本当に偶然だったんだ。
その雑誌が楽屋に置いてあったのは。



「おっ…へえ。キョーコちゃん、いろんな雑誌にとりあげられるようになったなぁ。」

楽屋の入り口付近に置かれていたマガジンラック。
一番手前にあったのは、青年誌の表紙を飾るあの子の笑顔だった。

「ヤン○ガかあー!うんうん、初々しい感じがいいねぇ!…って、事務所に電話してこないと!すぐ戻るからなーっ!?」

1人でにまにまして1人で慌てて…社さんは飛び出していった。
俺に対してもそうだけど、最上さんに対しても『面倒見のいいお兄さん』を振る舞う社さん。
それはいいのだが…俺に対しても最上さんに対しても、何でも俺たち二人の事に結び付けようとするのはちょっと……
おかげで最上さんの曲解も行くところまで行った感じだ。

(本当に応援してくれてるんだか、邪魔してくれてるんだか…)

そう言えば、最近は彼女の仕事もコンスタントに入ってきていて、暫く会えていない。
『なかなかラブミー部にも食事の依頼が出来ないんだよ~!』
と、社さんが泣いていた…気がする。

(紙面でもいい。彼女に会いたい…)

ふらふらとラックの雑誌に手が伸びる。
手に取った雑誌の表紙には、恋い焦がれる愛しい子の笑顔があった。
中の写真も気になって、パラパラと目的のページを探す。
最上さんは4ページ載っていた。

(………可愛い。)

どこぞのアイドルで人気が出た、ピンクのブレザーを羽織った制服姿と、私服を思わせるタイトなデニムスカートにパフスリーブのコットンブラウス。
どのページの最上さんも、可愛らしい笑顔を振りまいていた。

(会いたい…なぁ。)

まだまだ恋愛に関しては、とんでもない方向に曲解してくれるきみ。
俺だけじゃなく、他の馬の骨に対してもそうだから、まだましだけどね…。

(だけど…そろそろ気が付いて?結構限界なんだよ、俺………)

「好きだよ………」

ちゅ…っと、静かに唇を紙面の彼女に落とす。

「………れっ、蓮……!」

突然背後から掛けられた声にびっくりして振り返ると、驚愕の表情をした社さんがいた。

「やっ、社さん!?」
「おまっ、乙女だなー!!本物のキョーコちゃんに会えないからって雑誌のキョーコちゃんで補充かぁ!?」
「いえ、そんなんじゃありません…」

これはまずい人に見つかった…
これから一時遊ばれるんだろうな。
今だって『ぐーふーふー』と気味悪い笑みを浮かべている。
あーもー………
しかし、社さんはすぐに気持ち悪い笑みを引っ込め、スケジュール帳を取り出して何やらぶつぶつと確認しだした。

「…うん、大丈夫だ!明後日まで頑張ってくれたら、キョーコちゃんに会わせてやる!キョーコちゃんの予定が空いてるから、ラブミー部に依頼出してやるよ。」
「………え?」
「そんなカワイイコトしてる蓮くん見たら、お兄ちゃんは頑張ってスケジュール調節に走っちゃうよ~!…だからな?ちゃーんとキョーコちゃん捕まえるんだぞ?」

胸をどんと打つ社さん。
…何だかんだ言っても、いつも社さんは、どんな時でも味方でいてくれる。
本当に心強いお兄さんだ。

「ありがとうございます………」

しかし後日、最上さんと正式に付き合える事になったと報告すると………
この日の事を度々蒸し返して、キョーコに話すようになった。
何年も何年も………

さすがにしつこいですよ!!




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めろきゅんではなく、何だかギャグ要素が最後にチラリズムな蓮バージョン。
なんか書きやすかったので、こちらからアップになりました。

『ばーじょんK』の蓮目線は…
だって捕まえなきゃいけないからねぇ。
書きにくいわ。