週末、珍しく早い時間に二人とも上がれる日が出来た。
と言っても、夕飯を食べるには少しだけ遅い時間。
ぱぱっと手軽に作れるメニューを考え、一人暮らしには大き過ぎるキッチンに立つ。
「よしっ、後はスープを注ぐだけで大丈夫だわ!」
他の料理は既にお皿に盛ってある。
豆乳スープを掻き混ぜながら、私はこの間の女優達の話を思い出していた。
(うーん…どのタイミングで聞こうかしら……)
数日経ってしまっているし、もしあの人が言ってる事が本当だったら………
私はどうしたらいいんだろう。
(せめて私に色気があれば良かったのかな…?)
胸が大きくなるように、色々頑張ってるけど…今のところ全く大きくなる気配がない。
キャベツもポ○リも豆乳も、ちょっと続けるにはそろそろ辛くなってきた。
食物は一緒に食べる人…大将や女将さん、敦賀さんも巻き込んでしまうから。
下着だけなら誰にも迷惑はかけないけど…
(どうしよう………)
「……キョーコ?鍋が煮立ってるけど…」
「っきゃあぁーーーっ!!」
急に背後から声をかけられて、持っていたお玉を思いっきり鍋から引き上げてしまった。
コンロや服に豆乳スープがパタパタっとかかる。
「キョーコ!火傷は!?」
「コンロ汚れちゃっ」
「コンロはいいから!火傷してない!?」
慌ててスープがかかった部分を確認する敦賀さん。
私にかかった量はそんなに多くなかったので、服が吸っただけで肌には到達しない。
「大丈夫です。そんなに量はかからなかったので…」
「本当に?痕にならない?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「そう。………ところで、いったい何を悩んでいたの?」
敦賀さんは心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「あ…大したことは……」
「嘘。真剣な顔して考えてた。」
「……………」
どこまでも敦賀さんには、嘘が付けないなぁ。
今聞いてみようかな……?
「……あの…今週の火曜日って、どちらに行かれていましたか?」
「火曜日?……あぁ…ちょっと、ね。」
「……………」
「……それがどうかした?」
やっぱりどこにも行ってなかったのかなぁ?
それで、あの人が言ってたみたいに、敦賀さんの家に………。
あ、何だろう。
すっごい胸が痛い。もやもやする………!
何だかすごく悔しいわ。どうして悔しいのかもわからないけど……
せめて色気さえあれば……!
『色気を付けるには、彼氏とスルのが一番!』
ふっとあの日聞いた言葉を思い出した。
「………………ください。」
「………え?」
「だから……そのっ……っ」
「キョーコ?」
「っっっ!私と、えっちしてください!!!」
最後の手段を使おうと、恥ずかしさを堪えて言ったら。
敦賀さんはものすごい顔をして、そのまま固まってしまった。
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天然危険物乙女の右ストレートが炸裂!!!
敦賀氏はノックアウトか!!?
