「…………あの、敦賀さん?」
「え、ああ。ごめんごめん…」

敦賀さんはずいぶん長い時間止まってたような気がする。
やっぱりお願いするの、止めた方が良かったかしら?

「あの、お嫌でしたらいいです。他の人におねが」
「ちょっと待って!嫌とは言ってないから!!(と言うか、他の人にお願いって誰にする気だ!!)」

やっぱり無理よね、ミューズにでもお願いしようかなぁーと思ったら、すごい剣幕の敦賀さんに肩を掴まれ止められた。

「それで、どうして突然、その…マッサージなの?」
「あ、はい!実は昨日雑誌のグラビア撮影がありまして。」
「え。あれ、受けたの?」
「???はい、受けましたけど……どうして敦賀さんご存じなんですか?」

実は昨日の撮影に関しては、社長さんに呼ばれて『蓮には撮影が終わるまでは内緒にしておけよ』と注意されていたのだ。
理由はよくわからなかったけど、一緒に呼ばれた椹さんも『死にたくないので気をつけます』とかわけわからない事言ってたのよね…

「その撮影で水着があったのですが…やっぱり胸は多少あった方がいいと思いまして!自分でもマッサージとか頑張っているのですが、イマイチ成果が上がらないんです。
なので、効果が出やすい人にしてもらうのが一番だと…ひいっ!」

気が付けば、隣の御方はリビングの空気を5度くらい下げて大魔王を降臨させていた。

「ふうん…やっぱり水着の撮影あったんだ……」
「えっ、あの…はい、アリマシタ。」
「俺だってまだキョーコの水着姿見てないのに」
「当たり前です!夏は終わりました!!」
「俺以外に見せたくないのに」
「お仕事ですぅ~~~っ!!」

はっ!お願い事から話が脱線していっちゃうわ!!
何とか軌道修正しないと、でも大魔王はこわいぃぃ!!!

「~~やっぱりいいです!他の人におねが」
「だから嫌とは言ってないから!!」

結局バカみたいにこの押し問答は30分ほど続いた。



「で、このボディオイルを使ってほしいんです。」

リビングのラグの上にバスタオルを敷き、持ってきていたマッサージに必要な物をカチャカチャと準備していく。
大魔王は案外早くにお引き取りくださったおかげで、私はマッサージをしてもらえる事になった。
(敦賀さんの答え方が若干歯切れ悪かったけど、どうしてかしら?まあ気にしなくていいか)

「でも本当にリビングでいいの?寝室の方が」
「いえ!何かあってベッドを汚すわけにはいきません!」
「そう……」

何故そこでシュンとなるのかしら?
今夜敦賀さんが寝られなくなっちゃったら困る事なのに。

「あと、コレ付けてくださいね。」

そう言って敦賀さんに渡したのは、目隠し用の白いスカーフ。

「え?」
「だって、恥ずかしいから……ダメですか?」

こんな事お願いしておいて今更な感じもあるけど、でも恥ずかしいものは恥ずかしい!
できれば大人になれるその日まではあんまりお見せしたくない。
上目遣いでお願いしてみる。

「……うん、わかったよ…」

するすると敦賀さんが目隠しをするのを確認してから、私はカットソーとブラを脱いだ。



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大魔王様は、撮影がどーこーよりも他の人にマッサージに行かれる方が嫌だったようです。
と言うか不憫が似合うヘタ蓮様ですので、早々にお引き取り願いました。
(まあ30分押し問答は繰り広げてるけどね)
しかし待っていたのは、まさかの目隠しプ○イ(爆)
寝室にさりげなく誘導も失敗してるし、憐れ敦賀氏!
枯れゴム理性がピンチ!