海を眺めている最上さんにそっと近寄ると、あと数メートルというところで最上さんの方から俺に気がつき、振り返った。

日が落ちる時間がだんだん早くなってきている。
前に来た時と大して変わらない時間だと思うが、今日はすでに太陽の日が波をオレンジ色に染めていた。
最上さんの白いコットンワンピースもほんのりオレンジ色だ。
パフスリーブが可愛い、インディゴの短丈のデニムジャケットがよく似合っている。
夕日を背に受ける彼女を見るのは2回目だが、そのときとは違って、今日は表情が固かった。

「……最上さん。」

声をかけたはいいけれど、何を言ったらいいのかわからない。
話のきっかけが掴めないまま、暫く沈黙が続く。
その無言の時間が耐えられなくて、先に言葉を発したのは俺だった。

「あの…ごめんなさい。」
「何がごめんなさいなの?」
「その、昨日の事………」

『昨日の事』という言葉で最上さんはピクリと反応した。
少し俯いて目を伏せられると、そんなに嫌だったのかと気持ちが沈んでいく。

「………そうね、それに関してはちょっと怒ってるわ。だって私、ファーストキスだったし………」
「ごめんなさい。好きな人がいるのにあんな事して…あれは事故です、なかった事にしてください。本当に好きな人とした時に、それを1回目ってカウントしてください。」
「え!?ちょっと待って!本当に好きな人って?」

最上さんは『突然何を言い出した!?』と言わんばかりに、怪訝そうな声を出した。

「だって最上さん好きな人いるって聞いたから…」
「え?…ええ、まあ、そうなんだけど……」
「だったら初めては好きな人とがいいですもんね。だから、俺の事はアリクイに噛みつかれたとでも思って…」
「ちょっと待って?別にアリクイだなんて…何でそうなっちゃうの?」
「?だって、最上さんはリックが好きですよね?」
「うんと………まず、どうしてそう思ったのか聞いてもいいかしら?」
「だって相手は『本当は好きになっちゃいけない人』で、『素敵な人』なんですよね?この間、リックと一緒にいる所見て…最上さんすごくいい顔してたから。
リックには彼女がいるけど、想うだけなら問題はないじゃないですか。だから…俺も、最上さんにずっと片想いします!」
「……へっ!?」
「想われるだけでも重たい男だとか思うかもしれないですけど、別に片想いでもいいですから!それくらい、俺は最上さんの事好きですから!
えっと…だから、好きでいることだけは許してもらえませんか………」

何だか思っていた言葉と全然違うような気もするのだが。
だけど、リックにはどうあがいたって敵わないから。
だからせめて、想いを知ってもらって、バイトが終わった後も時々会ってもらえたら……
最上さんの心の中に小さくてもいい、『俺』という存在を残してもらえたなら。
いつか『素敵な人』になった時に、もう一度「好き」と伝えさせてもらえるだろうか?

最上さんはビックリした顔のまま固まっていたが、しばらくして小さな声で俺の言葉を否定した。

「…………そんなの、ダメよ。許さないんだから……」




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あ、あれ?
これ書きたかった場面のはずなのに、何かが違う。
山場で大転け???
うそーんorz
言葉って本当に難しい。
どこかに文才と自信売ってないですか……!?