「あの…メイク、あと口紅塗るだけだから大丈夫よ?」

パレオを腰に巻き付け終わった最上さんが、テンさんが持ってきた鏡の前に座り、俺の手にある口紅を見た。
最上さんが動く度に、ゆらゆらと揺れるエメラルドの裾から覗く白い脚が綺麗だ。

「あ…メイクに関しては小さい頃からテンさんに弄られて来てるんで、腕前はそこそこですよ?母も一応モデルなんで……」
「えっ?お母さんモデルさんなの?」
「そうなんです。テンさんが一時期専属してて、一緒に付いていっていた俺もメイクされたりしてたんですよ。」
「敦賀くんが?メイク?……ぷっ!」
「ちっ、小さい時の話ですよ!?大きくなってからはさせてませんよ!」

口元を押さえて吹き出してしまった最上さんに、恥ずかしさがぐわんと襲ってくる。
そう、小さい時の話なんだけど…こんなに笑われると照れ臭くてたまらなくなってしまう。

「もう、最上さん…!さっさと塗って終わらせましょう!もう開店時間になりますよ。」
「あははっ…はぁ。ごめんね、笑っちゃって。じゃあ、お願いします。」

恥ずかしさを誤魔化すためにリップブラシを手に取り、最上さんの前に不貞腐れた風を装って立つ。
最上さんは笑ったために、少し涙目になってしまった目元を指先で拭うと、ふぅと一呼吸で息を整え目を閉じた。

目元は既にシャイニーブラウンのアイシャドウが施されている。
口紅は目元と水着、そしてパレオの色を邪魔しない、控えめなローズピンク。
キャップを開けブラシを口紅のトップに滑らせて、色を分ける。
ブラシにしっかり色がのったら、今度は最上さんのふっくらとした唇の輪郭をなぞり、艶を演出する準備を始めた。
唇の端から中心へゆっくりとリップブラシを動かすと、女の子らしいぽってりとした唇はブラシに押されてふにふにとその柔らかさを俺の手に伝えてくる。

口紅を塗るために、今朝ほどではないが至近距離に寄せたその顔。
線をはみ出させない為にそっと顎を支える手が、こっそり震えそうになる。
その手が触れる白い肌は、とてもきめ細かく触り心地がいい。
ほんのり乗せてあったパールピンクのチークが、女性らしい丸みを見せる頬によく似合っている。
綺麗に彩られた目元と頬を間近にし、最上さんはやっぱり本当に大人の女性なんだと痛感した。
先日の琴南さんの発言がいまだに尾を引いている。

「……はい、出来上がりです。確認してみてくださいね?」

最後にグロスまで軽めにポンポンとのせてメイクを終わらせると、手鏡を前に差し出す。
最上さんは覗きこんでぱあっと顔を輝かせた。

「わぁっ!本当に上手なのね?綺麗な形に塗られてるわ…!私いつもはみ出しそうになっちゃうんだものー。敦賀くんって、シンデレラに出てくる魔法使いみたいね?」

鏡を持ちながらにこにこ笑う最上さんに、きっと他意はないのだろうが…
俺はその言葉にまたショックを受けた。



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メイクって近づかないとできないよね?
できないよねそうだよね?
…と、勝手に想像してしまったが為に、まさかの1話使ってしまったメイク話。
蓮くん何でショックかって?
明日です………orz

あ、こんなところで宣伝なんて失礼しちゃいます!

今夜月華さんのブログ(FC2)にて、メロキュン自由研究のトリオDEリレー『CROSSING』の3話目が公開されています。

恐れ多くも風月さんと月華さんとご一緒させていただいている自由研究リレーです。

もしよろしければ3話目、どうぞ月華さんのところでご賞味ください☆

2話目でキョーコが一言つぶやいていた「ゆきちゃん」が、今夜登場していますよ…!w


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