(はあぁー………敦賀さんにはホント、油断も隙も見せられないわね。)

敦賀邸のソファーの上での一件で、暫く色気付け用の下着はなりを潜めた。
色気は欲しい、でもあんな破廉恥な事をされるのはちょっと………

結局また1週間逃げ回り、モー子さんに呼び出されて捕まったのだ。

(ごめんなさい、でもまだ勇気が出ないんですーっ!)

「京子さん?大丈夫?」
「あっ、大丈夫!もう行けますっ!」

飲みかけだったポ○リの蓋をしめ、慌ててメイクのチェックを行う。
声をかけてくれたのは、天宮さんだ。
今日は、ドラマが終わっても未だ人気がある『BoxーR』のナツグループ4人で、青年紙の撮影になったのだ。
「スタイリッシュなナツに男子もいまだ虜みたいでなぁ!」と椹さんは嬉しそうに仕事を持ってきてくれた。
私としても天宮さん達と会えるし、自分が作り上げたナツがファンの方に求められるのは嬉しい。
プリンセスローザ様を胸元に着け、ナツ魂を憑かせる。

「…おまたせ、ユミカ。」
「ナツが人を待たせるのはいつもの事じゃない。行きましょ?」

天宮さんもユミカを憑けて応対してくれる。

牧野さんと須藤さんは先にスタジオに入って、既に撮影が始まっているグラビアアイドル達を見学してきた。
が、須藤さんの様子が変だ。

「おはよう、カオリ。…ツグミは何を怒ってるの?」
「あら、ナツ。この子、あの子達の話が気に入らなくて怒ってるのよ。」

そう言ってグラドル達を指差す。

「だって聞いてよ!あの子、先週敦賀さんにデートに誘われたとか言ってるのよ!?」
「……え?」

思わぬ名前が出たせいで、ナツが消えて最上キョーコが出てきてしまった。

「しかも本当に食事に行ったとか言ってるし!もーっ!あんなの敦賀さんのタイプじゃないはずなのにねぇ!?」
(先週…ちょうど私が逃げ回ってる時………)

ツグミに指差された撮影中のそのグラドルをそっと見る。
豊満な身体付き、オンナの武器を理解しきった媚びた目線をカメラに送る顔。
どれも自分に無いものを持っていた。

(………ううん、敦賀さんの事は信頼してる。
きっと番組の飲み会とかにちょっと顔出したりして、その時会った事を言ってるのよ!)

だけど、自分のコンプレックスを刺激するには十分な彼女達を見て、急に胸の辺りがもやもやしだした。

(???………何かしら、この気持ち。変なの…)

胸焼け?そんなわけないよね。
胃もたれ?キャベツの食べ過ぎがいけないのかしら。
それともポ○リの飲み過ぎ?
でも胸が大きくなるって聞いたもん!
毎日頑張らなきゃ…色気が無理なら胸を大きく!

「はーい、お疲れさーん!!
じゃあ次は、ナツグループの皆さんの撮影でお願いしますー」

スタッフさんの声がスタジオ内に響き渡る。
胸の奥の小さな刺が気になりながら、私はナツを再度憑けて、カメラの前に向かって行った。



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きょこたん暴走の序奏は、無自覚の嫉妬から………。
しかしどんだけキャベツネタひっぱるんだよお前!ってツッコミが入りそうですね…

でも昔胸が大きくなるって聞いたもんっ!

だから何度でも使ってやるー!!