準備期間は2週間しかなかったけれど、今年もグレイトフルパーティーは盛大に行われていた。

シェフとパティシエ、両方を兼ねて厨房に入っていた私。
会場に少しだけ顔を出して、さあ厨房に戻ろう…というところで、突然乱入してきたマリアちゃんとミューズに拉致られる事となった。

「あっ、あの!?何で私バスルームに閉じ込められてるんでしょうか!?」
「キョーコちゃんも主催なのよ?きちんと正装してご挨拶しなくちゃ。」
「お姉様、蓮様からプレゼントでドレスが届いておりますの!だからそちらをお召しになってほしいんです。」

敦賀さんから…?
その名前にピクリと反応する。

「だからまずは身体をしっかり洗って、汗を流しなさい?琴南さんからもコスメのプレゼントが届いているしね。」
「………はいっ。」

モー子さんは、今年も恥ずかしがりながら買いに行ってくれたのかしら…?
敦賀さんは………うん、ドレスを買いに行く姿が板に着いてるわね。
だけど、私の為に用意してくれた…その事に胸がドキドキしてくる。
早くドレスが見てみたくて、シャワーカーテンをシャッと引くと、コックを一気に捻った。



敦賀さんが選んでくれたドレスは、少し濃いピンクのワンショルダータイプだった。
少しだけボリュームを出すために、中にビスチェ付きのパニエを着用する。
膝丈の裾がふんわりと広がったドレスは、グリッター加工のおかげで煌びやかだった。

「うん!琴南さんの選んだコスメにもピッタリだわ!」
「さすが蓮様ですわね~!っと、時間がありませんわ!お姉様、参りましょっ!!」
「えっ、あ、ミューズ!コスメマジックありがとうございます~っ!」

挨拶もそこそこに、さっさと腕をひっぱられて部屋から連れ出されてしまった。
マリアちゃんは「さあさあ!」と言いながら、ぐいぐいと進んでいく。

そして、パーティーを行っている会場の手前…エントランスホールでマリアちゃんは止まった。
今年はマリアちゃんのお願いで、大きなクリスマスツリーが飾られている。

「今年はお祖父様とわたくしの2人から、お姉様にプレゼントがありますの!ですからこちらでお待ちくださいね?では!」
「え?あっ、マリアちゃん…!」

1人取り残されてしまった私は、きらきら輝くツリーのてっぺんを見上げた。
今の時間だと、敦賀さんのいるロスは24日の朝かな…?

(クリスマスプレゼントとか用意した方が良かったのかな?)

でも2週間前に社さんが帰ってきた時『帰国は早くても年明け』って言ってたし……
準備してても受け取ってもらえるかどうか……

(でも……)

敦賀さんがいなくなってから1ヵ月。
いろんな事を考えてきた。
コーンの事とか、敦賀さんの事とか、敦賀さんが黙ってた理由とか。
まだまだ分からない事がいっぱいだけど、1つだけ答えは出てた。

………もっと知りたい、敦賀さんの事。

コーンの事、『久遠・ヒズリ』の事、『敦賀蓮』の事。
全部全部、ひっくるめた敦賀さん自身が好きだから。
いっぱいいっぱい教えてほしい………

「会いたいなぁ………」

「………キョーコ?」

思った言葉が口からするんと出た瞬間、後ろから聞きたかった声が聞こえた。




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やっとだーーーーー!!!
ね、展開予想しやすいでしょ?
ベタでしょ!?