ぎゅうと抱き締められたまま、キョーコは何と答えるべきか迷ってしまった。

(敦賀さんのことは好き……かもしれないけど、でも好きだとどうするものなの?)

「……まだ俺のことは信じられない?社長に言ったんだって?『俺が自分のことを好きなはずがない』って。
なら、俺は信じてくれるまで何度でも言うよ?
俺は最上さんが好きだよ。君しかいらないんだ。だからいい加減、俺に落ちて?」

ずんぐりむっくりとした『坊』の体の中にある、キョーコの元まで想いが伝わるように、蓮の腕に更に力が入る。
ぎゅうぎゅうと抱き締められ、キョーコはドキドキと鼓動が強くなるのを感じながらも、ここがテレビ局の廊下であることを思い出すと突然暴れだした。

「つ、敦賀さん!ここテレビ局の廊下…!ダメですってこんな場所じゃ、スキャンダルになっちゃう!」
「ん?いいよ、最上さんとなら何でも嬉しいもん。」
「『嬉しいもん』って…!?やぁもう離してくださいーっ」
「じゃあ言って?俺のこと『好き』って。」
「そっ!それこそスキャンダルの大元です~~~っ!!」
「じゃ、離さない。」
「~~~~~~~っっっ!!!」

端から見れば完全にバカップルのいちゃつきなのだが、遅い時間が幸いしたのか、今は周りに誰もいない。

蓮からしてみれば、最高のタイミングでの捕獲成功なのだ。
このチャンスを逃すはずはなく、思う存分キョーコを抱き締めその言葉を待つ。

「……つ、敦賀さんのことは…『好き』……デスヨ。あ、でもだからどうしたいとかはないんですけどっ!!」

観念したキョーコは小さな声でぽつりと『好き』と言葉にするが、しかしその後は倍以上の大きな声で思いっきり『お付き合い』に関することを否定する。

「え、それは困ったなぁ…」
「へ?何が困るんですか??」
「だって俺は最上さんと付き合いたいよ?一杯抱き締めたいし、キスしたいし、出来ればその先も許されたいなぁ……」
「ぎゃあぁ!何て破廉恥な発言をなさるんですか貴方は!!」

局の廊下と言う公衆の場でさらりと(キョーコにしてみれば)破廉恥な発言を述べる蓮に慌てふためくキョーコ。
蓮はクスクス笑いながら、キョーコのつむじや額、こめかみにキスを落としていく。

「も、もうダメですって!破廉恥な敦賀さんなんて嫌いですっ!」
「駄目駄目ばっかりだね、最上さん。やっと捕まえたんだから、今は黙って……ね?」
(ひぃ!何故ここで夜の帝王~~~~っ!?)

いきなり妖しい雰囲気を纏った蓮に、キョーコはビックリしながらも、両頬に添えられた手の温もりに動けずにいると、そのままそっと蓮の顔が近づいてきた。

〈ぱぱぱぱーーん!!!〉

あと数センチで唇が触れ合う…というところで鳴り響いたのは、この時間には迷惑でしかない音量のファンファーレ。

びっくりした二人が体を一気に離すと、何故か黄金の人力車に乗ったローリィがやってきた。

「よーぉ、二人ともお疲れさん!!」
「「しゃ、社長(さん)…!?」」

にんまりと笑う社長の出で立ちは、なぜか紋付き袴。それも黒。

「記者会見で主役よりも目立つわけにはいかないからな、黒を着てきたんだよ。」
「…は?これから何かあるんですか?」
「決まってるじゃないか!お前たち二人の交際会見だ!!」
「「はあぁ……!!??」」

頭にクエスチョンマークが飛び交う二人をよそに、ローリィは熱く語り出す。

「やっぱり熱く想いあう二人が付き合うのだからな、こちらとしても目一杯サポートしていきたいんだよ!←要は遊びたいだけ。
それに今の二人は業界内でも礼儀正しいと有名なんだ、セットで売り出してラブラブっぷりを見せつけたらどんなに愛がすばらしいものか世間に知らしめることができるではないか!………」

「………最上さん。」
「………何でしょうか、敦賀さん。」

自分の世界にはまりこみ、熱苦しく語るローリィの前で、二人は顔を見合わせる。

「……逃げようか。」
「そうですね。」

二人とも、お互いに考えていたことが一緒でくすりと笑いあう。
そして、手を取り合うと一緒に廊下を走り始めた。

「あっ、こら!まだ俺の話は終わってないぞ!?」
「嫌ですよ、まだ婚約会見は早いですって。」
「えええ!何でもう婚約なんですかぁ!?」

ローリィが気付いて追いかけてくるが、二人は言い合いながらも仲良く手を繋いで逃げて行く。


TBMのフロアーには、ぷきゅぷきゅぷきゅと、不思議な音が鳴り響いていた。



――――さあ、次のゲームのスタート……かな?



〈fin.〉


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わーい!罠脱出よー♪
まずは一つ!うーふーふーw←やっしーのどら○もん風

うかポロ発言により、全身どぼんになった一番の原因の罠でしたが、思いの外あっさりさっぱり楽しく書けてよかったです♪

まぁもうギャグですから!
よそ様の素敵文章なんかと比べずに、あははと笑い飛ばして読んでいただければ結構です!
何故かseiさんの罠って、全力で笑いに走ろうとする傾向がある気がする……
まぁマックの全力なんてたかが知れてるのですが(。≧∇≦。)アイター
次は普通です!普通の予定です!
何せピンクを進めたいと思ってますから!
罠抜け強化月間、がんばります☆