「ねえ、…最上さん。」
「何でしょうか、敦賀さん。」
「二人で楽しもうって言ってなかったっけ…」
「まぁ、そうなんですけどね……」

『今夜は流し素麺をやりましょう!』と言っていたのは彼女。
しかし、何故か突然社長宅へと連行され……
大々的な流し素麺パーティーに、強制参加させられている。

流すレーンは竹を半分に割って作った本格的なもの。
『まずは形から入るべきだ!』と、強引に浴衣に着替えさせられて。
手に持たされたのは、めんつゆがキラキラ透けるガラスの器と箸一膳。

そうして放り込まれた会場内で、同じように浴衣に着替えた君を見つけた。

「まあ、相変わらずやることがすごいと言うか。」
「本当ですよね…これ本物の竹だし、いつ会場セッティングしたんでしょう。」

「蓮様~!お姉様~!」
「キョーコ、始まるわよー」
「あっ、はーい!今行くねー」

流されるレーンのいい位置に陣取っている、マリアちゃんと琴南さん。
社さんもすでにそっちでスタンバイ済みだ。

二人っきりで楽しめないのは残念だけど……

「ね?敦賀さんも一緒に行きましょう?」

満面の笑みで浴衣の袖をつんつんっと引っ張る君が可愛くて。
こんな笑顔も堪能できるのなら、みんなで一緒に夏を締め括るのもいいかもしれない…なんて思うんだ。

「ねぇ、最上さん?」
「何ですか?敦賀さん。」

キョーコにだけ聞こえるように、こっそり耳打ちする。

「来年は、キョーコと二人っきりでやりたいな。」
「…っ!もうもう!今言うことですか、それ!」

とたん顔を真っ赤にしてぷりぷり怒る姿も可愛くて、ついクスクスと笑い出す。

すると、『お返しです』と言わんばかりにぐいっと肩を引き寄せられて、こっそり耳元で囁かれる。

「…私もですよ。」

ふいに鼓膜を揺らす声は、これからの未来も約束してくれるみたいで、今度は俺の顔が熱くなる番だった。


それは、君と約束する魔法。


来年だけじゃなくて、この先もずっとその笑顔を独り占めしたいから。

今はみんなで楽しもう?

この夏が終わるのを、みんなで一緒に惜しもう。



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最初に夏のシリーズもの書くって決めたときから思ってました。
「締めは流し素麺!!」と………
そしてローリィが邪魔するに違いないとwww


本当は他にもいっぱいseiさんが食べ物あげてくださっていたのですが(素麺もseiさんからいただきました☆)
さすがに9月に入っちゃうとネタとして旬じゃなくなるのと。
前のシリーズが6話で一括りとなっていたので、こちらも6話で締めてみたいと思います。


インスピレーション一本勝負で冷や冷やものの『まほうシリーズ』ですが、それでも皆様に「この二人が好き!」と仰っていただけて大変嬉しいです。

本当にありがとうございます。