でキスを仕掛けられ、大変だったあの日の記憶がそのまま記録されていた。

「どうして……」

バレた………!!

頭の中にハッキリと浮かぶのはこの文字だけ。
体から血と体温が、一気に抜けていくような感覚に襲われる。

「デートスポットを取材してた先輩が偶然撮ったのよ。そしたら敦賀くんと京子ちゃんじゃない!
京子ちゃんはじめに言ってたよね?『もう恋はしない』『敦賀さんは尊敬する大先輩』って。」
「それは……」

それは本当のことだった。
初めてお姉さんに会って、『敦賀くんとどういう関係?』って聞かれたときは、本当にそうだったから。

「私がこの仕事にいかに賭けてるかは知ってたよね?これ、モノにしないといつまで経っても下っ端扱いって……なのに黙ってたの!?平気な顔で相談に乗ってたの!?」
「ごめんなさい…でもはじめの頃はほんとに…」
「嘘つきっ!」

遮るように吐き捨てられて、固まってしまう。

そうよ…私、お姉さんの話を聞いておきながら黙ってた。
友達になれた感覚でいてしまった。

でも、お姉さんにとっては、これはお仕事。
私たちはオトモダチじゃない………

お姉さんはバラバラになった写真をそのままに、走って行ってしまった。

私は追いかけることも声をかけることも出来なくて…ただただ、遠ざかる背中をぼーっと見送ることしか出来なくて………

「最上様、大丈夫ですか?」

ふと我に返ると、社長さんの執事さんが私の足元に散らばったままの写真をしゃがんで拾い集めてくれていた。

「あ…すみません。」

体に力が入らない。
何で自分がここに立っていられてるのかもわからないくらい、体の感覚が遠い。

本当は私が拾わなくちゃいけないのだけど、しゃがんだら最後立ち上がれなくなりそうで。
お礼を『声』として、音にするのが精一杯だった。

「何故貴女が謝るのですか?謝ることはありません。
…社長がお呼びです。お迎えに上がりました。」

執事さんは全て写真を拾い終わると、すっと立ち上がり、そのまま私に向かって深々とお辞儀をする。

……そうよね、きっとこの写真の件について聞かれるのよね。

これから死刑宣告を受けに行くようなどん底の気分を味わいながら、私は執事さんが運転する車に乗り込んだ。



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実はこの場面のためだけに、あのお姉さんは登場☆

ピンクのキョーコはうじうじちゃんで、書いてるこっちが若干イラッと来たり←ダメじゃん。
ダメな人はダメかもね。
ごめんなさいー。