「おはようございまー…す。」
「おはよ…げっ!何であんたがここにいるのよ!?」

私より先にスタジオで撮影していたのは、七倉さんだった。
どうやら似たセットを使うらしい。
2つあるうちの片方のセットを、ちょこちょこ変えるスタッフさんが目に入る。

「別に、お仕事だからここにいるんだけど。」
「何であんたにグラビアの仕事が来るのよ!本業の女優だけしてればいいでしょう!?」
「こらっ、美森!失礼な発言は止めなさい!」

マネージャーに怒られて不貞腐れ気味の七倉さん。
失礼ね、私の本業はタレントよっ!

「じゃあ美森ちゃん!最後のショット撮るからこっちのセットにスタンバってー!!」
「はぁーい!」

可愛く返事をしてバサリとバスローブを脱ぐ七倉さん。
幼い顔立ちに似合わない豊満なバストはリボンが可愛い水着に包まれ、カメラの前でふるふると存在を誇示している。
七倉さん自身も、自分の武器を存分にわかっているのだろう。
その可愛らしさを全面に持ってきた撮影を見てると、また自分のコンプレックスが疼きだした。

(やっぱり全然胸、大きくならないんだよねえ…)

あれからマッサージも自分で頑張ってるのだけど…目に見える効果もなく、途方に暮れているのが現状。
やっぱりここは最終手段に出るしかないのかしら……

「はい、美森ちゃん!お疲れ様でしたー!
じゃあ京子ちゃん、今度そっちのセットにスタンバっててねー!」
「あっ、はい!お願いします!」

いつの間にか七倉さんの撮影は終わっていて、次は私の番になっていた。
バスローブを腰掛けていた椅子に置き、セットに移動する。

「……ショーちゃんは何でこの子がいいのかしら…胸も色気もないのに。」

七倉さんがぽつりとこぼす声が聞こえた。
…そうよね、胸ないもんね、私。
敦賀さん、本当に私なんかでいいのかしら………
カメラのレンズの向こうに敦賀さんを思いながら、笑顔を作るがなかなかうまくいかない。

「うーん……京子ちゃん、笑顔もなかなかいいけど…ナツみたいに妖艶な感じもいけるかい?」
「ナツですか?」
「そうそう!男を誘うような、焦らすような、でもけだるげな感じ?あれが欲しいんだよ!」

へっ?誘う?焦らす?!
それはどんな感じだろう!?

「キスしたい、もっと触って欲しいってオネダリするような顔だよ!君は女優だ、絶対出来る!!」

……………。
キスしたい。もっと触って欲しい……
オネダリってよくわからないけど、要は敦賀さんにキスしたいって思わせたら勝ちって事よね!
なら女優魂でやってみせようじゃないの!

「……おっ!?その表情いいよ!誘われちゃうねえーっ!……じゃあ次はそのソファーに横になってー…」

そう言えば敦賀さんと何かある時は、ソファーの上が多いなぁ…なんて恥ずかしい事を思い出したら、急に身体が熱くなった。
……?何かしら、これ?

「おおお!すごいよ、その表情!京子ちゃん色気ダダ漏れだよーっ!次はこっちに目線よこしてねー!!」

何だかよくわからないけど、でも撮影は順調みたいだし。
まあいいや。
明日は敦賀さんの上がり時間も早い。
いっぱいぎゅうしてもらいたいな……。

後日発売されたその雑誌は、売り切れる店舗が続出するほど大好評だった……と椹さんから聞かされるのは、もう少し先のお話。



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本誌で出てきてるし、あんまりオリキャラばっかになるのも嫌なので、美森登場。
ドラマの方はね、オリキャラになるのもしょうがないとは思ってますけど(だって同じ人とばっかり共演て、普通はあり得ない)可能な範囲は原作キャラでいきたいです。

無自覚にも誘惑する術を体得したきょこさん。
心と体、どっちが先に進化してるか!?
よくわからないぞ!?