今日は私の方が早く上がれたので、先に敦賀さんのお部屋に行ってご飯の準備をする。
遅くはない時間だけど、敦賀さんはお昼に消え物が出る撮影があったはずだから、簡単に食べれるあっさりトマト味の野菜スープにした。
もう少し…というところで玄関のチャイムが鳴る。
帰ってきたのね!

「お帰りなさいっ、敦賀さん…!」
「っキョーコ!ただいま……」

チャイムは鳴らしたけど自分の鍵を使って入ってきてた敦賀さんに、私は思いっきり飛び付いた。
敦賀さんはビックリしたみたいで、少し体を堅くしたけど、でもすぐ抱き締め返してくれた。
久し振りの敦賀セラピー……
癒されるわ………。

「……キョーコ?今日はどうしたの?」
「ん…会いたかったんです。敦賀さんに……」

腕にぎゅっと力をこめると、敦賀さんの体は更にかたくなる。
?どうしたのかしら?

「美味しそうな匂いがするね。今日は何かな?」
「はいっ、今夜は野菜スープとミニグラタンですよ。先にお風呂入ってきてくださいね!」
「うん、ありがとう。じゃあそうするね?」

腕の力を緩めると、敦賀さんはするっと逃げるようにクローゼットへと向かっていった。
………私、何かしたかしら?
5日ぶりに会えるのが嬉しくて、ちょっとはしゃぎすぎちゃったかしら?
お疲れだったらお願い事も出来ないかしら?
とりあえず、ご飯を食べられるようにテーブルセッティングしておこう。
頭に疑問符がいくつか浮かんではいたけど、ひとまず私は台所に向かった。



「今日も美味しかったよ、ご馳走様。」
「いえいえ、御粗末様です。」

食器の片付けを二人で仲良くし、食後のコーヒーを二人で飲む。
いつもと変わらないこの穏やかな時間。
私はどうしても協力してほしい事があって、でもやっぱり恥ずかしくてなかなか言いだせずにソワソワしていた。

「……?キョーコ?どうしたの?」
「えっ、あの…その。」
「何かあった?昨日、電話でも何か言おうとしてたよね?」
「うっ!きょっ、挙動不審で申し訳ありっ」

<ぺちいっ!>

「はい。土下座もいいから…」

勢い良く土下座しようとしたおでこを、例のごとくそろえた指先で止められる。
本当に敦賀さんは私の事は何でもわかっちゃうのね…
昨日も言おうかどうしようか迷ってた事、電話だったのに気付いていたなんて。
でも、こうして聞いてもらえるのなら、私も言いやすいかも。
私はお願いしたかった事を口にした。

「あのっ、胸を大きくしたいので、マッサージしてもらえませんか?」
「…………。」

あれ?前にもこんな事あったような?
敦賀さんはものすごい顔をして固まってしまった。



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天然危険物の第二ラウンド!
お願いする事はそれかい!!


あ、そうそう。
あまりにも有名な業界用語ですが、念の為補足をば。
消え物→食べ物
撮影するシーンで、食べるシーンがあったって事ですね。