―――ふろむ☆まりあびじょん!―――


「あっ…」

ラブミー部への依頼の作業をしていたお姉様が、小さく肩を震わせた。
うーん…この重苦しい雰囲気を何とかしようと思って、TVを付けたのが間違いだったわ…
TVはちょうどお昼のワイドショーの時間で、ハリウッドで頑張っている蓮様の姿が映っていた。

『敦賀さんは代役ですが、監督に見初められて異例の大抜擢なんだそうですねー!』
『いえいえ、そんなことはないんですよ?でも毎日厳しく指導いただいて、勉強になります。』
『やっぱり日本とは撮影方法とかも違うんですか?』
『そうですね…しかも今は俺の役の出番ばかり撮っていますので、出ずっぱりで大変です。』

TVの向こうの蓮様は、いつもと変わらない笑顔を見せて、レポーターのおばさんをメロメロにしている。
…んもう、蓮様ってば!
そんなおばさんを虜にしちゃってどうするのー!!
お姉様はいったいどうなさったのー!!!



蓮様がハリウッドへ行かれる事は、前日の夜になって知らされた。
2か月も向こうに行かれる…つまり、今年のクリスマスは一緒に過ごせないって事で…
「でもマリアちゃんのお誕生日には、プレゼントを贈るからね?」って言ってくれた。
しょうがないわよね?お仕事だもん。
今年のパーティーに参加していただけないのは寂しいけど、プレゼントで手を打つことにしたわ。
だけど、お姉様の話をした瞬間、蓮様のお顔が曇ったの…
寂しそうで、苦しそうで…
「喧嘩でもなさったんですの?」と聞いたら「まだ喧嘩の方が良かったかな?」って…
うーん…早く大人になりたくっていろんな恋愛小説を読んだりしたけど「喧嘩の方がいい」事って、よくわからないわ…



そして今日、グレイトフルパーティーの打ち合わせをしたくてラブミー部にいたお姉様を訪ねてみたのですけど…
もう幸せが逃げたどころか、死神が憑りついちゃったの!?と言わんばかりに真っ黒な背景を背負ったお姉様が、部室いっぱいに書類の山を作って作業をなさっていたわ…

「あーもーーー!!あんたまだうじうじしてたの!?」
「あら、モー子さん。」
「ちょっと!なんであんたまでモー子って呼んでるのよ!」
「だってお姉様が呼んでいらっしゃるから…」
「まあそうなんだけど…って、まだうじうじしてるの!?キョーコ!
あんた私たちに何にも相談しないつもりなら、いつまでもそんなうじうじしないでちょうだい!!じゃなきゃ友達やめるわよ!?」
「……モー子さん、マリアちゃん。ごめん……………」

いつも威勢のいいお姉様が、モー子さんの「友達やめる」攻撃にもかかってこないなんて…
本当に蓮様はお姉様に何をなさったの!!??

「あっ、そうだわ!いい事を思い付きましたの!!時にモー子さん、今夜のご予定は?」
「え、今夜は特に何も入ってないけど…」
「お姉様のスケジュールも確認済みですわ!今夜はわたくしのお部屋でパジャマパーティーを開催ですわ!」
「は!?ちょっとなんで私まで」
「あ、何なら雨宮さんもおよびいたしましょう!パジャマはいくらでもうちにありますし!高級化粧品もどうぞお使いになって?」
「…マリアちゃん?でもそれじゃ」
「お姉様!今夜はパーティーの細かい打ち合わせも兼ねてますのよ!?お姉様は当然参加ですからね!?フリルとレースがたっぷりのパジャマをご用意いたしますわ!!」
「え!?私はシンプルなのじゃないと嫌よ!?」
「もちろんモー子さんには最高級のシルクのパジャマをご用意させますわ!」

すっごく強引かもしれないけれど…
お姉様にはいつでも笑っていてほしいんですの!
枕投げでもしてぱーっとはしゃげば、お姉様ももとに戻ってくれるかも…
こんな事しかできないけど、お姉様のお役に立ちたいわ!

私はパジャマパーティーの準備の為に、ラブミー部室を後にした。



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久々ラブレボはまりあびじょんからスタート!
内面のレボリューションなので、微桃は封印。