各駅停車しか停まらないその駅は、夏休みが始まったばかりだからなのか、いつもよりは人がいた。
車窓からも遠くに見えた公園内の展望棟が、夏の日差しを浴びてキラキラと輝いている。

ここは俺のお気に入りの公園。
隣駅の大規模なテーマパークに客が集中するためか、潮干狩も禁止される人口渚だからなのか。
ここの公園は海を眺めるだけなら、絶好の穴場なのだ。
俺も定期外だし家からは遠くなるが、考え事をしたい時にはよく訪れる。

「このメインストリートを行けば、海見れますから…」
『ぐきゅるるるるぅ~~~…』
「ひゃあぁぁーっ!!」

改札を抜け公園へ続く階段を降り切った所で、不思議な音と共に最上さんがお腹を押さえて叫んだ。
…そう言えば、今はもう昼もすぎ、おやつを食べてもいい時間帯だ。

「…お腹空きますよね?売店あるので、ご飯食べましょうか?」
「ごっ、ごめんね!?綺麗なカッコしてこんな……」

顔を真っ赤にしてあわあわとする最上さん。
本当に中身は可愛い最上さんのままで、少しホッとする。

しかし、公園内の軽食所で俺はものすごい剣幕で怒られる事になった。

「敦賀くん、ご飯は…?」
「えっと…そんなにお腹空いてないので…」

コーヒー1杯で済まそうとしたところを見咎められた。

「だめよ!ご飯は3食きちんと食べないと、動けなくなっちゃうのよ!?」
「あぁ~…はい。」

結局最上さんと同じ、軽く食べられるサンドウィッチのセットを頼まされてしまった。

「本当はそれでも少ないと思うわよ?」
「…普段あんまり食べないので。」
「ふーん?それじゃそんなに大きな体、維持できないわよ?
よくうちのコロッケ食べれてたわねぇ…」

それは最上さんのレシピがいいから…と言おうとして、やめた。
食事に関しては社からも再三注意されてるし、さっきの剣幕を思い出すとさっさと食事を済ませてしまった方がいい気がして…。

公園内の水族館は閉まるのが早いため、食後はまっすぐ展望棟を目指した。

全面ガラス張りで解放感あふれる2階建てのその棟には、デート中のカップルや家族達が数組いた。
少し空調が効いてるために、長時間逗留したい人間はそこに集まるのだ。
本当なら棟の中でゆっくりさせてあげたかったが、人がいる所より二人になれる場所がいい。
俺は展望棟から少し離れた場所にある小さな丘に来た。

「わぁ………東京にはこんな所があったのね………」
「この公園は、俺も考え事があったりした時に利用するんです。」

そこは、展望棟の次にお気に入りの場所。
公園の中でおそらく一番高いこの丘は、広場で遊ぶ親子連れや人工渚を並んで歩くカップルなど、のんびり各々で過ごす様が一望できる。

「……………」
「……………」

暫く二人黙って、ただひたすらにのんびり流れる人と時間を眺める。

「………歌手の不破尚を知ってる?あれ、私の幼馴染みなの……」

先に沈黙を破ったのは、最上さんだった。



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またも場所バレ物。
ネズミの国に客はみんな行くので、穴場なんですの。
大学時代はよく1人でエスケープしました。
ああ、水族館に行きたいーっ!

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