少しだけ寝不足の頭で1日を過ごした私は、今夜は社長さんの応接室に呼ばれていた。

「あいつが最上くんと喋らせろとうるさくてなぁ…」
「?はぁ……」

『あいつ』って誰だろう?と思いながら電話の子機を受け取ると、懐かしい声にいきなり怒られた。

『キョーコ!!いつでも遊びに来いと言ってあったのに、いつ来るんだ!?』
「えっ!?先生??」
『はあぁ~~…「先生」ではなく「パパ」だろう!?』
「えっ、いや、それは……」
『お前はもうとっくの当に私の子供だと、何度言ったらわかるんだ!』

一気にガンガン巻くしたてられて、なかなか次の言葉が出ない。
でも『子供』と言う言葉にピクリと反応した。
敦賀さんは…コーンは先生の息子さんなんだよね。
先生は、どうして敦賀さんが敦賀さんになったのか…知ってるのかな?

「あの、先生…息子さん、久遠さんって…」
『ん?ああ…実は、君にはバレたと「彼」本人から連絡があったよ。その上で謝られた。「本当の娘に迎えられないかもしれない」と…』

えっ!?敦賀さんから話がいってるの!?
しかも『娘に迎えられないかも』って…それってやっぱり私、振られるの……?

「ごめんなさい。私なんかじゃやっぱり、先生の息子さんに似合う女性にはなれな」
『キョーコ!!お前はまだ「私なんか」と言うのか!?お前は私の自慢の娘なんだぞ!たとえ本人でも「最上キョーコ」をけなす事は許さんぞ!!』
「えっ?でも…」

ハリウッドスターの先生から『自慢の娘』なんて言葉が出るとは思わなくて、思わず目が点になる。

『あのな?キョーコ。お前はもう私の娘なんだよ?例えキョーコが「彼」を振ろうとも、それは変わらんぞ?』
「ええ!?私が振る!?振られるのは私ですよ?」
『ん?どうしてだ?彼は「キョーコに振られるかも」と泣き言を言ってたぞ?』

つ、敦賀さんが泣き言??
想像がつかないわ…

「だって私は、胸も色気もないし、つる…久遠さんみたいに華があるわけでもないから…」
『何を言うか!キョーコは十分華があるぞ?胸や色気はこれからいくらでも付く!お前に振り向かない奴は、見る目がないかゲイだ!
…お前は十分魅力のある子だよ?もし「彼」がヘタレで、キョーコを嫁として迎えられなくても、私はお前を娘としてずっと見守り続けるからな?』
「先生………」

ただ純粋にうれしかった。
産んだ母にだって振り向いてもらえなかった私なのに、こんなに気に掛けてくれる人がいる。
親の愛情を注いでくれる人がいる。
『最上キョーコ』を認めてくれる人がいる。
なんて幸せなんだろう。

『だからな?その「先生」と言うのは止めなさい。出来れば「パパ」と呼んでほしいぞ…?』
「はい…でもそれは、もう少し待っていただいてもいいですか?
私、つる…久遠さんが好きなんです。
だから、久遠さんとちゃんと話をして、いつか本当に『パパ』と呼べる日まで待ってほしいんです。」
『うん…そうか。わかったよ………』

その後は、昔の可愛かった頃の久遠さんの自慢話が続き、電話が1時間を超えたところで社長さんに止められた。





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直近の布石はこの回の為。
自信なんかどうやって持ったらいいのか、それはいまだにわからないけど。
誰かに肯定してもらえたら、少しは自分を認めてあげてもいいって思えるから。